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厳しいなかでも堅実な決算を実現 17年度事業報告・決算などを承認
−JA共済連総代会 (7/28)


◆経営の健全性を引き続き維持

 JA共済連(上原寿宰理事長)は、7月28日に東京・品川のホテルで通常総代会を開催し、17年度事業報告および決算などを承認した。
 17年度決算の特徴は、建物更生共済が共済金の支払いによる収支の影響を2年間にわたって調整する制度となっていることから、16年度の自然災害による多額の共済金支払いが17年度にもあることで、基礎利益が昨年度に引き続いて減少したことがまずあげられる。
 こうした厳しい状況のなかで、生命総合共済では将来の収支悪化に備えるため、予定利率リスクに備える異常危険準備金の早期造成。建物更生共済では、将来の巨大災害に対する支払担保力を確保するために異常危険準備金を法令で規定される基準額(非課税限度額)まで新規積立てを行うなど、経営の健全性の維持・向上と経営基盤の確立を図っている。
 また、契約者割戻しについては、基本的に前年度同率を割り当てているが、17年度は自然災害が少なかったので建物更生共済の自然災害にかかる割戻率については引き上げた。その結果、共済種類合計の18年度に割り戻す割戻金は、17年度の割戻金より86億円増加した。
 17年度の主な経営指標は、総資産が16年度より8585億円増加の43兆5632億円(対前年比102.0%)となり、そのうち運用資産は16年度より9360億円増の42兆4762億円(同102.3%)となっている。
 支払余力(ソルベンシー・マージン)比率は、70.8ポイント増えて840.1%となった。これは、異常危険準備金の積立てや有価証券評価差額の増加により支払余力の総額が増えたことなどによる。
 共済事業本体の期間損益を表す基礎利益のうち利差損は277億円改善され5415億円となったが、16年度の自然災害の影響で建物更生共済の収支が悪化したために、基礎利益は16年度に比べて1038億円減少し、2304億円となった。なお、16年度自然災害による影響は17年度決算までとなる。
 また、実質的な債務超過かどうかを判定する基準である実質純資産総額は、16年度より4229億円減の6兆9630億円となったが、総資産に占める実質純資産の割合は16.0%で依然として経営の健全性を維持しているといえる。
 こうした17年度決算について上原理事長は総代会後の記者会見で「厳しいなかで安定的な内部留保、割戻ができ、堅実な決算ができた」と評価した。

◆生存保障ニーズにどう応えていくのか

 17年度の事業推進については既報の通りだが、長期共済では、新規契約が保障共済金額でほぼ前年度並みの実績をあげ8年連続して目標を達成し、年金共済も前年度比106.8%と16年度実績を上回るなど堅調な推移をみせた。
 また、LAを中心とするライフプランを意識した問題解決型推進の全国展開により、LA数が2万827人となり2万人の大台を超え、長期共済新契約に占めるLA実績が62.5%と60%を超えた(16年度は59.2%)。
 しかし一方では「保有契約高の減少や、生命共済・自動車共済新契約の伸び悩み、さらには、ニューパートナーの獲得など、取り組むべき課題も多く、これらの課題解決に向けて、早急に対策を講じていく必要があると認識」していると野村弘経営管理委員会会長が総代会冒頭の挨拶で述べたように、課題も多く残されたといえる。
 とくに、小損害に対する保障を拡充した建物更生共済「むてき」の登場が、自然災害多発によるニーズの顕在化と合致したこともあって、建物更生共済が過去最高の新契約高を達成したが、生命共済全体の新契約が16年度比86.2%と落ち込み10兆円を割った。なかでも死亡保障から生存保障へ消費者ニーズがシフトし、外資系だけではなく国内大手生保各社が力を入れ、実績も伸ばしてきている「医療・介護・年金」といった生存分野で「全国的にも伸び悩んでいる」(地区別総代会議結果報告)こと。これと関連して「ニューパートナーの獲得」についても目標達成率が60.3%にとどまっているが、これらへの取り組みがこれからの大きな課題といえる。
 これについて今尾和実専務は、満期共済が高い水準で続き保有減少は避けられないが、これからは「医療・介護・年金など第3分野で伸ばして」いかなければならない。19年度からの次期3ヵ年計画ではこの分野を「倍増しないといけない」と述べた。そして、JAにおいても「医療について目標設定・管理」をするなど目標管理の方法についても検討していくと述べた。
 現在、JA共済では「長期」と「短期」で区分しているが、「ひと・いえ・くるま」の総合保障(生命と損害の両分野を保障)といっているのだから、少なくとも生命系と建物更生共済など損害保障を分けて管理すべきではないだろうか。そうでないと、「いまは建更が売れているから」ということで「建更中心となり医療系ニーズが拾えない」という結果になってしまうのではないだろうか。
 また「JA共済 しあわせ夢くらぶ」のフォルダー登録が1000万人を超えたが「ひと・いえ・くるま」の全分野加入割合が前年度より0.3%減少し20.3%となっていることもあわせて今後の課題だといえる。
 少子高齢化の進展や農家収入の減少など、JA共済事業を取り巻く環境は依然として厳しいものがある。こうしたなかで、JA共済事業を進展していくためには、これらの課題は乗り越えねばならない壁だといえる。しかし、相互扶助の精神と常に組合員・利用者に安心と安全を提供し、地域社会に貢献しようとするJAグループにとっては、それほど大きな壁とはいえないだろう。

(2006.8.1)

 

 

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