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直接支払い、計画生産参加が条件 −民主の農業法案


 民主党は開会中の臨時国会に販売農家を対象に直接支払いを行う「農業者戸別所得補償法案」を参議院に提出、審議入り前の10月22日には自民党国会議員への説明会を開いた。
 同法案ではその目的に(1)食料の国内生産の確保、(2)農業者の経営安定、(3)食料自給率の向上、(4)地域社会の維持・活性化と農業の多面的機能の確保を4点掲げている。
 この目的にそって国、都道府県、市町村は「主要農産物」について生産目標数量を設定する。法案では生産数量の目標について、農業者の意向をふまえることと、国、都道府県、市町村は設定した目標数量の達成に努力することも定める。 同法案では具体的な「主要農産物」とは、米、麦、大豆その他、自給率向上などの「目的」を達成するのに資するもの、として別途政令で定めるとしている。
 農業者戸別所得補償法案はこれら「主要農産物」について、「標準的な販売価格と標準的な生産費の差額」の面積単価を算出し、農業者の生産面積に応じて直接支払いするというもの。
 民主党の平野達夫参議院議員は、主要農産物について市場価格と生産費に差があるものは「幅広く対象にする」と説明、品目横断的経営安定対策の対象品目のでんぷん原料用ばれいしょやてん菜のほか、ソバ、なたねなども対象にする考えを示している。
 また、生産目標数量の設定の考え方については、米と麦、大豆、その他の品目を区別し、自給率の低い品目は生産振興の観点で設定するが、米は需給調整を基本として国と農業団体で目標数量を決める。直接支払いはこの計画生産に参加することを条件にするという。
 直接支払いの対象とする農業者について、「(政令で定める)主要農産物を生産する販売農業者」としているが、この定義について現行の定義(年間販売額50万円以上また経営耕地面積30a以上)を適用するものではないとし、「少しでも出している(出荷)農家は販売農家としたい。できるだけ幅広く」(平野議員)と説明する。
 また、直接支払いには、品質や規模拡大、環境保全への取り組みや、米に代わる転作作物の導入を対象に加算措置も盛り込む。そのほか、中山間地域直接支払いを法制化して恒久的な制度にする考えで、直接支払い部分に加えて条件不利地域に対しては、さらに平たん地域との格差を埋める制度にするという。
 民主党は今のところ直接支払いの交付に面積要件を設定しないとしており、平野議員は「農山村は今までにない厳しい状況に直面している。今、がんばっている人たちに将来をつくってもらうことが必要だ」と強調する。
 同制度の経費には年間1兆円を要するという。財源について福山哲郎民主党参院政審会長は、現行農林予算のうち4000億円程度は組み替え可能だとし、また、3兆5000億予算のうち決算では4500億円が余ると説明。財源確保には「決算上の不要額を検討する」ことも必要だと主張する。
 同法案について農水省の白須敏朗事務次官は10月29日の農林記者会での会見で「対象品目や補償水準といった重要事項について政令におろされていて、率直に言って全体像が明確になっていないのではないか」と指摘、また、昨年提出の法案では生産調整を廃止する方向が示されていたが、今回は目標数量を配分するなど「依然としてよく分からない部分が多い。(民主党案のような)直接支払いが可能なのか、それによって日本農業が直面している脆弱な構造が固定化することになるのではないかなど、国会でしっかり議論されていくなかで明らかになるのではないか」などと話した。

民主党の表

(2007.10.31)

 

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