農業協同組合新聞 JACOM
   

検証・時の話題

JA出資農業生産法人

計画的な農地利用と産地づくりを目的に

JA出資法人による担い手づくりへの期待と課題


 品目横断的経営安定対策の実施に対応したJAの担い手づくり戦略では、JA出資農業生産法人も担い手のひとつとして位置づけられている。JA全中の調査(18年3月)では175JA(21%)でJA出資法人を戦略上、担い手に位置づけており、すでに125JAで農業農人に対する出資が行われている。出資の狙いには担い手とJAとの関係強化もあるが、品目横断対策に対応して、担い手要件を満たすための受け皿型法人も各地で設立されている。1月25日にJA全中が開いた「JA出資型農業生産法人に関する研究会」は約180人の関係者が出席した。同研究会でのディスカッションなどをもとにJA出資法人への期待と課題を考えてみる。


「担い手受け皿型」の法人も増える

◆集落営農育成型の法人

 滋賀県のJAグリーン近江は昨年8月、(株)グリーンサポート楽農を設立した。
 JA管内316集落のうち麦作付集落は173集落あり面積は約2000ヘクタールになる。担い手づくりでJAは個別経営支援と集落営農の組織化を重視したが、担い手の面積要件をクリアできない集落が73集落、麦作付面積で約300haになった。このまま交付金の対象外となると、その集落では麦の作付けが行われず米の生産調整にも影響しかねないことから、品目横断対策の「受け皿」としてJA出資法人を立ち上げた。生産者の出資と利用権設定を行ったうえで、法人の構成員として農作業を受託するという仕組みを提起した。
 ただし、目的は集落営農組織の育成に置き、個々の生産者の出資、加入は認めず集落全体で参加するように求めた。また、3年後の自立をめざす計画書も提出しなければならない。しかし、面積要件に関係なく集落で合意すれば一口2000円の出資と農地利用権の設定で、政策の対象となることができる。
 昨年末で参加集落数は20となり、19年産麦の播種前契約面積のうち担い手カバー率は90%を超えた。
 グリーンサポート楽農の特徴は法人では農機を持たず、加入した生産者たちが登録をした機械で作業をしてもらうという点。集落の経営資源を利用する。
 生産者への作業委託費支払いは地代、機械使用料、作業料金のほか、肥培管理費として収量、品質に応じた調整加算がされるという。

◆一人でも多く担い手に

 新潟県のJAえちご上越の(株)アグリパートナーも担い手受け皿型のJA出資法人だ。JA管内の951集落のうち20ヘクタール以下の農地面積の集落が800ほどもある。短期間では、法人化し担い手要件を満たすことが難しい集落が多い。集落で合意ができればJAの農地保有合理化事業に申し込むかたちで参加、JAがアグリパートナーに農地を再配分、参加した農家は「作業班」として法人から農作業委託を受けるという仕組みとした。地代、労務費、肥培管理費などのかたちで作業班を通じて生産者に支払われる。
 1月25日の研究会でJAえちご上越の古川敏雄営農生活部長が強調したのは「農地2.5ha、3戸という集落もある。一人でも多くの農業者が担い手として参加できる仕組みづくり」としてのJA出資法人という点だった。
 集落での話し合いではこの仕組みに参加するための「仲間づくり」を呼びかけているという。そうした営農組織が集落内に複数できても参加を認める。集落ぐるみ、にはこだわっていない。集まった仲間のなかで作業班の班長を決めてもらい、JAのサポートで作付・収支計画、生産資材の検討、作業計画、肥培管理計画などの案を決めていく。計画自体はアグリパートナーが決めるほか、経理も一元管理し、損益計算書は作業班に示される。
 できるだけ多くの生産者に参加してもらうというのが最初の狙いだが、JAグリーン近江のグリーンサポート楽農と同じように「将来は採算ベースに達した段階で法人として独立してもらう」ことが目標だ。
 いわば経理一元化も含めて農業経営を学んだうえで、「のれん分け」をしていく運営をめざしている。

◆産地維持のための設立も

 研究会ではこのほかJA岡山の事例も報告された。管内は二条大麦・小麦・裸麦の産地で1000戸以上の生産者で麦合計で約1万7000ヘクタールを作付けている。
 しかし、品目横断対策の対象要件を満たす生産者は4〜7%しかいない。麦産地を維持するために、JAが中心となった法人とJAが農事組合法人に出資して支援するという2法人で担い手づくりに対応することにした。二条大麦と大豆生産農家を対象にした(株)JAあぐり岡山は730戸以上が参加し、二条大麦面積で1300haを集約した。利用権設定は1万筆以上になった。
 また、JAが出資し支援する農事組合法人グリーンファーム岡山は、JA管内東・南部の小麦・裸麦生産の12集団を再編、統括したものだ。
 同JAの伊丹克仁営農部次長は「集落営農の組織づくりがもともと難しい地域だったことから一気にJA出資法人で、となった。合意づくりなど調整に苦労したが、参加した農家からはこれでほっとしたという声も聞かれる」と話した。
 福島県のJA伊達みらいは昨年7月、みらいアグリサービス(株)を設立した。小規模な農家などからJAの農地保有合理事業で農地を借り受け、農作業受委託などを行う。
 特徴はライスセンター組織や転作組織、機械利用組合など既存の組織は維持し、それらの組織と雇用契約を結ぶなど事業提携をしてより効率的な農業をめざす点。また、農作業の労働力確保のため一般労働者派遣事業も実施していくほか、あんぽ柿の加工事業も始めている。

◆地域特性を生かした組織

 JAグリーン近江やJAえちご上越の取り組みは、担い手の受け皿組織としてのJA出資法人の面があるがそれぞれ参加した集落や生産者組織には将来的には経営体として独立をしてもらう集落営農(法人)育成型の性格を持たせている。
 JAグリーン近江の営農事業部担い手対策室・川部善明課長は、グリーンサポート楽農に参加した20集落について「早く卒業してもらいたいというのが方針」と話す。
 それが実現した後、グリーンサポート楽農としては米、麦以外の新たな作目の振興をはかり、たとえば特殊な農機などを備えて地域の経営体から作業受託をするなど「産地づくりをサポートする」仕事を業務としていく姿を描いている。また、今後、政策支援基準のハードルが厳しくなった場合には、法人に集落組織が再び参加するなどの対応も視野にいれるという。「集落では農政の見通しに不安がある。いつでも担い手になれる受け皿としても必要」(川部課長)。
 JA岡山の取り組みは麦作産地を維持していくひとつの手段としてのJA出資法人という面があり、JA伊達みらいでは農地利用の集約と既存組織との連携によって地域農業を再編する核にJA出資法人がなるという方向だ。
 この日の研究会では、JA出資法人は地域の課題解決のためのひとつの手段であり、地域特性を考えた組織づくりが重要との指摘が相次いだ。
 一方で、共通するのはいずれのJA出資法人であっても、JAの農地保有合理化事業を利用することによって農地の集約化、計画的利用という点に大きなメリットがあり、水田農業改革がなかなか進まない地域ではJA出資法人は「構造改革の近道」になるとの指摘もあった。JAえちご上越の古川部長は「あきらめかけている生産者をあきらめさせないで一旦同じ船(JA出資法人)に乗ってもらうことが大事」と受け皿型法人の狙いを話す。
 JAグループでは21年度までに品目横断対策の対象となる担い手を全国面積でベースで米で5割、麦・大豆で10割とする目標を掲げている。その取り組みのひとつにJA出資法人づくりもあげている。法人である以上、経営も重要になる。地域の課題を見定めた担い手戦略のもとで、JA出資法人の機能と課題を検討することが求められている。

(上から)JA担い手作り戦略に位置付けられた担い手の類型、JAとしての法人支援の方針の明確化、JAの農業生産法人等への出資の状況

(2007.2.16)

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