農業協同組合新聞 JACOM
   
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格差解消に向け年内に戦略パターンを提示
−農山漁村活性化推進本部


◆省トップ全員がメンバー

 10月18日に設置された農水省の農山漁村活性化推進本部は、11月中旬の第2回会合で課題を整理し12月の会合で活性化のための複数の戦略パターンを示す。そのうえで年明け以降は地方の首長、有識者からヒアリングを行って農水省としての新規支援策、助長策を検討、8月下旬までに20年度予算要求に盛り込む新規事業をまとめる。
 都市と地方の格差拡大が指摘されるなか、安倍政権は「地方の活力なくして国の活力なし」を掲げ地方活性化を最重要課題としている。
 そのため農水省としても、独自に農山漁村の活性化支援を「目に見える形で出す」必要があるとして推進本部を立ち上げた。
 本部長は福井照政務官、副本部長は永岡佳子政務官が務め、本部長補佐の小林事務次官以下、省トップ全員がメンバーとなっている。農山漁村活性化のための省あげてのこうした本部設置は初めて。

◆農家所得5年で1割減

 農水省が示した資料によると、販売農家平均の農家総所得(年金・被贈等を含む)は平成10年では868万円だったが、15年には771万円と約1割減少している。
 主業農家の農業所得はこの間に539万円から474万円へと12%の減。準主業農家の農外所得は622万円から557万円へと10%の減となっている。とくに厳しいのが副業的農家で農外所得は605万円から477万円と128万円、21%も減っている(図1)。
 また農水省は一人あたり県民所得の推移も示した。それによると3大都市圏と地方圏の所得差は、12年度の62万円が13年度には58万円へと縮小を示したが、その後、再び格差が開く傾向をみせている(図2)。都市部では景気の上向きが浸透しつつあるとされるが、地方は依然として厳しい状況にあることが示されている。
 こうしたなか農家人口は2000年の1346万人から2020年には841万人へと37%減少すると推計。農山漁村部全体の人口減少率は15%(2025年時点)であり農家人口の減少は一層深刻だ。また、農山漁村部全体の高齢化率は2025年には35%となりその後は均衡するが、農業就労者に限った高齢化率は2020年に65%となる。
 ただ、急激な高齢化の進行は地方ばかりではない。東京圏でも2050年には高齢化率は40%近くと地方以上に進むと予想されている。独居老人の増加や孤独死などは都市部でも大きな問題となることも考えられ、農山漁村の活性化支援策を検討するにあたっては「決して対岸の火事ではない」(農水省農村政策課)ことを都市住民に訴え理解を求めていくことも視野に入れたいという。

◆相談窓口ワンストップ化

 会合では福井政務官が選挙区の高知県では生活保護世帯や広い世代で自殺者が増加していることなど貧困問題が深刻化していることを指摘し、地方を元気にする施策の重要性を訴えた。また、永岡政務官は都市との共生・対流に力を入れそのためのマンパワー育成が重要などと指摘した。そのほかブロードバンドサービスなど情報通信技術の普及が都市部にくらべて遅れていることからそれらを活用するための環境整備も新たな課題として示された。また、内閣府をはじめ他省庁との連携も課題となる。
 農水省では、一方で自らの創意工夫と努力で活性化している農山漁村もあることからそれらの事例から「交流・観光による活性化」、「バイオマス利活用での地域興し」、「地域資源を活用した独自の販売戦略」など、いくつかの戦略をパターンとして示し、それぞれを支援する事業の予算化をめざす。「市町村が戦略パターンを組み合わせて活性化をめざすなど、使い勝手のいい予算にしたい」(農村政策課)という。
 また、活用できる事業について市町村が気軽に相談できるよう、この問題の検討を機に省内で相談窓口のワンストップ化もめざす。格差拡大社会の是正に向けた政策として打ち出せるかどうか、今後の議論が注目される。

(2006.11.1)



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