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カノーラ油特許係争で勝訴 カーギルが試験データ隠蔽
−ダウ (12/20)

 穀物メジャーのカーギル(本社:米国ミネソタ州)とダウ・アグロサイエンス(本社:米国インディアナ州)およびキャンブラ・フーズ(ダウの取引会社、本社:カナダ アルバータ州)との間で争われていたカノーラ油(ナタネ油の1種)でダウ側が勝訴した。
 12月20日、米連邦裁判所が判決を下したもので、カーギルは高安定性カノーラ油に関する特許取得の審査過程で、米国特許庁に対して特許の審査に重要な情報を開示しなかったと認定、これら不正行為によって取得した特許には権利行使力は発生しないと判断した。ちなみに、わが国は年間約200万トンの西洋ナタネを輸入している。
 カーギルの目標は、ダウの「ネクセラ」カノーラ種子に由来する新規開発「ナトレオン」カノーラ油にあった。「ナトレオン」は、脂肪酸特性である高オレイン酸(注1)・低リノレン酸(注2)を有し、安定性に優れたカノーラ油。
 「ナトレオン」は、トランス脂肪酸(注3)を含んでおらず、極めて優れた調理安定性と使用期限を併せ持っている。これについて、最近の研究では部分水素添加大豆より優れていることも判明している。
 必須脂肪酸の1つであるリノレン酸は、加工過程においてその安定性を高めるために水素を添加する場合がある。その際、トランス脂肪酸が発生するとされている。2006年1月より、米国ではトランス脂肪酸表示が義務付けられる。
 高水準の飽和脂肪酸とトランス脂肪酸を含むオイルとは異なり、「ナトレオン」は食品会社やレストランなどで多用されている部分水素添加植物油に比べ、優れた健康効果を備えている。
 21世紀は食料確保の世紀であろう。カノーラ油を基軸とした今回のカーギルとダウの係争は、種子および食料ビジネス最前線の厳しさを臭わせるが、大局から見ると1つのディテール(部分)だとも思える。
 (注1)善玉コレステロールを維持し、悪玉コレステロールを減少させ、血液をさらさらにする。
 (注2)ヒトの体内で合成できない必須脂肪酸。カラダに良いが、非常に不安定な構造で酸化されやすい。
 (注3)不飽和脂肪酸の1種。過剰に摂取すると、悪玉コレステロールの上昇につながるとされている。

(2005.12.28)


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