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新農相に若林前環境相が就任 (9/3)


若林新農相

 9月3日に辞任した遠藤農相の後任に就任した若林正俊前環境相は4日に就任会見を行った。若林新農相は、大臣の退任が続く状況を「異常な事態と言っていい」と指摘、まずは農林水産省の職員が自信と使命感を持って元気に対応できる体制を築くことや、農政への信頼回復のために「地方の声を待っていてはだめ」とできるだけ現場に出向いて生の声を聞く姿勢を徹底させることなどを強調した。
 また、農地の借地自由化については「まったくフリーにして大丈夫と言い切れるのかどうか懸念を持っている」と慎重な姿勢で臨む考えを示した。以下は会見の要旨。

(基本姿勢)
 WTO交渉、日豪をはじめとしたEPA交渉などひとときも停滞を許されない状況がある。この職責の重大さを改めて痛感。全力を尽くして任務をまっとうしたい。
 異常な事態と言っていい。大臣が次々と退任をする事態が続いている。まずは職員が自信と、農山漁村の活性化、国民に安全な食料の安定供給を図るという重大な使命を負っているという責任感、使命感をしっかりもって元気に対応できるような体制を築き上げなければいけない。
 何といっても農業の体質強化が課題だが同時に生産と生活の場が同じところで行われている。農山漁村の活性化も必要。車の両輪として生産体制の強化、農山漁村の活性化の両方が進まなければならないと考えている。これを一体として進めていく。

(食料自給率)
 平成27年に45%をめざして取り組んでいるにも関わらず、なかなか40%という壁を抜けないでいる。そのなかで39%に低下したことに大変危機感を持っている。
(農相を兼任していた)8月10日に私の指示事項として自給率に非常に影響の大きいコメについての消費の拡大、さらに飼料作物について国内での粗飼料を中心とした飼料生産の拡大、そして油脂類(の消費が)自給率を下げておりこれは食生活の問題。日本型食生活を熱心に進め食育の視点からもこれに重点をおいてきたが、あるべき食生活のあり方をすすめていくうえでもっと国民に理解してもらう。健康管理面と合わせて、このことが食料自給率を下げ、国の食料安定供給にも大きな問題になっていることをもっと国民運動的に展開しなければならない。需要面をしっかり理解してしてもらうことがないとなかなか生産面だけでは難しい。

(農地政策改革)
 所有と利用の問題では30年前から農地法改正で借地による農地の拡大をめざし、あるいは実際の所有状況を変えるために農地保有合理化事業や集団利用の推進などいろいろ取り組んできたが、農地の利用集約はうまく進んでいないことが明白になっている。
 これからの農地政策は認定農業者などの担い手を中心にしてそこに農地がどういうかたちでまとまって利用されるようになるのか、権利関係の調整がスムースにいくようにする。また、集落営農の組織化がしやすくなるように、集落を担っていく人たちとの(間で)所有と利用の関係を円滑に進めるようなシステムなど、あらためて仕組みを見直して有効に利用しやすい仕組みにしていくことが大事だ。

(農地の借地自由化問題)
 幅広くいろいろな立場の意見を聞いたうえで結論を出すべきだと思っている。
 かつて農地利用増進事業を提案したとき、農協なども主体に入れるようにしたが(最初の)10年ぐらいはなかなか動かなかった。しかし、最近は農協も積極的。農業生産法人も昔よりも活発でいろいろなかたちも出てきている。状況変化を考えながら、まったく自由にすればうまくいくのか。それとも面的集団的な利用を進めるためにはある枠組みのなかでやっていくのかがいいのか。まったくフリーにしても大丈夫だといい切れるのかどうかというのは私はやや危惧の念を持っている。

(農政に対する不信解消の具体策について)

 地域の声、意見というものを待っていたんではだめだと思う。地方の部局も含めてご用聞きに出かけていく。
 私自身もできるだけ生の話を聞いて地方の農業関係者に農林水産行政が遠い存在になっていると思われないように、積極的に聞いていく姿勢を徹底したいと思う。

(民主党の農業政策への対応)
 農業の生産力を高め農村地域の活性化を図っていくという同じ土俵の上に立っている。あまり観念的な議論や非難合戦ではなく民主党が提案するのなら、国会で議論ができるように(法案等)出していただき、お互いに意見の違いがどこにあるのか、国民が審議を見ながら国民が判断をしていくという姿勢がいいのではないか。
 民主党の戸別農家の所得補てん制度も制度としてきちんと仕組めるのかという疑問も持っているが、しかし、それがきちんと法案のかたちであるいはシステムとして提案されないと議論できない。提案をしていただいて十分審議をするということで道は開けてくるのではないかと思っている。

(2007.9.7)

 

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