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次期土地改良長期計画の策定方向検討
−農業農村振興整備部会第2回会議


  農水省の農業農村振興整備部会(部会長:林 良博(はやしよしひろ)東京大学大学院農学生命科学研究科教授)の第2回会議が9月28日農水省で開催され、9月7日第1回会議で設置された技術小委員会のメンバーを決めたほか、来年度に改正する次期土地改良長期計画に反映させる課題を協議した。
 技術小委員会は、三野 徹(みつのとおる)氏(京都大学名誉教授・岡山大学名誉教授)を委員長に計8名で構成する。今年度に見直しを行うことになっている土地改良事業計画設計基準(頭首工)と、土地改良施設管理基準(排水機場編)の改定案を策定し、部会に答申する。

◆土地改良は基盤整備、農村整備が柱

 土地改良事業の大きな柱は土地基盤整備と農村整備の二つ。土地基盤整備について現行計画(平成15〜19年)のもとでは、担い手の経営規模が拡大し、農地利用集積が進んだ。水田の排水改良により、水稲以外の作付けが可能になり、耕地利用率が向上した。また、農地防災事業で被害の恐れのある農用地面積は減少した。
 しかし、その後の状況の変化が激しく、人口減少や高齢化社会は農村にも急速に波及し、農村地域や農家人口が減っている。国際化の進展も激しく、WTO、FTA加速化への対応が急務になっている。わが国の食料自給率が低迷していることや、世界的な人口増、経済発展による食料需要の増大で、食の安全・安心が消費者の大きな関心事になっている。地球温暖化問題が引き起こす世界的なバイオ作物需要の増大や気候変動による災害リスクの増加も大きな問題だ。
 このため、次期計画の課題として、コスト縮減など国内農業の体質強化が必要とされる。体質強化には、担い手への農地の面的集積も必要だ。輸出促進に向けた高品質、低コストな農産物の生産も体質強化の一翼だ。
 わが国の食料自給率は先進国のなかで最低の39%。さらに農村の過疎化、高齢化による耕作放棄地が増加しており、優良農地の確保と有効利用が必要だ。社会資本整備投資余力が減少するなかで、既存施設の長寿命化、更新も必要とされる。自然災害の多発による農地災害対策も課題として上げられている。

◆農村整備は、循環型社会への寄与を

 農村整備については、現行計画のもとで家畜排せつ物の処理が改善され、9割が循環利用されている。集落排水汚泥の堆肥化施設の整備が進み、リサイクル率が6割になった。
 その後の情勢の変化としては、農村の集落機能が脆弱化する一方で、生物多様性や景観保全を含め、国民の農村への期待が高まっている。地球規模の気候変動が災害リスクの増大をもたらした。温室効果ガスの影響により、地球規模の温暖化が進んでいる。バイオマス等資源の循環利活用が世界的に進められている。
 このため、次期計画の課題として、過疎化高齢化により弱くなった災害時の共助体制を強化するための防災情報システムやハザードマップの作成が必要とされる。また、廃棄物系バイオマスの利用を促進し、循環型社会への寄与が必要。田園地域や里地里山の特徴に配慮し、水田や水路、ため池などの水と生態系のネットワークの保全も必要とされる。農山漁村活性化法を制定し、定住・交流を促進し、農山漁村を活性化させることも課題として上げられている。
                             
 整備部会は、今後こうした課題をベースに検討を進め、次期長期計画案を詰めて行く。次回(3回目)は10月19日に、新潟県下で現地調査を行う予定。

(2007.10.10)

 

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