農業協同組合新聞 JACOM
   
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電算データ改ざんも全農あきたの不正で農水省が中間報告 (5/13)

 全農秋田県本部と、その子会社(株)パールライス秋田などのコメ横流し事件とコメ架空取引疑惑について追加的調査をしていた農水省は5月13日、一区切りがついたとして、詳細な中間報告を発表した。
 これによると、横流し事件の背景は、コメ代金が焦げ付いたパール秋田の赤字対策だった。取引先S商事(兵庫)の経営不振から販売代金2億5000万円が回収不能となり、平成15年度の赤字決算が必至となった。 そこでパール秋田の専務は、社長を兼務していた全農秋田県本部長と協議し、同本部が農家から販売を委託されていた共同計算米の流用を決めた。協議には幹部たちも同席し、農水省は組織ぐるみの対応策だったとしている。
 共同計算は精算までに2年近くかかることから、その間は預かり米を流用しても、また補てんができるという認識があったという。
 手法は、同社が共同計算米を簿外販売し、その代金を、S商事からの債務弁済と偽って、穴埋めに当て、黒字決算としたもの。
 県本部は、出荷指図書を発行すれば、電算処理で売上げとされてしまうため、昨年3月、手書きの仮出荷指図書で約760tをパール秋田に横流し出荷した。その分が架空在庫となった。
 しかし、その後、農政事務所の在庫調査が迫ったので架空在庫の発覚を恐れ、今度は電算データを改ざんし、その分を販売済みと見せかけた。上司の指示で担当課がこの作業をしたとされる。
 また実際には販売をしていないにもかかわらず4月以降の販売分に対する倉庫保管料と金利の一部を助成する国のコメ流通改革補助金約190万円を不正受給した。
 一方、架空取引疑惑は、平成15年産米の値下がりで生産者への仮渡金を下回る状況となったため、不落札を避け、価格維持をはかったのが動機とされる。
 県本部は昨年5、6月、コメ価格センターに上場する「あきたこまち」「ひとめぼれ」「めんこいな」の一部の落札をパール秋田と秋田食糧卸販売(株)に依頼し、両社は3銘柄計約3024tを約8億7950万円の高値で落札したが、県本部は、これをすぐに買い戻した。
 この間、落札米の物流はまったくなかった。しかも買い戻し代金、つまり返金は、最初から県本部が両社に振り込むという極めて異例の形だったと農水省は指摘。両社の資金繰りに負担をかけない操作とされる。
 秋田食糧卸は5月の入札取引で、応札を頼まれたとき、いったんは断ったが、再度要請されたという。
 農水省は、これらを総合して、関係者は当初から、空売り買い戻しを想定していたと考えている。
 さらに▽農家の拠出金である共同計算事業預かり金勘定を、払い戻しに使用した▽架空取引でセンターの指標価格を形成し、相対取引に反映させた▽架空取引分のコメ流通改革補助金約1153万円を受給した、などの県本部の不正を挙げた。

◆「共同計算の見直し必要」−農水省

 全農秋田県本部の不正について島村宜伸農相は13日の会見で「真相究明を急ぎたい。預かったコメを流用するなどとは協同組合の本旨にもとる行為だ。厳しく対処する。また架空取引はコメ価格形成への不信を招く。信頼回復へ全力を挙げてほしい。ことは悪質だから、証拠が固まれば刑事告発したい」などと語った。 一方、農水省の担当者は背任や補助金適正化法違反の疑いで刑事告発を検討していると語った。
 全農にはすでに業務改善命令を6度出しているが、4月21日に指示した6項目についての回答を受け、その内容によって今後の対応を検討するという。
 不正の背景にあるコメ代金の共同計算には、精算に2年近くかかるなどの問題があり、そのあり方を見直さなければならず、全農の抜本的な改善策も見て、検討していくとのことだ。

◆架空取引に入札資格停止処分−コメ価格センター

 (財)全国米穀取引・価格形成センターは5月13日、全農秋田県本部の不公正取引に対し、同県本部、パールライス秋田、秋田食糧卸の入札参加資格を一時停止するとの処分を発表した。
 また同センターの運営委員である田村隆全農秋田県本部長を運営委員から解任する処分も行った。
 こうした処分事例は「初めて」と同センターの山本領・副会長は語っている。
 資格停止は「再発防止策の確立・徹底までの間」となっている。重い処分には登録停止(2年間)があるが、「あきたこまち」の最大の上場者が長期間いなくては生産者が困るという事情も配慮したという。
 同センター運営委員のうち中立代表と、センター職員からなる取引監視委員会が、業務規定にもとづき、全農あきたなどに弁明を求めたが、不公正取引を認めて弁明がなかったため処分が決まった。停止の解除検討は「6月末の入札までに結論を出したい」(山本副会長)という。
 パール秋田と秋田食糧卸が県本部の依頼で高値応札をしたため昨年5月25日の入札では、指標価格が「ひとめぼれ」で、60kg1万6918円となったが、もし不公正な行為がなかった場合は1万6760円となり、158円安い指標価格になったとセンターでは試算している。
 同様に、昨年6月22日の入札では「あきたこまち」が226円、「ひとめぼれ」が1040円、「めんこいな」が751円それぞれやすくなったはずだという。
 入札の翌月からは、この指標価格をベースに相対取引が行われるため、高値応札による価格操作は、入札以外にも影響する。

(2005.5.17)


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