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コラム


農協の経済事業が元気を出すため

 ◆農協の経済事業がいま一つ元気がない

 金融、共済の利益を食う赤字部門はリストラの対象という風潮が多数になっては意気が上がらない。
 なにはともあれ、赤字では説得力がないので少なくとも共管配賦前の黒字まで持っていき、次に部門収支を黒字にすることであるが、これまでも手をこまねいていた訳ではなく努力をしてきてもなかなか効果が出ないところに問題がある。そこで、少し攻め方を変えてみたらどうかと言う提案である。
 サプライチェーンシステムといういま流行の考え方がある。生産−加工−卸−小売−消費という第1次産業から第3次産業を経て最終消費者まで届けるシステムを合理的に仕組む方法を学者先生が専門用語で難しくしたわけだ。
 このシステムをトータルで如何に効率的に仕組むかに、いま流行のITの技術を活用するのが世の中の動きである。
 これを農協の事業に応用をすると、生産から消費者までの各工程が次の段階だけを見て順送りするのではなく、全員が顧客・消費者を見るという発想に変えるとずいぶん違った見方になる。ITの技術はコストの安くなるところがあれば使うのでよい。
 先ず、生産資材の購買、営農・技術指導など生産の前の段階を受け持つ人は圃場、ハウス、畜舎を見ると同時に最終的に買って食べる消費者・顧客を頭に描いて青果物、畜産物を作るための資材の選択、技術の指導を行うという発想である。
 同様に農家も選果場、食肉センターに出せばそれでお終いではなく、自分の作ったものが顧客に届いて喜んでもらうところまでを考える。
 このようにサプライチェーンの各段階が顧客へのサービスを考えながらやっていくことで顧客の求めている付加価値が付いていく。これを専門用語ではバリューチェーンという。如何にも高く売れそうな言葉になるから妙なものだ。

 ◆地元から攻める

 顧客を頭に描くといっても誰が顧客だか見当がつかないとサービスがピントはずれになって折角の工夫が評価をされない。
 それには先ず地元から始めるのが最も手っ取り早いしまた事業としても堅実な方法だ。
 大都会の大型の市場、スーパーだけが顧客ではない。町内、市内、県内の顧客を他の産地、しかも外国の産地に取られて当方はコストをかけて遠くへ出荷をする販売方法から、身近な需要を一つ一つつぶすことをしてみると結構な量になるのではないか、少なければ同じ経済圏の近県まで攻めていけばよい。
 例えば学校給食を例に取れば、自分の孫や隣の子供が食べる野菜、果実、肉、卵となれば栽培や飼育の始めから出荷をするまで子供の姿が目に浮かぼう。
 スーパーが目玉とする差別化商品の安全食品を作るのとは一味違った物となろう。
 他所の産地に取られないために年間を通して引きうけるとなれば栽培体系から変えることとなる。地元の食品メーカー、弁当屋、エーコープ、スーパー、生協に対して同じ様に考える。
 今までは、手間暇の掛かる割に効率が悪いことと、委託方式に馴れて契約方式が苦手となって避けてきたので、他から仕入れざるを得なかったメーカー、小売店もあったはずである。地元も歓迎である。
 顧客に喜んでもらえる物を作って届ける事業の仕組みを農協が作れば、顧客は地元だけでなく全国から引き合いがくることとなろう。

 ◆委託販売から値決・契約販売へ

 農協組織の販売は委託を前提に組み立てられている、卸売市場もまたしかりである。
 顧客へのサービスを第1にした販売を考えると、少なくとも規格・数量・価格・納期は約束を守るのがイロハのイとなる。
 実はここが難しいところである。誰が、どの段階で約束するかである。
 特に、青果物は従来の卸売市場への分荷方式は約束通り出荷が出来なくてもまあまあで済んできた。販売の結果も陽気のせいでは文句のつけようがなかった。お天道様の出番である。顧客に責任を持つためには生産者と一緒になって契約条件を決めることとなる。
 サプライチェーンからバリューチェーンへ、生産者と農協が顧客へのサービスを合言葉に事業を仕組めば、農協でなければ出来ないアイデアが次々に出て来て地元が元気になり、農協の経済事業担当者は活き活きとして元気になる。
 経済事業が先、信用、共済は自らついてくるということとなる。
((社)農協流通研究所 原田康)



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