農業協同組合新聞 JACOM
   
農政.農協ニュース

組合間連携実施は1割弱、条件次第で連携
組合間提携の事例を検証 −農水省


 農水省はこのほど、農業協同組合(以下農協)、森林組合および漁業協同組合(以下漁協)間における事業連携促進方策の中間取りまとめを行い、内容を公表した。

◆異業種間連携で農山村に関係した事例が対象

 組合間の事業連携には、同業種間で行われるもの、異業種間でおこなわれるもの、同業種の系統内で行われるもの、3つに分けることができる。今回は異業種間(農協と漁協など)でおこなわれる連携のうち、農山漁村に密接に関係している事例を取り上げている。とりまとめは、経営局協同組織課、林野庁経営課、水産庁経営課等の省内関係課と、JA全中、全国森林組合連合会、全国漁業協同組合連合会の関係団体が連携して行った。17年8月に行ったアンケートの調査結果や、その後の事業連携を行っている組合の現地調査、有識者を交えた組合との意見交換会、事例発表会などを実施し、事業連携効果や事業連携の進まない理由等を調べ、事業連携を推進する方策を検討し、中間取りまとめを行った。

◆行政に事業間の調整役を期待

  農協、森林組合、漁協とも事業連携を行っているのは1割弱で【表-1】、その相手は農協は森林組合と約2割、漁協と約5割。森林組合は農協と約5割、漁協と約3割。漁協は農協と約4割、森林組合と約1割。森林組合、漁協とも、農協との連携が多い【表-2】
 事業連携を行うようになったのは、地場産品(副産物を含む)の販売・PR、地産地消、環境整備などが主な理由となっている。今後については、「現状維持」と「拡大したい」がともに4割で、農協と漁協は「現状維持」、森林組合は「拡大したい」との意見が多くなっている。また、連携を行うためには6割の組合が「行政の関与が必要」と答え、行政に事業間の調整役を期待している。事業連携を行っていない組合では、7割が今後も連携する意向なしと答えている。

表1・表2

◆連携して環境保全活動など行い地域活性化に一役

 漁協が森林組合の指導等を受け上流の山間部に植樹活動を行うことで、森林が再生するとともに沿岸漁場の水質改善が行われるなどの環境保全活動、漁協の移転に伴って空いた支所の購買倉庫を改築して、農林水産物の常設朝市店舗の開設などの遊休施設の活用、など事業間連携に取り組んでいる事例では、地域の活性化につながるような様々な効果が現れている。また、事業量拡大による組合員等のメリット増大、各組合の新たな事業の創出、なども連携の効果として報告されている。
 一方、事業連携がなかなか進まない理由として、各組合はそれぞれ農業者、山林所有者、漁業者の組合員向けのサービスを行っており、他組合と協同あるいは連携して事業展開するという意識が薄かったことや、組合間の規模の格差などが理由として上げられる。しかし、各組合員とも重複して他業種の組合員であるケースも多いことから、事業連携は今まで組合が行ってこなかっただけで、個人レベルでは受け入れられる可能性があるのではと思われる。【表-3】

表3

◆販売中心の連携から日常的な人的交流へ

 また、「事業連携の申し入れがあった場合、提携する意向がある」、「内容次第では検討の余地がある」と回答した組合が約4割あることから、条件次第では連携は進むものと思われる。各組合の事業を熟知し、組合間をつなぐコーディネーター役を務める人材の不足も、連携の進まない理由の一つとなっている。
 現在の事業連携では、農林水産物の直売所等における販売連携が多く見られる。今後はそのような販売連携をテコにして、地域産業の発展や新たな事業の創出により地域の活性化を図る仕組み作りが求められる。また、販売連携にとどまらず、集会所施設や研修施設等、組合員が共通で利用可能な施設について協同で運営していくなど、幅広い連携も視野に入れることが必要で、地域の祭りなどを通じてそれぞれの組合の役職員や組合員が日常的に交流を深めることが大切になる。
 農水省は今後、より多くの事例を検証するとともに、最終報告をとりまとめたいとしているが、とりまとめ時期は未定。

(2007.10.3)

 

社団法人 農協協会
 
〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町3-1-15 藤野ビル Tel. 03-3639-1121 Fax. 03-3639-1120 info@jacom.or.jp
Copyright ( C ) 2000-2004 Nokyokyokai All Rights Reserved. 当サイト上のすべてのコンテンツの無断転載を禁じます。