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JAの総合力で担い手から信頼を −トップセミナー


 担い手のもとにJAの専任担当者が出向き、ニーズに対応した事業対応を強化するため「JAグループ全国連担い手対応連絡協議会」(全中・全農・全共連・農林中金)は8月1日、東京・大手町のJAホールで「担い手対応トップセミナー」を開いた。
 セミナーではJAの総合力で担い手の信頼を勝ち取ろうをテーマに先進的な事例報告などから、JA役員のリーダーシップによる体制づくりと担い手の的確なニーズ把握の重要性が指摘された。

◆取り組みにJA間で格差

 JA全中の「担い手対応強化に関するJA調査」(回答:42府県615JA)によると、担い手対応を担当する渉外チームを設置しているのは208JA(34%)となっている。また、組合員の農業経営管理支援を実施しているJAは64JA(10%)にとどまり、19年度から取り組むとしているJAも73JA(12%)となっている。
 一方、JA全農では新生プランで、国の担い手基準のほかに各県基準でも担い手を登録していく取り組みを進めているが、6月末現在で285JAで9万8000人あまりが登録されている。
 具体的な担い手対応の取り組みでは、多くのJAでは対応強化を事業方針に盛り込んでいたり、資材の優遇措置などは実施されている。しかし、渉外チームの設置JA数などからも分かるように担い手の経営安定を図るための、総合的な事業対応には県・JAで濃淡があり、JAグループでは今後、連合会の支援の充実などにより取り組み水準を上げる必要があるとしている。
 セミナーでは先進JAの専任担当者の出向く体制の具体的な姿が映像で紹介されたほか、生産法人の代表者から担い手の要望も報告された。
 担い手農業者からは、経営安定のための作物の選択支援の大切さや、JAのネットワークづくりによる販売力の発揮など、単なる担い手へのサービス向上ではなく、経営者育成と地域農業振興の視点でのサポートが必要だと意見もあった。

日報のチェックで声をつかむ−JA庄内たがわ・太田重義常務

JA庄内たがわ 太田重義常務
JA庄内たがわ
太田重義常務
 経済事業の落ち込みから組合員ニーズの把握が求められていた。18年3月に営農経済専門員(アクトチーム)3名を配置。農家を規模と利用度で3ランクに分け一人220戸を担当することに。推進ノルマを課すと訪問しやすい組合員宅にかたよるため訪問ノルマのみを設定、月200戸を目標にした。
 ふれあいを重視した経営改善相談、金融融資相談のほか、生産指導員との連携による新規作物導入支援も行っている。結果的に資材供給高は18年度は8%の伸びを達成。日報や情報連絡票を点検して組合員のニーズを把握することを重視している。担い手ニーズに合ったタイムリーな情報提供が今後の課題。

プロセス管理の徹底を重視−JAそお鹿児島・山野徹参事

JAそお鹿児島 山野徹参事
JAそお鹿児島
山野徹参事
 平成10年に組合長のトップダウンで総合渉外員=TAFを設置。業務は徹底的な訪問活動を通して担い手農家の「悩み」、「要望」「苦情」を聞きその解決策を立案・実践すること。プロセス管理を徹底し農家訪問の結果を反映した提案型事業推進に取り組んできた。検討は購買事業部門や金融部門などの担当者とともに『横串』を入れる体制をとっている。
 9年間で7万件以上の訪問活動を通じて分かったことは、税務・経営相談の重要性。組合員はJAに支援を求めており青色申告指導は非常に感謝される。農家の経営・家計をもとに「夢」「悩み」の共有化を図りやすい。

待つJAから出向くJAへ−JA宮崎中央・川端一馬経営支援室長

JA宮崎中央 川端一馬経営支援室長
JA宮崎中央
川端一馬
経営支援室長
 自主運営の組織、農業経営改善協議会と連携した事務局体制を強化し経営支援室を設置。きっかけは中国・韓国などの生鮮野菜輸入増で経営不振農家が出たこと。農家の経営安定がJAの経営安定につながる。記帳代行から農家の経営指導を行い、経営不振原因の確認、再建計画の策定、進捗管理などを行っている。融資から技術まで総合的な提案による個別指導でJAの総合力発揮をめざしている。
 今後は新たな担い手の育成・確保をめざして農家に経営革新プランの提示などを行い目標管理と早期の経営モニタリングをして元気な農家をつくるための経営診断事業も行っていく。

導入作物のアドバイスを−西老松営農組合(滋賀)・安田惣左衛門組合長

西老松営農組合(滋賀) 安田惣左衛門組合長
西老松営農組合
(滋賀)
安田惣左衛門
組合長

 組合長以外、全員サラリーマンの84戸でつくった集落営農組織で57haを経営。省力化のほか、環境こだわり米の面積拡大や麦では不耕起密植栽培、黒大豆の拡大など付加価値向上が課題となっている。組織運営の管理は利益の確保にあるが、生産者としては何を作ればいいのか情報がほしい。なかなか生産者は判断できない。消費動向による販売価格推移の予測などだ。また、コストダウンと収益性の向上のために集落を越えた営農協力体制を推進することも課題としている。

 

計画的な生産・販売支援を−和郷園(千葉)・木内博一代表理事

和郷園(千葉) 木内博一代表理事
和郷園(千葉)
木内博一代表理事

 農家経営を支えるシステムの構築を望みたい。JAは農家をお客さんにしてはならない。農家は地域農業の担い手であり経営者育成のためのサポートこそ必要。農産物価格が低迷しているとき、JAは北から南までのネットワークをつくって計画的な生産・販売をするうねりをつくりだすべき。そうしないと買い手主導でもっと価格は下がってしまうのではないか。
 担い手とJAとの関係はたとえば代金決済のみ、資材供給のみ、運転資金提供などもっと多様な取引関係があってもいい。

(2007.8.6)

 

 

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