農業協同組合新聞 JACOM
   
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米政策の抜本的見直しを求める
品目横断、要件弾力化で「多様な担い手」を対象に
全国から1000人が結集 −水田農業・基本政策確立全国代表者集会


 JA全中と全国農政連は11月6日、東京で「水田農業・基本政策確立全国代表者集会」を開いた。米価の下落で苦悩する現場を代表して農業者、農協関係者約1000人が集まり、米の生産調整実施のメリット措置の抜本的な拡充措置や国の責任と役割の強化など、現行政策の抜本的な見直しを求めた。


全国代表者集会11月6日

 JA全中の宮田勇会長は「本来であれば農作業の無事に感謝し収穫を喜ぶとき。しかし、年々の米価の下落で生産調整に正直に取り組む地域で作りあげた担い手は将来展望を拓けない危機的な状況にある」と現状を訴え、「確信を持って水田農業の再構築に取り組むためには生産調整実施者に対するメリットの抜本的な拡充、強化が必要だ」と強調した。
 また、品目横断的経営安定対策についても「地域における多様な担い手」が施策対象となるような集落営農要件や、担い手に十分な支援となるような水準の見直しなどを求めた。
 政府・与党は10月末に米34万トンの政府買い入れなど緊急対策を決めたが、自民党では引き続き来年度からの米の生産調整のあり方と品目横断的経営安定対策の見直しなどを11月中旬に決める方向で検討している。
 集会では廣瀬竹造JA全中副会長(水田農業対策本部委員会委員長)が集会前の水田農業対策本部委員会と全国会長会議を経て決まった事項について代表要請を行った。米政策では(1)生産調整実施者メリットの抜本的拡充・強化、(2)生産調整に参加する担い手の万全な所得対策の確立が柱。また、品目横断的経営安定対策の見直しでは(1)地域における多様な担い手を対象とするための対策、(2)生産条件不利補正交付金(ゲタ対策)の十分な支援水準確保と事務の簡素化、を柱とした。そのほか、生産調整に関しては「国の責任と役割の強化」も重視している。

◆生産費補償に意欲

 集会に参加した与党幹部からは、生産調整実施者メリットや販売価格と生産費の差を補てんする政策(ゲタ対策)などをめぐる考え方が示された。
 谷津義男自民党総合農政調査会会長代行は「米のゲタ(対策)ができないか(検討している)。それにはみなさんの応援が必要、一体となって実行にうつしていかないとうまくいかない」と述べた。また、公明党の西博義農林水産部会長は「一生懸命、目標の量をつくった人が憂き目をみることがあってはならない」と産地づくり交付金の積み上げなど生産調整実施者へのメリット拡充の必要性を指摘したほか、大幅な米価下落の場合には「特別な方法もいると考えている」と述べた。
 自民党農業基本政策小委員会の西川公也委員長は米価に関して「コストと価格が逆転していてこれで産業といえるのか。産業として農業を立ち直らせたい。価格がコストを下回っていることについてはゲタ(対策)の導入も辞さない」と語ったほか、来年からの生産調整について「国の関与はしっかり昔に戻す」と話し、未実施者についてのペナルティ措置の検討についても触れた。

◆多様な担い手の参加こそ需給調整への早道

 集会では3名が決意表明(別掲)を行った、また集会後、JA全中の宮田会長らは農水省を訪れ若林農相にあてた要請書を手渡した。
 米政策では生産調整メリットの拡充のほか、飼料用米やバイオ原料米などへの転換を行うための主食用との所得差補てん対策や、多収穫米種子の開発・流通助成などの関連対策も講じることや、生産調整実施者のみを対象とした交付金の徹底など実効ある対策の実施も求めている。
 また、収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)について、米価が大幅に下落した場合には十分な補てんが受けられない仕組みとなっているため、基準収入の見直しや政府補てん部分の追加、さらに収入が生産コストを下回った場合の所得確保対策の導入も要求している。
 品目横断的経営安定対策では、多様な担い手を施策対象とするような市町村特例や、集落営農の法人化計画の弾力的対応などを求めている。要件の見直しによって地域の実情に応じた担い手を施策対象とすることが確実な生産調整達成のための「早道」との考えもある。
 そのほか、過去の生産実績に基づく交付金(緑ゲタ)について、近年に単収向上を実現した地域では面積単価にその努力が反映されず、前年よりも手取りが減少した例も出たことから、十分な支援水準となる措置が早急に必要なことや、また、毎年の生産量に基づく交付金(黄ゲタ)についても、単収向上によって交付対象数量を超えた部分についても追加措置を講じることなどを要請している。

【決意表明】

JAたんなん(福井県) 堀勝賣組合長

JAたんなん・堀勝實組合長

 地域には生産調整非参加者がいるが、国、県など行政が(参加について)まったく手をつけられないのが現状だ。私たちはまじめに生産調整をやってきた。高齢農家が増えるなかで、認定農業者やあるいは集落営農組織を立ち上げて、担い手づくりもやっている。非協力者にペナルティをとは言わないが、生産調整をまじめにやれば1万円の価格がたとえば1万5000円ぐらいになるようにきちんと政策をやってほしい。
 私たちは国民の食料を生産する自負を持っている。そういう農家にきちんとした政策をやってもらいたい。

JA全国女性協・佐藤あき子理事(青森県)

JA全国女性協・佐藤あき子

 ここ数年、価格が下がりっぱなしの米づくりは赤字が続いている。今の米の価格では米づくりを続けるのは無理と感じるのは私だけではないと思う。一方、国はたくさんの米を輸入しているのに、米は余っているから減反しろ、転作しろと言うが私の住む中山間地帯の米づくりの多くの作業は助け合いや共同で行っているのが現状。そのほとんどが60歳から80歳の高齢者が主役だ。
 苦しいなかでも国の政策であればと、生産調整に協力してきたが協力者のメリットや非協力者のデメリットが目に見えるかたちになっていない。米をつくりまじめに生産調整に協力している人に安定した所得が確保され安心して生活できる、現場で分かりやすい政策をお願いしたい。

JA全青協・坂元芳郎会長(宮崎県)

JA全青協・坂元芳郎会長

 この秋、農業の現場では収穫を心から喜べない状況にある。まじめに米の生産調整を守り、麦などの生産に取り組んできたにも関わらずこの米価の下落は一体どういうことなのか、麦の手取りがなぜ下がったのか、そういう声があちこちで聞こえてくる。
 われわれ青年農業者は高齢化が進むなか責任ある担い手として地域を守り、環境を守りそして農作業に励んいる。コストを下げぎりぎりの経営をしているが、一向に何の光も見えてこない。本当に農政の大転換なのか。
 額に汗し、まじめに生産調整に取り組めばだれもが将来を展望できる、そういう水田農業の再構築が必要ではないか。農家の思いが現実の政策に反映されなければならない。

(2007.11.8)

 

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