農業協同組合新聞 JACOM
   

検証・時の話題

JAの生産資材価格は本当に高いのか?

営農から販売までJAの力発揮すれば
価格差は許容の範囲内に

「JAの生産資材は高い」といわれることが多い。本当にそうなのだろうか。本紙では独自に全国のホームセンターなどの農薬価格と該当地域のJAの農薬価格を調査しその実態を明らかにするとともに、JAグループが長年にわたって取り組んできている生産資材コスト低減の内容を検証し、生産資材コストの実態に迫ってみた。

◆JAの方が安い農薬が多い 九州では7割以上

 「JAの生産資材は高いから、日本の食品が高くなっている」というような主旨の発言をよく聞く。また、JAのトップ層からは「全農の価格が高いから、JAの生産資材の価格が商系に負けている」という意見を聞くこともある。本当にそうなのだろうか。
 本紙は独自に全国のホームセンターやディスカウント店94店で主要な農薬50品目の価格を調査し、合わせて各店の所在地域のJAの価格との比較を行った(調査合計1226点)。
 その結果、図2のように「商系の方が安かった」のは全体の47.7%。「JAの方が安い」と「同価格」が52.3%と、JAの方が安い農薬がやや多いという結果だった。
 地域別にみると表のように、関東甲信、近畿、四国では商系の方が安いものが多かったが、九州ではJAの方が安いものが73%を占めるというように、地域によって差があることも分かった。

表・地域別比較 図1・価格差10%未満が圧倒的 図2・JAと商系の価格比較(全国)

◆商系より高くても価格差は10%未満

 その価格差はどの程度なのかをみるために「商系の方が安かった」農薬のJAとの価格差をみたのが図1だ(JAの価格を100としてその差を%で表示)。
 この図をみれば分かるように、10%未満の価格差が65%と圧倒的に多い。「商系の方が安い」商品であってもその価格差は大きくはないということができる。しかも価格差1%未満が9%もある。JAが1000円で売っている農薬を商系では990円台で売っているものが約1割あるということだ。そして55%は100円以内の価格差なのだ。
 こうした事実をどう考えればいいのだろうか。
 同じ仕入れ価格でも商系の方が安くなる要因はいくつか考えられる。
 JAが価格を下げると、商系がその価格を下回る価格をつけ、それを繰り返すとイタチゴッコになるので、ある一定のところで価格引き下げを止めざるをえない。
 商系はパート中心の人員構成になっているが、JAは正職員が対応しており、人件費構成が異なる。
 商系は大規模生産者を2〜3人囲い込めば、農薬で収益が上がらなくてもその他の資材販売トータルでみれば商売として成り立つ。
 JAが栽培(営農)指導などで重点を置いている資材で負けていなければ、他の商品で負けていても大きな影響はない。
 これらは、実際にJAの現場で聞いた声だ。
 また生産法人などでよく聞くのは、技術的な情報はもちろんだがマーケットの情報まで含めて正確な情報を的確に提供してくれるところと取引きしたいということだ。生産された農産物の販売までを含めたトータルな対応が求められているということだ。
 地域ブランドを確立するなど、営農指導から販売までシッカリ取り組んでいるJAでは、生産資材での結集力も強いといえる。
 営農から販売まで、さらに地域農業を守るための諸活動までを含めたJAの活動を考えれば、10%未満の価格差は生産者にとって許容範囲ではないだろうか。

◆効果を挙げている生産資材コスト低減運動

 しかし、そうした視点とは別に、生産資材コストの低減は必要だといえる。それは、農産物価格の低迷や消費が減退するなかで、生産者の所得を確保するためだ。
 JAグループでは、農水省とともに、平成8年から「生産資材費コスト低減運動」を10年以上実施してきている。また、第23回JA全国大会で最重要課題として決議された「組合員の負託に応える経済事業改革」の事業目標の一つとして、生産資材コストの低減を掲げ取り組んできているし、全農も具体的な目標を策定して実践してきている。
 その具体例をいくつかみてみよう。
 ヨルダン肥料・アラジンは同一国産銘柄対比で25%のコスト低減を実現し、その普及率は36%に拡大している。同一化成銘柄に対して10〜15%のコスト低減効果を示すBB肥料も25%以上普及している。
 共同開発農薬のMY−100は、同等性能品より2〜20%コストを低減し水稲作付面積の20%以上に普及している。ジェネリック農薬である「ジェイエース」は競合品よりも20〜30%もコスト低減効果を発揮し、同一成分剤中のシェアは10%になった。育苗箱処理剤における長期持続型殺虫殺菌剤の出荷割合は75%におよびこれのコスト低減効果は、従来型栽培暦に対して10〜40%におよんでいる。
 さらに、全農は標準規格品より5〜38%もコストを低減できる農薬大型規格品について、現在の17品目から21年度までに40品目に拡大していくことにしている。
 また、通常原紙よりも1〜5%低廉な段ボールの低コスト原紙や白・カラー箱より5〜7%コストを低減できる茶色箱化の普及も拡大し、低コスト原紙の導入率は42%となっている。
 そして従来機と比べて10〜20%安いHELP農機の導入率は64%にもおよんでいる。

◆大きな波及効果で全体のコストを低減

 アラジンの港湾倉庫からの直行価格の設定。農家配送拠点の設置拡大や広域物流実施JAの拡大など物流の合理化も忘れてはならないだろう。17年度末で38県・139拠点・172JAで物流合理化が促進され、合理化が進んだ地域では、物流コストが3%強削減されている。
 このほか、大豆不耕起栽培などの低コスト・省力栽培技術の開発、フェロモン剤の利用によるIPM(総合病害虫管理)技術の確立など、低コスト・省力栽培技術の開発普及も生産コスト低減に貢献している。
 これ以上詳細に述べることはやめるが、大事なことは、こうした諸施策は、個々の価格引下げの効果だけではなく、例えばアラジンによって高度化成肥料全体の価格が引き下げられたり、農薬においても同等品の価格を引き下げるなど、波及効果をおよぼし、全体の生産資材価格を引き下げてきていることだ。
 さらに全農の「新生プラン」では、担い手へ向けた具体策を提示し18年度から前倒しして実施していることも忘れてはならないだろう。

◆食品消費高の僅か6%に過ぎない生産資材コスト

食料供給コスト縮減検証委員会
食料供給コスト縮減検証委員会

 だが、こうしたことをまったく無視した意見もある。今年4月に決まった「21世紀新農政2006」は、「生産と流通の両面におけるコスト縮減に向けた取組みを…聖域を設けず強力に推進する。特に、農協の経済事業については、信用事業及び共済事業に比べて改革の遅れが目立っており、全農改革を進めるとともに、低廉な農業生産資材の供給と効率利用の推進、物流コストの削減等、改革の徹底を図る。このため、民間の経験、有識者の知見を活かしたコスト縮減委員会(仮称)を開催する」。そしてその目標を5年で2割縮減するとし、6月から「食料供給コスト縮減検証委員会」(コスト縮減委)を開催した。
 「生産コストが高いから日本の食料品は外国に比べて高い」という論調を裏付けるような意見だ。そして、その原因は、JAグループの経済事業の改革が遅れ非効率的なことにあるということになる。
 いままでみてきた事実のの他にも、こうした主張が根拠の薄いものだという資料がある。それは、コスト縮減委の第1回で配布された資料だ。
 これによれば「国民が最終消費した飲食料費は約80兆円(平成12年)」で、そのうち国産の食用農産物は12兆1290億円。全体の15%強に過ぎない。これにかかる生産資材コストは3割前後だろうが、多く見積もって4割としても80兆円の消費全体のわずか6%だ。目標の2割をすべて生産資材で実現したとしても、全体の1.2%に過ぎない。
  本当に日本の食品の価格が高く、それを引き下げようと考えるならば、わずか1%前後の効果しか期待できない農産物の生産資材コストよりももっと有効な方法を検討すべきではないだろうか。ましてや、経済事業改革や全農改革にそれを求めるのは「農協攻撃」のためにするものだといわざるをえない。

◆確実な販売と地域農業の確立こそが

 販売価格の低迷などによって経済事業の収支均衡がなかなかとり難いことは事実だが、そのことだけをみて「改革が遅れ」ていると一言で片付けられてしまい、生産資材コストを低減するための努力や成果がキチンと評価されないことについては、現場を取材するものとして憤りを感じざるをえない。
 冒頭の調査結果で、20%以上も価格差があるものもある。これらについてはJAあるいはJAグループとして改善すべきだろう。しかし、全体としては「JAの生産資材は高い」とはいえないのではないだろうか。
 確かに個別商品ごとにみれば、価格で負けているものもあるが、その価格差は僅かだ。
 全農が提案している「生産資材コスト低減 チャレンジプラン」の確実な実践など、JAグループとして生産者の所得を確保するためのコスト低減の取り組みを続けるとともに、JAが地域で生産された農産物を確実に販売し、地域農業の生産基盤を確立するために努力する。
 そのことが生産者に理解されれば、この価格差は許容できる範囲ではないだろうか。

(2006.8.4)

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