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日本のBSE、封じ込めの見込み −農水の小委が報告
(12/14)


 農水省の家畜衛生部会プリオン病小委員会が12月14日に開催され、最近のBSE発生状況や飼料規制法制化などのリスク管理措置を評価したうえで「わが国はBSEの封じ込めに成功すると見込まれる」とする研究者の報告を了承した。
 東大の吉川泰弘教授を研究総括者に、2001年9月にわが国で初めて確認された第1例から今年2月の32例めまでについての感染源、感染経路に関する研究を報告書としてまとめた。
 調査によってわが国のBSE汚染はEUにくらべ小規模で散発的・地域的な発生、北海道以外ではまとまった発生がみられない、北海道では国内暴露による思われる発生がみられる、ことなどが判明した。
 さらに研究ではBSE感染牛を発生地域別、出生時期別に以下の6群に分けて感染源などを分析した。
 (1)プレA群=1994年以前生まれの感染牛で06年3月に長崎県で確認された92年生まれの当時169か月齢の非定型例。研究では今後の研究成果を待つ必要があるがこの1例については「孤発性」の可能性があるとされた。
 (2)A群=95年から96年生まれの13例で01年9月の第1例と同じ出生時期の群。共通の代用乳が給与されていたことが判明しているが、原材料の一部に使用された動物性油脂の可能性を否定した輸入元だったオランダの疫学調査結果や、定量的リスク評価によって同様の結論を出している欧州食品安全機関(EFSA)の科学的知見などをふまえると、「オランダ産の粉末油脂を感染原因とする合理的説明は困難」だと報告している。
 (3)B群=99年生まれの1例。04年に熊本で確認された62か月齢の感染牛。これについては99年に輸入されたイタリア産肉骨粉が汚染しており、飼料工場で豚用飼料の肉骨粉が交差汚染した可能性があるとした。
 (4)C群=99年から01年に北海道で生まれた15例。共通の飼料は認められないが、分析の結果、A群の牛がレンダリングされ汚染原因となったとする国内暴露の可能性を指摘。「北海道内の配合飼料工場での肉骨粉の交差汚染の可能性は否定できない」とした。
 (5)D群=01年の飼料規制後に生まれた2例の若齢牛の群。23か月齢で確認された非定型例については孤発性の可能性が考えられるが今後の研究成果を待つ必要があるとしている。
 また、21か月齢で確認された若齢牛については飼料規制以前に製造された飼料が農場に滞留しそれが原因となった可能性が否定できないと指摘した。
 感染が確認されたこれら若齢牛例の組織を使った感染実験では、今のところ伝達性は確認されていない。ただし、「伝達できなかったことは事実だが、感染性がないとはいえない」と吉川教授は改めて指摘した。
 これら5群に加えて(6)ポストD群を分類。これは02年4月以降の群で現在、発生例はない。飼料規制は01年10月に法制化されたが、汚染飼料の滞留期間を6か月として分類したもの。
 農水省によると、今年9月末現在、A群(95〜96年生まれ)に該当する牛は肉牛、乳牛をあわせて2万3000頭、B群(99年生まれ)が9000頭、C群(99〜01年北海道生まれ)が28万頭、飼養されている。このうちC群からはBSE感染牛が今後も確認される可能性はあるという。
 ただし、02年4月生まれ以降の群からはまったく陽性例が発見されていないことから、01年10月以後のリスク管理措置が有効であったかどうかは今後のデータ解析が必要だとしつつも、EUのデータを参考にすると「わが国はBSEの封じ込めに成功すると見込まれる」とした。

(2007.12.18)

 

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