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地域活性化には地域ブランド化の取り組みが有効
食と農林水産業の地域ブランド協議会設立総会が開催 −農水省
(11/21)


300名を集めて開催された設立総会
300名を集めて開催された設立総会

 「食と農林水産業の地域ブランド協議会」の設立総会が11月21日、農水省7階講堂で開かれた。
 協議会の設立は、地域の特性を生かした高品質な農林水産物のブランド化を図り、地域の農林水産業や食品産業の競争力を高め、地域活性化を進めるため、ブランド化に取り組む個人・団体、支援する個人・団体などを組織して情報交換や交流を行い、個々の取組の進展を図ることを目的としている。10月2日に協議会設立に向けた『発起人会』が開催され、協議会への参加呼びかけが行われ、当日までに259の個人・団体が協議会に参加した。
 約300名が出席して開かれた。設立総会で、農水省知的財産戦略本部長の澤雄二大臣政務官は、「協議会設立をきっかけに、真に力のある地域ブランドを育てて足腰の強い地域農業を造りあげてほしい。昨年、地域団体商標制度ができるなど、ブランド化に向けた機運は高まっている」と、ブランド化が国際競争力を持った農業を作り、地域の活性化につながると語った。
 会長には上原征彦明治大学大学院グローバルビジネス研究科教授が選ばれた。事務局から、地域ブランド確立のための情報やノウハウの提供などの活動が盛り込まれた協議会規約が読み上げられ、全会一致で承認した。

◆地域ブランドは小規模な産地でも取り組み易い

 設立総会後、同じ会場で「農林水産物・地域食品の地域ブランド確立への課題」をテーマにパネルディスカッションが開かれた。
 司会の金子和夫(株)日本総合研究所上席主任研究員は地域ブランドについて、「従来の大量生産大量消費とは異なり、小規模な生産でも特徴を生かしてブランド化が図れる。また、産直など既存の流通ルートとは異なるルートで流通できるなど、小規模な産地にとっても取り組みやすいのでは」とその特徴を述べた。しかし、今後地域ブランド化を進めるためには、素材の魅力をどう引き出すか、その商品をどう価値あるものとするか、多様な流通チャネルをどう確保するか、などが課題だとも語った。パネリストは、東谷望史JA馬路村組合長、井口芳朗JA三ケ日町営農センター部長、宮本修東京青果(株)常務取締役、白田典子(有)良品工房代表取締役、の4名。

◆ブランド化には“口こみ”が一番確実な方法

 東谷氏は馬路村がユズの産地として全国区になった今でも、取引は直接取引が基本だという。「お客さんにユズのことだけでなく、村の情報なども一緒に届けることが重要で、そこから互いのコミュニケーションが生まれ、信頼につながる」と、生産者が常に情報を発信することが大切だと語った。
 井口氏は、「ブランド化の取組みは、やる気のある人がやらなければできない。組織を上げて取り組む覚悟が必要で、生産者個人の自由気ままは許されない」と、三ケ日みかんがブランドとして成長するまでの苦労話を披露した。
 宮本氏は流通の立場から、「高く売って生産者にどれだけ戻せるか、これが我々の仕事だ」と述べ、「良いものをいかに高く売るか、名の知られていない地方の野菜をいかに売るか」と、生産者との連携して新たな市場を開拓することも必要だと語った。
 白田氏は、「食品に関して消費者は今、『安全』であっても『安心』できない状態だと」と、偽装表示の問題を取り上げた。また、神経質過ぎることは消費者の利益にならない、とも述べた。宮崎県の例のように、知事が替わっただけで宮崎産が売れているように、「売り方、伝え方を変えるだけで、買う人の心が動く。生産者は個性を持った売り方、伝え方を学ぶ必要がある」と、消費者の消費動向にもっと注意を払うべきだと語った。
 最後に井口氏が、「マスコミに登場して話題になることで地域ブランドづくりが可能だが、一番確実なのは“口こみ”です。広がる速度は遅いが、客が客を呼び、本当のサポーターになってくれる」と語った。『三ケ日みかん』というブランドを作り上げた井口氏の話に、司会の金子氏含め、パネリスト一堂を納得させる説得力があった。

(2007.11.26)

 

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