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福岡パール、不適正な米穀取引で延滞債権10億円が発生


 JA全農の子会社である福岡パールライス(株)で取引先に対する多額の延滞債権(7月30日現在、約10億円)が発生し、この取引先との間で「実物の裏づけのない『仮装取引』という不適正な米穀取引」が行われていたことが判明した。 今年4月に福岡パールの取引先であるA社グループからの入金が滞ったことから、3月末に就任した福岡パールの社長が内部確認したところ、A社グループおよびC社に対する多額の延滞債権の状況が明らかになるとともに、両社との間で不適正な取引きが行われていることが判明。当該取引きを中止させるとともに、6月4日に全農本所に報告した。
 全農では、6月5日に理事長を本部長とする対策本部を設置。対策本部は、第三者で構成する「調査委員会」(委員長:中島肇桐蔭横浜大学法科大学院教授・弁護士、委員:弁護士6名・公認会計士4名)を設置し、事実解明・原因究明のための調査を実施。調査委員会は7月25日に調査報告書をまとめた。

◆取引先の売掛金焦げ付きを隠すために仮装取引開始

 調査報告書によると、A社は福岡県の米穀販売業者(卸登録はしていないが、スーパー等に米穀を卸売販売している)で、福岡県農協連の取引先だった。A社は福岡県農協連が、大口取引先に対して通常よりも長い支払サイトを認めていたことから、平成元年に共同で米穀を仕入れるための会社を設立する(後にA社が実質的に支配するB社に変わる)。この会社を経由する「福岡県農協連→米穀仕入会社→A社」という取引きを開始する。
 平成7年に食糧法が制定され、福岡県農協連は米穀販売会社から仕入が可能になり、福岡県農協連を帳合先とした「A社→福岡県農協連→米穀仕入会社(後にB社)→A社」という循環取引が開始される。
 平成11年にA社の販売先で売掛金の焦げ付きが発生(約4億円)し、A社グループの資金繰りが厳しくなり、B社の福岡県農協連に対する支払いの滞りが発生した(11年10月)。A社の売掛金焦げ付きを表面化させないために、福岡県農協連とA社が協議し、循環取引の形を借りて「実物米穀の裏付けのない仮装取引」が行われるようになり、福岡県農協連のA社からの仕入額が増大した。
 12年10月に福岡パールが設立されるが、仮装取引もそのまま福岡県農協連から継承され、この4月に中止させるまで継続されていた。
 また、C社も福岡県農協連の取引先である米穀販売業者で、この取引きにおいても「C社→福岡県農協連(福岡パール)→C社」という、米穀売買の形式をとった実物米穀の裏付けのない仮装取引が行われていたことが判明した。
 調査報告書では、関与者の法的責任について、民事上は「福岡パールの役員として善管注意義務違反を免れない者もいる」としているが、刑事上の責任(背任・特別背任)については、関与者の目的の立証が可能な根拠資料がでていないので、現時点では「刑事責任まで問うべきであるとまでは言えない」としている。
 また、再発防止については、自主点検方法の改善定期的な人事交流の実施内部監査の充実社外監査役の強化外部牽制機能の強化県本部コンプライアンス部門の充実コンプライアンス意識を高める、をあげている。

◆外部専門家によるパールライス事業の調査・検証を実施

 これを受けて全農では、子会社管理の強化、コンプライアンス意識の徹底など再発防止策を策定し実施する。とくにパールライス事業については、仮装取引など不適正な取引きがおこなわれていないかについて、公認会計士などに外部専門家による実地調査・検証を行い、不適正な取引きを一掃するとしている。
 また、福岡パール役員の善管注意義務違反に対する法的責任の追及、関係役職員の責任の所在を明確にし、厳正な処分を実施することにしている。

(2007.8.1)

 

 

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