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米国産牛肉問題、農務長官が謝罪
 −日本、検査体制強化も検討 (1/20)


 米国から輸入された牛肉に特定危険部位である脊柱が含まれていることが1月20日に発見され、政府は同日、米国からの牛肉輸入を再び停止することを決めた。
 この問題で23日夜、ジョハンズ米農務長官は中川農相と電話会談し、「大変、申し訳ない」と謝罪、原因究明と再発防止策についての日本政府への報告書を「最善を尽くしてできるだけ早く提出する」と述べた。
 今回、脊柱が付いたままの牛肉が発見されたのは、20日朝に成田空港に到着した米国産冷蔵牛肉41箱(約390キロ)のうちの3箱(約55キロ)。農水省動物検疫所成田支所と厚労省成田空港検疫所で確認されたが、「専門家が見れば一目瞭然の状態」(農水省)で、脊柱が除去されていないことは写真からもはっきりと分かる。農水省は「予想だにしなかった事態。大変残念」だとしている。
 この牛は月齢12か月の子牛。米国では30か月齢以下の脊柱は特定危険部位とされていない。今回の脊柱付きの部分肉はホテルのパーティなどでまるごと焼いて切り分けて食べる肉などとして流通しているという。
 食肉処理施設はニューヨーク州のAtlantic Veal&Lamb incで枝肉から部分肉へのカットを専門にしている。米国の輸出プログラムの認証施設となっており、搬入された箱にも認証ラベルが貼られていた。
 日本側の輸入業者は日本シイベルヘグナー。今回輸入した牛肉については同社の責任ですべて積み戻し、または焼却処分する。

■飼料規制などに問題も

 昨年、12月の輸入再開以来、これまでに約1500トンの米国産牛肉が日本に入ってきた。処理施設は日本向け輸出プログラムを遵守するという条件で認証された施設に限られ現在40施設ある。
 農水省は昨年、12月13日から24日まで11の認定施設について査察を実施し、その結果、日本向け輸出プログラムでは、30か月齢以下もSRM除去が行われていることなどを公表していた。ただ、今回の施設は査察の対象に入っておらず、1月に実施するはずだった第2回の査察対象施設にも入っていなかった。2回目の査察は「輸入停止で日本向け作業が行われない」ことから中止を決めている。
 多くの対日輸出施設では、対日輸出用の部分肉処理作業を業務開始時に集中的に実施して、対日輸出以外の部分肉と混じることがないようにしているというが、今回の施設でこうした措置がとられていたかどうかは不明だ。また、農水省はUSDA(米農務省)の検査官が常駐しチェックを行っていたことを確認しているが、検査官のチェック漏れも考えられる。
 さらに、昨年末の報告では飼料規制について、牛の供給農家が食肉処理施設に「米国の飼料規制を遵守して飼養した」と記載した宣誓書を提出していることから、農水省は飼料規制からの逸脱事例はなかったとしている。が、文書の提出だけで適切に飼料を使っているのかどうか分かるのか疑問の声も多い。
 農水省は、すべての施設への査察完了前に輸入を再開したことについて「(安全確保に)あくまで第一義的責任を負うのは米国。査察は輸入国として念のために行ったもの」(石原事務次官)と説明している。
 一方、国内での検査体制は輸入牛肉をすべて検査するわけではなく抜き取り検査。農水省の動物検疫所ので検査は0.5%にすぎない。石原事務次官は「全箱検査は物理的に無理。部位に着目して検査を行っている」としているが、今後は米国の報告を受けて「検査のあり方で改善すべき点はないか。検査量を増やす方向で検討する」と23日の会見で語った。

成田空港で発見された脊柱がついたままの米国産部分肉。(写真提供・農水省)
成田空港で発見された脊柱がついたままの米国産部分肉。
(写真提供・農水省)
(2005.1.25)


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