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日本の食卓テーマに食料フォーラム −農水省 (6/20)


5人のパネリスト
5人のパネリスト

 「どうなる 日本の食卓〜WTO・農業交渉のゆくえ〜」と題した食料フォーラムが6月20日、よみうりホール(千代田区有楽町)で開催された。
 パネルディスカッションに先立ち、「ふるさとがあなたをつくる」というテーマで、小泉武夫東京農業大学教授が記念講演を行った。「ふるさとは我々の原点。子どものころに食べたものはいつまでも心に残っており、我々の食の原点がふるさとの食べ物にある。同様に、日本の食が我々の文化をつくってきた」と、子どものころ食べたものによって我々の人格が形成されるように、日本人が昔から食べてきた日本食によって日本の文化がつくられてきたことを説明した。「しかし、この数十年間で我々の食生活は穀類から肉や油が中心になり、家族みんなで食卓を囲む光景もあまり見かけなくなるなど、生活も大きく変わった。もう一度原点に戻って、日本食や農業を起源とした日本文化を見直そう」と語り、国を思うことは農業を思うことだと語りかけた。

■食の文化を失えば自給率は下がる

 現在、海外から安い農産物が多量に輸入されているが、WTO農業交渉しだいではさらに農産物の輸入が増えることも予想され、日本の農業は大きな転換期を迎えている。
 パネルディスカッションは、中川昭一農水相、安居祥策帝人(株)相談役、神野直彦東京大学大学院教授、女優の竹下景子さん、冨士重夫JA全中基本農政対策部長がパネリストで、農業ジャーナリストの中村靖彦氏がコーディネーターを務めた。
 中川農水相は「食の基本は安全・安心だ。10数年前の米の大不作の時に米を約260万トン緊急輸入したが、高いが安全・安心な国産米から売れ、最終的に外国産米が余った」と、政府としては関税引き下げ阻止に頑張るが、消費者も賢い選択が必要と語った。竹下さんは「WTO農業交渉では、強い立場の国が基準になっている。風土、気候などが国によって違うことを考慮していない。グローバル化により、文化や情緒が我々の生活から失われ行くように思います」と、各国が対等な立場の交渉ではないと述べた。冨士氏は「米など特定の品目の関税を除き、日本の関税率は12%〜15%程度と非常に低く設定されている。すでに76万トンのMA米が入ってきているのに、さらに関税を下げろと言うのは無茶な話だ」と、JAの立場を強調した。
 また、安居氏は自由化はある程度しかたないという立場から、「日本は外国との協力なしには生きていけない。自由化する場合、バランスを取ることが求められる」と、農家へ配慮しながらも海外からの要求に応える必要を語った。神野教授は、「我々が受け継いできた食文化や生活様式は、崩すべきではない。食の文化を失えば、自給率は下がる」と、食文化やそれに根ざした生活様式を守ることが大切との意見を述べた。 パネラーの5人はそれぞれの立場から日本の食卓について語った。小泉武夫氏が講演で語っていたように、『国を思うことは農業を思うことだ』との思いは伝わってきた。
 なお、パネルディスカッションの模様は、7月1日(土)午後11時30分からNHK教育テレビ「土曜フォーラム」で放映される。

(2006.6.23)

 

 

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