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地域水田農業ビジョン全国大会を開催 −JA全中 (7/14)


地域水田農業ビジョン実践強化大会

 JA全中は7月14日に第2回地域水田農業ビジョン大賞の表彰式と「地域水田農業ビジョン」実践強化全国大会を東京都内のホテルで開いた。
 実践強化全国大会では、農林水産大臣賞受賞の入善町水田農業推進協議会(富山県)、全中会長賞受賞の夜須地域水田農業推進協議会(福岡県)などの事例発表とパネルディスカッションが行われ、地域水田農業ビジョンの実践課題などを議論した。

◆全員参加の米の生産調整

 富山県のJA入善町と町では、ビジョン作成にあたって▽全員参加での米の生産調整への取り組み、▽需要に基づいた特色ある米づくり、▽集落合意に基づく担い手育成などを基本方針とした。
 とくに102ある集落それぞれで生産組合長が中心となった徹底した話し合いのなかから、担い手のリストアップや組織化が行われてきた。また、農業公社が核となって農地の流動化を図り、担い手に農地を集積させ経営規模の拡大も実現している。
 米づくりでは入善産米品質向上対策本部を設置し、高温障害などを回避するための田植え時期の繰り下げ徹底や、農薬節減栽培米の取り組みを町全体で推進している。
 水田農業推進協議会は今後も集落の実情にあった方向を提案しながらビジョン実践を支援していくという。

◆売れ残さない米づくりを

 福岡県のJA筑前あさくら地区を中心とした夜須地域水田農業推進協議会では、「売れ残さない米」づくりへの意識改革をビジョンの柱とした。「売れて初めて生産できる」、「消費者あっての生産者」を徹底させてきた。大手精米工場への研修などに協議会委員と生産者が参加し、実需者の評価、産地への要望などを聞きビジョンづくりに生かした。
 また、協議会と生産調整ブロック、集落営農組織が一体となり、水稲と大豆は団地化して生産、裏作の基幹作物を麦とし、機械共同利用組織で収穫しカントリーエレベーターで集荷するなど組織が計画的な生産を推進している。
 協議会のもとには、担い手育成方針を検討する担い手部会、JA米など栽培技術のレベルアップを図る生産・技術部会、卸との交流、情報交換を行う販売部会の3つの専門部会が設置されている。米の品種では「夢つくし」に力を入れ、地域独自の栽培基準で生産している。

◆ワンフロア化でビジョン加速

 北海道の当麻町水田農業推進協議会は今回、農水省生産局長賞を受賞した。北海道内でも有数の良質米産地だが、でんすけすいか、キュウリ、トマト、菊、カーネーションなどとの複合経営が中心。
 米づくりでは、米の品質評価のランキングに基づき独自に生産数量を配分する方式を導入し、生産者の栽培意欲向上を図っている。
 平成15年には行政とJAのワンフロア化による農業合同事務所が設置された。組合員の声が後押しして実現したという。ワンフロア化の実現によって農地の集積や転作の定着化、団地化事業などのビジョン実践が加速されている。また、若い後継者のために、JAでは施設園芸ヘルパー制度も導入。生産者も休日をとることができるなどの支援策を進めている。

◆集落の健康診断を

 パネルディスカションでには農水省総合食料局の皆川芳嗣食糧部長も出席。「米改革は、それぞれの米への評価が生産者に伝わりそれをもとに作付けしていくという、まさに需要を起点とした生産へ転換すること」と指摘、また、担い手育成では「家を中心に農業が受け継がれることができなくなるのではないか。集落営農も将来は法人化していくことが必要」などと話した。
 JA全中営農総合対策課の田村政司氏は集落ビジョンづくりのポイントとして「地域の健康診断」から将来の農業の担い手を考えていく必要があることや、米づくりも「減反に対応するという意識ではなく、産地づくりとして考える必要がある。交付金も減反助成ではない。売れるものを売れる量つくる、ことが大切」と強調したほか、地域づくりの観点からは、直売所の設置など地域住民を巻き込む取り組みや女性の感性を大切にすることなどの重要性を訴えた。
 参加者からは、売れる米づくりのための栽培法の統一や生産履歴記帳運動の取り組みについて質問が出たが、夜須地域協議会の時札一正氏は「生産履歴記帳には生産者に負担感もあったが、業者から評価されるためには必要だと理解が浸透している。栽培法の統一は品質の均質化だけでなく、資材購入や作業などを共同化できるためコストダウンなどのメリットを生む」と話した。
 集落から担い手づくりに向けた話し合いなどの動きをどうつくるかについて、入善町協議会の松原克巳氏は「高齢化などで農機具の更新ができないなど、同じ悩みを持つ人たちが集落営農に向けて話を始めている。また、集落を超えて若い担い手どうしの連携の輪をつくることも大事ではないか。農業に楽しく取り組んでいるという雰囲気づくりになる」と話した。
 また、集落営農か、認定農業者か、が担い手づくりでしばしば問題となるが、JA全中の田村氏は「集落営農と認定農業者の共存を考えるべき。共存のために課題があるとすればなにか、を議論してほしい」と指摘した。

(2006.7.20)

 

 

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