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コスト意識向上など豊富な事例出し合う 集落営農推進大会 (1/24)

活発な議論を展開した地域農業構造改革推進全国大会=1月24日、東京・大手町のJAビル
活発な議論を展開した地域農業構造改革推進全国大会
=1月24日、東京・大手町のJAビル
 JA全中は、集落営農の組織化を進める「地域農業構造改革推進全国大会」を1月24日に都内で開き、事例の報告者たちは▽米価の今後を見越せばコメだけでは集落のビジョンが描けない▽月々の収入がある野菜作などを稲作と複合し、リスク分散する▽個別経営と集団営農を比較して数字でコスト意識を高める▽小作料の調整など農地利用の集積に果たす集落営農組織の実効性は高い▽地域とも補償制度が絶対必要、などと語り、メリットの出る仕組みが重要と強調した。
 大会にはJA、自治体、農水省などから担当者約330人が出席。JA全中の中村祐三常務はあいさつの中で、集落営農の形や活動は「幅が広く、ワンパターンではない」と指摘した。
 また農水省経営政策課の柄澤彰課長は「新たな経営安定対策の平成19年度導入に向け、今年は、その対象となる集落営農の組織化・法人化を推進する正念場の年。新年度予算案には支援の予算を盛り込んだ」などとあいさつした。
 同省は資料として「小規模農家層は農地を担い手に貸して地代収入を得るほうがトクになる」などを示した。また担い手となる集落営農に参加すると、年間で10アールあたり配当金収入4万円に加え、出役に応じた賃金が10万円、これに経営安定対策の支払いがあるなどの例を挙げた。
 事例では、山形県・JA庄内たがわ営農農政課の安藤一雄課長(山形県)、滋賀県甲賀市・農事組合法人「酒人ふぁ〜む」の福西義幸総務部長、山口県阿武町・農事組合法人「うもれ木の郷」の原哲郎組合長が報告した。
 このあと「今までの集落営農と今後の集落営農」をテーマにパネル討議をし、3氏に農水省の柄澤課長を加え、JA全中水田・営農ビジョン対策室の松岡公明室長がコーディネーターとなって語り合った。
 松岡室長は、この中で、水田農業ビジョンの実践強化について、16年度の取り組みを検証し、それを17年度に活かして、ビジョンに“魂”を入れる“冬の陣”の重要性などを強調した。
 柄澤課長は、経産省が新たに導入を検討中の「有限責任事業組合」(LLC)という法人形態には、法人税がかからず、構成員それぞれが課税対象になるなどの点で集落営農に似ているということを、法人化推進の参考情報として説明した。
 討議では、安藤氏が「環境に優しいこだわり米『たがわスペシャル米』の生産拡大に乗り出し、東京に駐在員を置いて直販比率の向上に挑戦している」、福西氏は「1ヘクタールあたりの生産コスト基準を決めて取り組んでいる。そして京野菜のようにブランド力の強い『商品』づくりを目指す」、原氏は「女性や高齢者に合わせた仕事のシステムをつくり、例えば80歳以上でも農業ができるようにして野菜づくりを進めている」などと語った。

 《事例紹介》(概要)

 園芸部門も重点に

 JA庄内たがわ 安藤営農農政課長
 担い手の決め方が画一的にならないように担い手の基準を設けず、あくまで集落の話し合いをもとに明確化していった。カントリーエレベーター(CE)利用組織に6割も加入している支所では資材をCE単位で購入し、機械も共同利用しており、秋の刈り入れも個別にはさせていない。このためCE単位の集落営農を考えている。法人化が先にありきの考え方はとらないが、これからできる組織と既存法人の間を調整するため昨年、法人化支援の専任部署を設けた。
 コメ戦略ではスペシャル米を提起したが、コメだけではいけないので園芸特産品づくりにも重点を置き、集落ごとに作る品目を挙げて2月にかけ、話し合う。今、園芸特産部門の販売高は20数億円だが、20年度には41億円に伸ばしたい。このため組合員の手も借りる「アグリプロ制度」という営農指導体制の強化策も昨年から実施している。

 リスク分散考えて

 酒人ふぁ〜む 福西総務部長
 酒人(集落名)では農業を「農」だけでなく「業」(なりわい)として成り立たせたい、そのポイントは(1)農地集積(2)食料生産(3)経営(マネジメント)だと、若手を中心に話し合い、10数年前に集落営農ビジョンを策定した。6年前に営農組合を発足させ、2年前には農事組合法人となった。組合員数は56人。
 農地の95%を占める水田は1ほ場を1ヘクタールに整備したが、リスク分散して稲作に依存せず、米・麦・大豆を2年3作とし、生産調整50%に挑戦している。
 農地54ヘクタールのうち10ヘクタールは入作で、従来から個別農家と契約しているが、今後は組合がそれをまとめて入作の農業法人に転貸をする。
 また組合員はみな兼業農家なので、会社を休んでまで百姓をする時代ではないとして作業は土日曜日でできる農業を進めている。さらに女性と高齢者を中心とした農業も展開中だ。

 女性組織の活躍も 

 うもれ木の郷 原哲郎組合長
 10余年前、国営のほ場整備事業にあたり「もう高齢だし、後継者もいないから…」と参加しない人に対しては「組合をつくって面倒をみるから、土地を貸してほしい。小作料を出す」と説得したが、こうしたいろいろな問題に対応するため任意組合を設立。次いで9年には法人とした。
 組合員戸数は67戸。経営農地面積は約83ヘクタール。4集落1農場の法人として水利権をまとめるため、抵抗はあったが、各戸に水利権を放棄させた。ほ場整備により大豆、スイカ、ハクサイなどの畑作物を導入した。
 仕事を分担制とし、みんなでコメと大豆を作り、ほ場整備による効率化で余った労働力を個々の野菜作りに回している。しかし、その代金は組合の経理を通している。小作料と従事分量配当(最低保障分)を合わせると確定配当は3万6500円と全国でも高い。
 女性グループの活躍も目覚ましいものがある。

(2005.1.28)


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