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経営安定対策は柔軟に 農中総研が「稲作経営」でレポート (10/20)

 これまでの傾向や農業機械の出荷動向からして「稲作農家は今後100万戸に向けて減少していく」と予測し、担い手確保のためには品目横断的な「新しい経営安定対策を柔軟な制度にする必要があろう」とした総研レポート「稲作経営の現状と経営政策の課題」を農林中金総合研究所が10月20日まとめた。アンケート調査と、統計データで稲作の見通しと経営政策の課題を考察している。
 レポートは稲作の生産構造について作付面積0.5ヘクタール未満の農家が6割を占めている現実や経営規模の拡大テンポが遅いことなどを挙げ、零細性を直視する必要があるとした。
 経営収支は米価低落で悪化。0.5ヘクタールの稲作で得られる所得は21万円、1ヘクタールで50万円、5ヘクタールでも273万円。この規模では生活が難しく、兼業収入に頼る農家がほとんどだ。
 大規模化すれば生産費が下がって稲作所得は増えるが、03年の稲作農家戸数211万戸のうち10ヘクタール以上は6000戸(うち7割が北海道と大潟村)に過ぎない。
 零細な稲作を中心的に支えているのは、最低賃金に近い賃金がもらえるパート労働や屋外土木作業からも排除されている高齢者や主婦で、そこに夫の休日労働を合わせた稲作だ。
 農村の高齢者が受給する国民年金(平均年51万円)と農業者老齢年金(同16万円)はごくわずか。稲作をやめたら自家消費米まで買うことになるため稲作を続けており、それは経済的合理性のある行動といえる。
 しかし近年は農業機械の投資が困難で作業委託や離農が増えている。
 アンケート調査は宮崎県丸森町と熊本県小国町の2集落の全世帯を対象にしたが、半数が稲作収支は赤字と回答した。低米価の中で農機を長持ちさせて稲作を続けているが、高齢化と後継者不足で今後、稲作農家は減少する見込み。
 また規模拡大を志向する農家はなく、集落営農についても半数は困難と答え、今後耕作放棄地が増大する可能性がある。
 一方、全国的に見て今後10年ほどで昭和1ケタ世代のリタイアはほぼ完了。農機を所有して稲作をするような経営体(集落営農を含む)は10年後に80〜90万戸程度になると考えられ、委託農家を含めて今後は100万戸に向けて減少していくと予想した。
 しかし経営耕地の集中は現状を見ると3ヘクタール以上の農家6万4000戸の作付面積割合が全体の24.5%に過ぎないなどの数字から、個別経営体への土地集積は農水省の構想通りに進むことは難しいと考えられる。
 集落営農も5年前に比べ東北と九州で大きく増加したが、その他で減少。全国で合計約1万と1%の増加にとどまり、今後10年間に2〜4万を組織するのはかなり難しいと見た。
 こうしたことから、水田農業ビジョンで約1万1418という数字が挙げられた受託組織なども稲作の担い手として明確に位置づける必要があるとした。
 また新たな経営所得安定対策の対象が認定農業者や集落営農だけに限定されてしまうと、零細農家が麦や大豆を作っても助成金が得られず、生産の減少から自給率が低下するとした。このため対象をできる限り幅広くする必要があると求めた。
(2005.10.24)


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