農業協同組合新聞 JACOM
   
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第27回 農協人文化賞
新しい路線の開拓と改革に功績 4部門10氏を表彰 (5/25)

 農協運動の発展に献身的に尽くしてきた農協人の功績を顕彰する(社)農協協会と農業協同組合新聞の「第27回農協人文化賞」表彰式を5月25日、東京・大手町のJAビルで開催した。

<経済事業部門>  
周防 勝英氏 小出 昭夫氏
全国農業協同組合連合会
滋賀県本部前本部長
周防 勝英氏
全国農業協同組合連合会
栃木県本部長
小出 昭夫氏
<共済事業部門>  
 長澤 壽一氏  城谷 章氏
岩手中央農業協同組合
代表理事組合長
長澤 壽一氏
全国共済農業協同組合連合会
兵庫県本部前本部長
城谷 章氏
<信用事業部門>  
 志村 善一氏  石橋 芳春氏
横浜農業協同組合
代表理事組合長
志村 善一氏
紀の里農業協同組合
代表理事組合長
石橋 芳春氏
<一般文化部門>  
 幸渕 文雄氏  東谷 望史氏
愛媛県農業協同組合中央会
元監事
幸渕 文雄氏
馬路村農業協同組合
代表理事専務
東谷 望史氏
武田周三郎氏 村山 歡治氏
はが野農業協同組合
代表理事組合長
武田周三郎氏
松本ハイランド農業協同組合
代表理事組合長
村山 歡治氏

推薦経過
農協運動の灯を高くかかげる受賞者

英知の蓄積を明日に活かす
農協人文化賞推薦委員長 今村奈良臣東大名誉教授

農協人文化賞推薦委員長 今村奈良臣東大名誉教授
 戦後の日本農業は還暦を迎えることになった。還暦を迎えたとはいえ、なお気力や意欲は衰えてはいないが、しかし体力や脚力の衰えは否めない。戦後農業を支えた昭和1ケタ世代の引退をはじめとして、担い手の激減、高齢化の深化、耕作放棄地の激増など、随所にほころびが見られている。こうした状況の中で、去る3月、新しい食料・農業・農村基本計画が策定された。ここに提示された目標の実現のためにも、JAグループはその組織の全力をあげていま取り組みつつある。地域水田農業ビジョンの策定と実践、新しい担い手の育成と地域農業の活性化、営農・経済事業改革の推進、信用・共済事業の更なる健全化など、地域農業・農村の司令塔としての役割は一段と重要となってきている。こうした課題に挑戦し、実現するためにはなによりも優れた人材が欠かせない。
 農協人文化賞は、農協法公布30周年を記念して社団法人農協協会と農業協同組合新聞の共催で制定され、今年で27回という歴史を刻んできた。昨年まで実に214人が表彰されている。この農協人文化賞の最大の特徴は、ほかの表彰事業とは異なり、その表彰規定の第3条に「本賞は多年にわたり農協の発展に献身的に寄与した『隠れた功績者に贈る』」と明記されているように功成り名遂げた方々に贈るのではなく、農協運動を着実に推進してきたいわば縁の下の力持ちに贈るということを趣旨とする表彰事業である。しかし、それは単なる縁の下の力持ちではない。農協運動の第一線で苦闘を繰り返しながら、新しい路線の開拓と、事業、経営、組織の改革を目指して、たゆみない思索と実践を重ねてこられた方々に対し贈られるべきものと考えている。こういう方々の英知と経験の蓄積をいかに農協運動の明日に活かすというところに、農協人文化賞、その中でも一般文化部門の表彰にはかけがえのない価値があるものと考えている。
 以上のような表彰事業の基本視点に立って、経済事業部門では周防勝英氏と小出昭夫氏を、共済事業部門では長澤壽一氏と城谷章氏を、信用事業部門では志村善一氏と石橋芳春氏をそれぞれ御推薦申し上げることとした。ここに推薦された方々は、いずれも、それぞれの分野の第一線に立って新たな活路を切り拓き、後進の手本とされる方々である。
 ついで一般文化部門では各界から推薦された候補者が多数にのぼったため、選考委員会ではかつてない長時間にわたる厳正な審査と討議のうえで次の各氏を受賞者として推薦することに決定した。幸渕文雄、武田周三郎、東谷望史、村山歡治(五十音順)の各氏である。
 幸渕文雄氏は、愛媛県宇和地域のみかん産業の戦後史の生き証人ともいうべき存在で喜佐方農協、宇和青果、愛媛県果樹協会などの組織的活動の分野でのトップリーダーとして活躍されるとともに、産地の改革、農協大学等を通じる後進の育成、さらには大著『戦後のみかん史・現場からの検証』の出版など多面的活動は高く評価される。
 武田周三郎氏は、現在大規模広域農協であるJAはが野の代表理事組合長であるが、その前身である大内農協、真岡市農協の専務として今日のJAはが野を生み出す原動力となって活動されてきた。とりわけJA活動の基盤である営農指導、販売事業の改革に取り組み、部会の統一、高機能物流センター(パッケージセンター)の全国に先駆けての導入などその活動力には目を見張るものがあり高く評価される。
 東谷望史氏は、立地条件の言語を絶するような劣悪な山村、馬路村を全国に「ユズの馬路」ありとその名を轟かせた最大の推進者である。馬路村農協が主体となり、青玉では売れないユズの多種多様な加工の推進、その販売戦略の多面的開発、村内雇用の開発など、その活動と推進力には目を見張るものがある。
 村山歡治氏は、若くして欧米に研修に出かけ研鑽を積みつつワイ化りんごの栽培・普及・拡大につとめ、大型共選施設の導入、販売戦略の革新などを推進するとともに、さらにその新路線を組織的に実現するために、松本ハイランド農協のトップリーダーとして全国有数の農協を作り上げ、21世紀の農協活動のあるべき方向を提示している。
 このように一般文化部門の4人の受賞者はそれぞれ個性に富み、全国に向かって21世紀農協運動の灯を高くかかげている存在であると考える。その受賞を心から讃えたい。

宮田 勇 全国農業協同組合中央会会長
「祝辞」 宮田 勇 全国農業協同組合中央会会長

卓越した指導性と先進的な取り組みに敬意

 このたび、第27回農協人文化賞を受賞された皆様方に、JAグループを代表して、心よりお祝い申し上げます。
 農業協同組合運動の各分野で長年にわたりご尽力されてこられた皆様方の功績が、このたび農協人文化賞の歴史に刻まれたことは、日頃のご努力の賜物であり、深く敬意を表する次第です。
 今回受賞されました方々におかれましては、経済、共済、信用事業、および一般文化の各部門における卓越した指導性と先進的な取り組み、そして、農業協同組合の発展に向けたその献身的な活動が評価されたものと思っております。
 そして、皆様方の先進的な取り組みにより、大きな成果を挙げられたことは、JAグループの仲間にとって励ましであり、数多くの貴重な示唆をいただけるものと思っております。
 ご案内のとおり、JAグループとして一昨年の第23回JA全国大会で決議した「JA改革の断行」は、実践3年目を迎え、JA改革を仕上げていくという重要な段階に入っております。そして、安全・安心な農産物の提供や地域農業の振興、組合員の負託に応える経済事業改革、経営の健全性・高度化への取り組み強化、そして協同活動強化による組織基盤の拡充と地域の活性化という重点事項については、JAグループ各段階において積極的に取り組みいただいているところです。
 また、担い手の育成や農地の利用集積、そして集落営農の組織化など「新たな基本計画」への対応をはじめ、EPA(経済連携協定)対策や12月の香港閣僚会議が大きな山場となるWTO(世界貿易機関)農業交渉対策など、重要な課題が山積しており、引き続き、国民の理解と合意のもとに取り組みを進めていくことが必要となっております。
 こうしたなかで、引き続き皆様方のご尽力を期待いたしております。そして、改めて、これまで農協人文化賞を受賞された方々と今回の受賞者の功績に敬意を表し、ご挨拶とします。

(2005.5.26)


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