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食料自給率向上への難関を議論 食・農・環フォーラムが学習会 (7/5)

 新基本計画の工程表に沿った食料自給率向上の取り組みをテーマに「食料・農林漁業・環境フォーラム」は7月5日の学習会で諸課題を議論。コメ消費減少の根底に横たわる問題として「働く人たちの家庭は調理をする時間が少ない。そうした労働実態が望ましい食生活をねじ曲げている」といった指摘が出た。
 また「スーパーの店頭ではコメの10キロ袋が減り、2キロ袋が増えたが、生産者の対応は遅れている」「年間一人平均約60キロのコメ消費の半分は加工米飯だから、業務用需要への対応が必要」などの課題も挙がった。
 さらに▽工程表は米飯学校給食を重視しているが、病院や高齢者福祉施設の給食も重視すべきだ▽一人暮らしの高齢者は炊飯しないで、給食に頼ったりしている。ご飯食提供の仕方には工夫が必要▽孤食用には、炊飯器の開発よりも電子レンジの利用のほうがよい、などのきめ細かい消費拡大の議論も活発だった。
 この日は農水省大臣官房の桜庭英悦参事官が「食料自給率向上に向けた行動計画」などを説明。コメンテーターとしてJA全青協の藤木眞也会長、日本生協連政策企画部の藤井喜継部長代理、連合政策局の江森孝至局長が意見を述べた。
 参加者との意見交換では自給力が論点となり、平成27年度の農地面積を15年より24万ha少ない450万haと見込んで供給カロリーを計算している問題などについて、同フォーラム副代表の梶井功東京農工大名誉教授が疑問を投げ、農水省側は詳しい算出根拠を後日出すことにした。
 また、他の参加者は粗飼料増産による飼料自給率の向上を主張。桜庭参事官は「稲発酵粗飼料(WCS)の作付地と畜産農家の距離が遠い場合、物流コストのかさむことが問題」とし、梶井名誉教授は、作付奨励金などの助成でWCS生産が増えたが、助成が打ち切られたため、昨年はまた減ってしまった、と農政の問題点を指摘するとともに、飼料米生産を提唱した。
 なお同フォーラムはJAグループや消費者団体などで構成されている。

「自給率向上への取り組みと課題」をテーマにしたフォーラムの学習会
=7月5日、JAビル

◆若い人ほど低い意識自給率問題

 同フォーラムで日本生協連の藤井部長代理は組合員の意識調査結果を示した。これによると、飽食の時代に育った若い人ほど食料自給率(カロリーベース)への理解がなかった。
 29歳以下では90%が自給率について「わからない」と答えた。年齢が高いほど認知度は少しずつ高くなるが、それでも合計で86%となり、「わかっている」は14%に過ぎなかった。
 一方、食材を買う際に価格と品質のどちらを重視するかについては合計で「どちらかといえば安いほうを求める」が43%、「できるだけ安いものを求める」が21%となり、「どちらかといえば品質が良ければ価格は気にしない」は30%。
 こうした価格志向は、生協組合員以外を対象にした調査結果ともほぼ共通だ。
 このため日本生協連は、自給率向上のためには、消費者ニーズにあった品質の良い商品を「リーズナブルな価格で」供給する、という考え方を打ち出し、そうすれば消費者は自ずと国産を支持するとしている。

(2005.7.7)


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