農業協同組合新聞 JACOM
   
農政.農協ニュース

農業の壊滅招く −議長テキストに各国農業団体が反発


 ファルコナー農業交渉議長が7月17日に提示した議長テキストについて各国の農業団体は厳しい批判の声を談話やプレスリリースなどと通じて発信している。

輸入国農業を壊滅に導きかねない−JA全中・宮田勇会長談話
 「議長案では食料安保など非貿易的関心事項の具体化がまったくなされていない。関税割当数量の取り扱い、階層方式の関税削減水準など輸入国農業を壊滅に導きかねない内容。まったく受け入れられるものではない。
 上限関税に直接的な言及を避けているのは一定の前進だが、国土・自然条件により高関税品目を抱えるG10諸国に多大な代償を求めている点は容認できない。絶対に譲れない一線として巻き返す。重要品目数も抜本的な改善がなされなければならない。
 大規模農業者、多国籍企業のみを利する案が示されたことは気象変動、世界食料需給の変化など地球規模の課題に対して前向きに対応したものとは到底考えられない。世界54か国の農業者の総意は『悪い合意なら、しないほうが良い』である」

米国に踊らされる姿が明らかになった−EU農業団体連合会(COPA)
「議長文書にはとりわけ米国のための条項や例外が数多く盛り込まれている。例として貿易歪曲的な価格変動対応型支払いや特定作物に対する高水準の支持を可能とするための規律を逸脱した設計、が挙げられる。
 一方、EUには市場アクセスで許容範囲を大幅に超えた圧力をかけている。牛肉では年50万トンの輸入増、豚肉輸入は100万トンを超え、鶏肉輸入は2倍になる。域内農業生産の甚大な削減に直面する。食料安保など最貧国にとっての重大な懸念も無視されている。
 EUマンデルソン委員はEU各国の貿易相を、許容し得る損害はどの程度なのかの選択肢を持てないような状況に追いやった。EUはもとより途上国に損害を与えるような合意は想像が困難。『EU閣僚理事会は今こそ立ち上がり議長案を拒否しなくてはならない』(ペネーソン事務局長)」

WTO文書はまだ十分でない−カナダ農業者連盟(CFA)
「国内支持で議長は大幅に見える削減を要求しているが、米国の実国内支出では何ら現実の削減に結びつかない。依然、米国には131億ドル〜164億ドルの支出上限が与えられることになる。一方、提案ではカナダの農家セーフティネットプログラムが潜在的な危険にさらされる可能性がある。
 重要品目に関わる提案はまったく受け入れられない。提案ではカナダは酪農産品、鶏肉、七面鳥、鶏卵といった供給管理品目すべてで供給管理制度を維持することができない。『カナダは補助金を削減しアクセスを改善してきたが、一方で米国は補助金を温存し欧州は市場を閉ざしたまま。議長文書はこうした不公正を糾す点で十分とはいえない』(フリーセン会長)」

コクラン農相は拒否しなければならない−アイルランド農業者協会(IFA)
「ウォルシュIFA会長は議長提案を断固拒否するようコクラン農相に求めた。『議長の関税削減提案では、牛肉とほとんどの乳製品の関税は70%程度削減される。これはEU閣僚理事会で採択されたポジションを明らかに超える。EUが牛肉を重要品目に指定しても、税率ゼロか低関税での追加的輸入を受け入れざるをえず、これは年50万トン相当の追加量。
 食品の安全性、トレーサビリティ、健康や環境に関して、ブラジルやその他の輸出国でまかり通っている異なる基準に対処する提案はひとつもない。』)

(2007.7.26)

 

 

社団法人 農協協会
 
〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町3-1-15 藤野ビル Tel. 03-3639-1121 Fax. 03-3639-1120 info@jacom.or.jp
Copyright ( C ) 2000-2004 Nokyokyokai All Rights Reserved. 当サイト上のすべてのコンテンツの無断転載を禁じます。