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みんなが納得する農産物生産にGAPは必要
−日本施設園芸協会 (3/14)


自分の取り組み体験を語るパネラー
自分の取り組み体験を語るパネラー

 GAPに取り組んでいる生産者に加え、食品事業者、消費者などが加わり、GAPについての情報・意見交換を目的にしたシンポジウムが(社)日本施設園芸協会主催で3月14日に開催された。
 栽培から収穫までの工程だけでなく、洗浄、選果、保管、出荷、輸送にいたる各段階で衛生対策等を講じ、管理する方法をとりまとめたものがGAP(Good Agriculitural Practice:適正農業規範)だ。食品の安全性や品質の確保、環境保全など、さまざまな目的に対応して農業生産工程全体を管理し、適正な農業生産を実現するためには、有効な手段と考えられており、農水省は2004年から『生鮮農産物安全性確保対策事業』をスタートさせ、導入を推進している。
 同協会山本茂樹専務理事は、「安全で安心な農産物は、消費者だけでなく加工事業者などからも期待されており、生産者はその期待に応えなければならない。GAP取り組みの意義を消費者、食品事業者、流通業者を含めみんなで確認することが大切」と、このシンポジウムでGAPに対してそれぞれが持っている情報や取り組みを共有化しようと挨拶した。
 発表で、大崎善保東京デリカフーズ(株)取締役は、「消費者の健康・安全志向によって食生活が変化し、農作物の評価は、形から中身に変わってきた」と、食を取り巻く環境の変化を紹介。環境の変化に合わせ、「生産、流通・加工、消費、3者が一体となって、良い商品づくりをしなければならない。そのためにGAPは有効な手段だ」と、食品事業者としてもGAPの取り組みには期待していると述べた。
 また、福島県で食品事業者と連携してGAPに取り組んでいる『あぶくまGAP推進会会員』の松川太美寿アグリ福島有限会社代表は、「安全が担保できる農業がしたい、と言うのがGAPに取り組むきっかけだった。長期的に安定した販売が出来るよう、常に考えていた。GAPに取り組むことで品質が一定な農産物が作れ、それが消費者等からの信頼につながる」と、自分の経験を述べながら生産者がGAPに取り組む意義を語った。

◆食品を作っているという意識に変わった

 パネルディスカッションには上記2名の他に、JA足利トマト部部長の斉藤肇氏、全国地域婦人団体連絡協議会事務局長の加藤さゆり氏が加わり、それぞれの立場から意見を述べた。斉藤氏は、「播種から収穫まで87項目についてチェックリストをつくり、毎日自分の行動をリストに照らしてチェックすることを始めた」と、取り組み状況を説明。チェックを徹底して行うことで、「農産物を作っているという意識から、人が口にする食品を作っているんだという意識に変わってきたことに自分が驚いた」と語り、GAPに取り組んだからといって農産物が高く売れるわけではないが、農産物に対する意識の変化が一番の収穫だと強調した。「長期的に見れば、安全な農産物が消費者等に受け入れられ、安定した販売につながるのではないか」。
 加藤氏は、「GAPに取り組むことは、コストアップにつながる。現状ではなかなか価格に転嫁できず、生産者、食品事業者等の負担が増えることになる。私たち消費者はそれらの農産物を買い支えることで、ともに安全・安心な農産物を作っていかなければならない」と、価格的には多少高くても自分たちにとってなにが一番大切かということを考えようと訴えた。
 会場からは、GAPの取り組みは手段なのか目的なのか、との質問があった。複数のパネラーから、「コストはかかるが、安全な食品を責任をもって出荷するための手段だ。信頼関係を築いて、取引のパイプを太くすることが狙い」と、GAPに取り組むことが自分の利益につなることになるとの認識を示した。

(2007.3.16)

 

 

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