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「世界の食料に何が起きているか」を検証
〜食料の未来を描く戦略会議(第2回)開催 −農水省 (10/9)


 農水省は10月9日、「食料の未来を描く戦略会議」(座長:生源寺眞一東京大学大学院農学生命科学研究科長・農学部長、座長代理:養老孟司東京大学名誉教授)の第2回会議を開催し、「世界の食料に何が起きているか」をテーマに現状の検討、意見交換を行った。
 若林農水大臣が衆議院予算委員会出席中のため、今村農水副大臣が出席し「環境大臣としてこの戦略会議の第1回会議に出席したが、担当大臣として出席できないのは誠に残念。次回以降出席したい。世界の食料需給の逼迫が、国内で小麦粉製品などの値上がりとなって波及している。国民生活に影響を与える世界の需給の現状について、議論していただきたい」との大臣挨拶を代読した。
 同戦略会議は、食料・農業・農村政策推進本部長決定により、農水大臣主催の会議として設置された。毎日の生活に欠くことのできない食料の安定供給を図るための方向性について議論し、食料問題に関する認識を国民全体で共有するのが目的。平成19年7月11日に第1回目の会議を開き、今回は3か月ぶりの開催。

◆バイオエタノールとの競合顕著

 世界の食料の現状についての資料の要旨は次の通り。
最近、国内でさまざまな食料品の価格が上がって家計費の負担増=バイオエタノールとの競合で、大豆油が2割値上がりし、マヨネーズが17年ぶりに値上がりした。とうもろこしもバイオエタノールとの競合で飼料価格が高騰し、チーズ、ハム、ソーセージが値上がりした。小麦粉が24年ぶりの値上げで、即席めん、パスタなどが値上がりした。
わが国の食料自給率は18年度39%に、1%低下=品目別の自給率の差が大きく、米は94%、大豆・野菜・果実などは32%、畜産物は16%など。また、品目別の輸入先は特定の国に集中しており、海外の影響をもろに受ける構造になっている。小麦はアメリカ(53.8%)、カナダ(24.2%)、オーストラリア(21.9%)に集中。大豆ととうもろこしははアメリカに集中していて、それぞれ76.5%と96.3%。
世界の穀物の生産量は、1970年の10億7900万tが2006年には20億8600万tに。需要量は1970年の11億800万tが2006年には21億400万tに。ほぼ平行しているが、期末在庫は安定水準と言われる17〜18%に対し、2006年の予測値は15%と安全圏を割り込んでいる。2000年の在庫率は30.5%だった。このため、国際価格も上昇。
世界的な食料需給を決める新要因出現=需要量を決める基礎的な要因は世界人口の増加と所得の向上にともなう畜産物の需要増加だが、これにバイオ燃料向け農産物の需要増加と、中国の急激な経済発展による需要増がプラスされている。供給量の基礎的な要因は収穫面積の増加と単位面積当たりの収量の増加だが、これに異常気象の頻発、砂漠化の進行や水資源の制約、家畜伝染病の発生などのマイナス要素が重なっている。
人口と所得の増加により、食料需要が拡大=世界人口は1970年の37億人から2005年には65億人に増加した(以下、いずれも1970年と2005年との比較)。途上国では27億人から53億人へと倍増。世界の1人当たりの所得は887ドルから6896ドルへ7.8倍増。このため、需要は小麦が1.9倍、とうもろこしが2.7倍、大豆が4.8倍に拡大した。
世界の収穫面積は1970年を100とした場合2004年は100.9で横ばい。単位面積当たりの収量は品種改良、肥料増、かんがい排水施設増加で186.1となったが、今後の伸びはほぼ頭打ちだ。人口は増えているため、1人当たりの収穫面積は1970年の18.3aから2004年は10.5aに減った。
バイオ燃料の生産が大きく伸び、非食用の穀物需要増へ=世界のバイオエタノール生産量は2001年の3132万klが2007年は6256klと増加。アメリカのとうもろこしのエタノール仕向け割合は2007年27%。ブラジルのさとうきびのエタノール仕向け割合は2007年50%に達している。

◆急増した中国の食料需要

中国の経済成長で食料需要が大幅増に=中国の人口は1970年の8億人が35年後の2005年には13億人(世界人口の2割)へと1.6倍増えた(以下、1970年と2005年との比較)。5億人の増は日本の4倍の食料需要増に当たる。1人当たり所得は10倍増。このため、肉類や油脂への志向が高まり、穀物需要が飛躍的に伸びた。穀物需要は2倍、うち飼料穀物は9倍増。この結果、中国は2004年から農産物の純輸入国に転換した。
異常気象が頻発=わが国の輸入シェアが小麦20%、大麦60%を占めるオーストラリアでは2006年に”100年に一度”の記録的な干ばつで、麦は前年の6割減になった。2007年も干ばつが続き、大幅減。とうもろこし94%、小麦57%、大麦20%を依存するアメリカでは、2005年に過去最大級のハリケーン「カトリーナ」が穀物輸送港湾施設に被害を与えた。日本への穀物輸出が一時ストップし、輸送コストも上昇した。小麦23%、大麦20%を頼るカナダでは、2002年に大干ばつで前年に続き減産し、一時輸出を停めた。他に、世界では毎年日本の農地(469万ha)を上回る500万haが砂漠化している。
家畜伝染病が食料の安定供給に影響=台湾で平成9年に口蹄疫が発生し、同国からの豚肉の輸入を停止した。当時のわが国が輸入する豚肉の台湾産比率は4割だった。中国で平成13年に鳥インフルエンザが発生し、同国からの鶏肉の輸入を停止した。当時のわが国が輸入する鶏肉の中国産比率は4割だった。アメリカで平成15年にBSEが発生し、同国からの牛肉の輸入を停止した。当時のわが国が輸入する牛肉のアメリカ産比率は5割だった。タイで平成16年に鳥インフルエンザが発生し、同国からの鶏肉の輸入を停止した。当時のわが国が輸入する鶏肉のタイ産比率は4割だった。病気が発生すれば、物があっても輸入ができず、大きな混乱をもたらす。
▽飽食と飢餓が並存=世界で20億人が肥満といわれる。一方で栄養不足人口は8.5億人。毎日約2万4000人が餓死している。

 主な意見は、次の通り。
さまざまな食料の価格が上昇しているが、欲しい物が手軽に買えるので、国民に危機感がない。実態を知らせる情報をドンドン出して欲しい。
バイオエタノールと食料との競合関係をしっかりと広報して欲しい。
自給率低下とコメの減反政策との整合性は?生産者にとっては、自給率より自分の農業経営がペイするかどうかが大切。
農地の所有と経営は分離すべき。
温暖化で、群馬のレタスの出荷期間は従来の5月中旬〜10月始めが4月下旬〜11月上旬へと広がった。虫の発生分布も変化した。
外国の輸出制限に備え、エコフィード、飼料作物の増加を急ぐべき。     
                             
 各国はまず、自国の食料を確保し、余剰部分を輸出することを基本とするため、輸出国や貿易仕向け量は限られる。さらに、最近の食料生産や供給面での変化を考慮すると、輸入に頼る食料の確保は、極めて危険な側面をともなうことが明らかにされた。
 戦略会議は、国内生産、輸入、備蓄のあり方を含む未来の食料戦略を構築して、国民に対する食料の安定供給を確保して行くことが国民的課題としている。
 農水省は、対策論議を今後4〜5回程度行い、対応策をまとめ、逐次政策に反映させる方針だ。
 次回の会議は12月に開催し、「世界の食料需給の見通し」などについて検討する。

(2007.10.11)

 

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