農業協同組合新聞 JACOM
   
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米の先物商品化に反対 需給と価格の安定損なう
−JAグループ (6/16)

 米を先物商品として近く上場申請をする東京穀物商品取引所の動きを受け、JA全中は、これに反対する方針を6月16日の理事会で決めた。「価格変動を前提とし、投機を目的とする先物取引は、米の需給と価格の安定を損ない、生産と流通に著しい支障を及ぼす恐れがある」というのがJAグループの「考え方」だ。一方、農水省の食料・農業・農村政策審議会は3月の食糧部会で「上場申請があれば部会でも議論する必要がある」としたが、同省は申請を待たずに早くも6月17日の部会から、先物取引の議論を始めた。
 農畜産物ではトウモロコシ、大豆、小豆、ジャガイモ、鶏卵、ブロイラーなどが先物取引の上場商品。市場では投機家が資産運用、また生産者らがリスクヘッジを目的に取引するが、生産者らの参加は少ない。
 このため市場活性化をねらって各穀物商品取引所は大型商品の米上場に期待をかけ、米政策改革大綱決定を機に、上場に向けた検討を進めてきた。
 東京取引所は6月8日にその結果を公表。近く申請の見通し。商品取引所法による規定では、申請があれば公示日から4ヶ月以内に許可の可否を通知する。
 しかし、生産調整研究会は平成14年6月の中間とりまとめで「生産調整や国境措置を行っている現状では(先物取引を)導入すべきでない」としている。JAグループの「考え方」は、この「現状」は今も変わっていない、と指摘した。
 ところが中間とりまとめは、その後段に「将来、関係業者の価格変動リスクを軽減させる手段として、その導入の可能性を排除すべきではない」と、付け加えているため、許可される道筋も開かれている。
 全中理事会では「規制緩和の大きな流れの中では、財界や学者の一部から執ように導入論が主張されるだろう。もし米が投機の対象となって一点を突破されれば、その他の品目にも広がってくる。ここは腰を据えて反対をしなければならない」などの意見が出た。JAグループは食糧部会で反対を主張し、また米卸業者や消費者の理解を求めていく。米卸からは今のところ、目だった意見は出ておらず、模様眺めといった感じだ。

◆米改革に支障招く「考え方」の概要

 先物取引市場開設に反対するJAグループの「考え方」の概要は次のとおり。
 政府は、米の需給と価格の安定をはかる政策を講じているが、先物取引は、こうした政策と矛盾する。
 また米政策改革で、生産者と、その団体は「売れる米づくり」などに取り組んでいるが、先物取引はこうした主体的な取り組みの前提条件を崩す。
 投機資金が流入して現物取引とかい離した相場が形成されると、生産現場に誤った情報を与えかねない。生産調整、過剰米処理などの推進や政府の備蓄運営に混乱を生じさせ、米政策改革に支障を生む事態を招きかねない。
 特に、新たな需給調整システムへの移行をひかえている段階で、先物取引の導入は生産現場に無用の混乱を招くことになる。
 米改革が混乱すれば、日本農業の構造改革を進めるための集落ビジョンづくりや、担い手づくりに影響し、農政改革の混乱が懸念される。
 今回の先物市場開設の動きは、取引所の商品取引を拡大する観点から始まったもので、米の生産者、流通業者、消費者の合意を十分に得ているといえない。先物取引をリスクヘッジ機能に限定しても、投機的取引に巻き込まれることでJAの事業と経営を混乱させかねない懸念がある。
 仮に、市場を開設しても、市場の活性化が進まないのは、生産調整や国境措置があるからだということで、一切の政策を廃止し、すべて自由化すべきだということになりかねず、米の需給と価格の安定にとっては、まさに本末転倒の議論に陥る可能性が高い。

(2005.6.17)



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