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小泉改革の原点は「ニッポンを米国にしてしまえばいい」
−経済アナリスト・森永卓郎氏が東京農大で講演 (4/26)


 経済アナリストの森永卓郎氏が4月26日、東京農大の公開講座で「構造改革の本質と格差社会」と題して講演した。当日は奇しくも小泉政権発足から丸5年を迎えた日。
 森永氏は小泉政権発足前の1999年にはパートやアルバイトなど非正社員率が28%だったのが、2003年には35%に上昇し、その非正社員の80%が年収120万円以下となっている実態を厚労省調査などに基づいて紹介した。また、国民健康保険料を支払えない人が全国で30万人と4年前の3倍に増えていることや、90年代には一桁だった「貯蓄ゼロ」世帯が24%に増え「4世帯に1世帯は一銭も貯金がない」ことなども指摘。
 「30年前にはもっとも平等な社会だった日本だが、OECDの貧困率調査(国民の平均年収の半分以下層の割合)では、昨年、堂々の5位になった」とここ数年の変化を公的機関のデータを挙げて話した。
 こうした格差拡大は、公共事業を5年で40%近くもカットするなど「需要を増加させるのではなく、供給を減らした結果。たとえば建設業などの分野で弱い企業を退場させ、生き残った経済強者だけで成長をめざす政策にある」と小泉政権を批判した。

◆優遇されるホリエモン

 また、農業や工業など一次、二次産業が中心の時代にはチームワークや連帯に価値があったが、IT、金融が中心になると「有能な人が海外に逃げてしまう」との理屈で一部の金持ち層を税制でも優遇、庶民に対しては発泡酒やたばこの増税、配偶者特別控除の廃止、社会保険料の値上げなどを次々と行ったと指摘した。
 一方、金融資産への課税は強化されず「ホリエモンは価値のなかった自社株の売却で140億円を手に入れたが課税は10%だけ。しかし、年収500万円のサラリーマンは社会保険と年金を合わせて30%も持っていかれる。あまりにも不公平」だとし、社長の平均年収が10億円を超えるという所得格差の激しい「米国のような国にニッポンをしてしまえばいいというのが小泉改革の原点だ」と語った。
 そのうえで森永氏は、100倍もの所得差が出るのはほんのわずかの能力と努力の差を劇的に拡大する市場原理にあり、「一生懸命、額に汗して働いた人がきちんと報われる社会へと、もう一度、構造改革をすべきではないか」と強調した。
 東京農大の公開講座は申し込み不要で無料。同大百周年記念講堂で行われている。5月17日は料理研究家の枝元なほみ氏、24日には(株)パストラル社長の小橋暢之氏が「元気の素は田舎にあり」と題して講演する。時間はいずれも午後4時20分から。

(2006.4.28)



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