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豪州との交渉で前例をつくるべきではない
−食・農・環フォーラム (2/26)


日豪EPA交渉で影響を受ける日本の食と農について語る服部氏
日豪EPA交渉で影響を受ける
日本の食と農について語る服部氏

 『日・豪EPA交渉と日本の農・食』をテーマに、「食・農・環フォーラム」の第76回学習会が2月26日、JAビルで開かれた。
 昨年12月に日豪両首相の話し合いで交渉開始が合意され、これから本格的な交渉が始まる。フォーラムは、服部信司東洋大学経済学部教授、小林光浩JA青森中央会営農支援センター長、金原主幸(社)日本経団連国際第一本部長、渡貫俊明NHK報道局経済部記者、の4名がそれぞれのテーマで講演した後、服部氏を司会者としてパネルディスカッションを行い、日豪EPA交渉について理解を深めた。

◆東アジアの一員であることは豪州の国家戦略

 服部氏は交渉の課題と日本の農・食への影響について語り、「日本の食と農を考えれば、▽重要品目を関税撤廃から除外または再討議、▽豪州が重要品目に配慮しない場合には、交渉中断を含めた厳しい判断を持って臨むべきだ、との国会決議(衆・参農林水産委員会)は当然だ」と、豪州との交渉で前例を作れば、アメリカ、カナダなど食料輸出国が同様な要求を突きつけるだろうと語った。
 小林氏は生産者の立場から、交渉が地域に与える影響についてのテーマで語り、「19年度から実施される新制度に向けて集落営農などに取り組んでいるが、もし、日豪EPA交渉が例外なき関税撤廃の方向に進めば、生産者は農業が続けられなくなる」と、生産者の現状を訴えた。
 また、金原氏は経済界の対応について語り、「交渉が進めば農業は崩壊するといった誤解した認識があると思う。豪州は東アジアの一員として生きていくという国家戦略があり、その最初の交渉相手として日本を選んだということだ」と述べ、日本はWTOだけでなく個別の交渉も進めるべきだとの認識を示した。
 渡貫氏は農業は貿易自由化とどう向き合うべきかのテーマで、「日本は豪州とのEPAで何を得たいのか、その点をはっきりすべきだ。国全体の議論がないのが気にかかる」と語り、マスコミの一翼を担う者としてもっと正確で正しい情報を提供する必要性を感じていると述べた。

◆貿易の自由化で我々の生活は豊かになるのか

 パネルディスカッションでは、このEPA交渉が始まる要因として、資源をめぐる国際情勢が(日本にとって)プレッシャーになっていることなどが理由にあげられるとの認識が金原氏、綿貫氏から示され、金原氏はそのうえで▽豪が交渉開始に熱心だった、▽他国との関係でFTA・EPAを締結しないことの不利益を強調した。小林氏は、「食の安全や環境も含めた幅広い視点が求められている」と、自由経済、市場経済のなかでどのように日本農業を守っていくかが問われていると語った。
 会場からは日豪EPA交渉について、▽農業の弱体化を招く、▽貿易の自由化で我々の生活は豊かになるのか、▽WTOと比べてFTA・EPAは不透明だ、との懸念が表明された。それに対して金原氏は「自由経済が前提、農業だけが特別ではない」、「我々はグローバル経済のなかで生きていかなければならない」、と語った。最後に服部氏が、この交渉の根底には資源・エネルギーの安定確保があるとの意見があるが、必ずしもそうではないような気がする」と、日豪EPA交渉にもっと多くの国民が関心を持ち国民的議論が起こることを期待したいと語った。

(2007.3.5)

 

 

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