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自給飼料生産を推進 3月末に新たな酪肉近代化基本方針
酪農・畜産も「担い手」が焦点 (2/4)


 新たな基本計画の見直し作業と合わせ、酪農、畜産や果樹、野菜などの新たな対策の検討も進んでいる。畜産では昨年2月から畜産企画部会で議論が行われ、2月4日に「新たな酪肉近代化基本方針」案が同部会で示された。新基本計画と合わせて3月末までに決定される。焦点は担い手の考え方と経営安定対策、自給飼料生産の推進体制などになっている。

■国際化の進展を強調

 酪農と肉用牛生産は約1.1兆円。総産出額8.9兆円のわが国農業生産のなかで大きなウエイト占めている。食生活でみれば、たんぱく質の10%、カルシウムの30%を供給しており、重要な供給源となっている。
最近では海外での家畜伝染病発生による輸入禁止をふまえ、国内生産の強化が一層求められるようになった。
 新たな酪肉近代化基本方針ではこうした点などをふまえて酪農・畜産の振興を図ることが重要だとしているが、今回、強調しているのはWTO交渉やEPA交渉が進展するなかで、国際競争力の早急な強化と新規就農の促進などによる担い手の育成、確保だ。また労働力不足から自給飼料生産が減少していることから、食料自給率向上や農地の有効活用などの観点から自給飼料生産の拡大が求められているとしている。
 そのほか、生産から流通までの安全・安心対策、排せつ物の利活用など、最近の課題も掲げている。

■担い手の考え方で論議

 なかでも現行の基本方針にないのは、担い手として明確化すべき経営形態の考え方。新たな基本計画の検討では昨年夏の中間論点整理で施策の対象を担い手に絞って重点化する方向が打ち出されたが、酪農・畜産経営でも同様の方針を盛り込んだもの。
 水田農業など土地利用型農業にくらべて酪農・畜産では構造改革が進んでいるが、将来にわたり安定的な発展を図るには担い手を明確にして育成するという方針だ。
 具体的には水田農業でも議論になっているように認定農業者を基本とすることが適当、とされている。
 ただ、畜産企画部会ではこの方針に対して「認定農業者はこの分野でも30%の認定率。制度が定着したといえるのか」、「一定の基準で選別するのではなく今ある畜産農家をどう育成するかが重要」、「中山間地域では小規模の繁殖経営が地域農業を支えている。地域経済の担い手という面も考慮すべきだ」といった意見が出されている。
 JAグループも2月3日に決めた政策提案のなかで、担い手は「畜種ごとの特性、地域の実態、経営形態などをふまえ、とりわけJA等の生産組織の構成員すべてを位置づけること」と主張している。
 酪農・畜産分野では生乳や肉用子牛の再生産の確保や肉用牛肥育経営などの安定を図るため品目別の経営安定対策があるが、今後は具体的な経営安定政策のあり方と、対象とする担い手についてさらに議論が必要になる。

■土地有効利用に向け放牧も

 現行基本方針に盛り込まれていない事項には、自給飼料生産の推進についての基本的考え方、もある。
 考え方では、自給飼料を使った安全・安心な国産農畜産物の供給、飼料自給率の向上を通じた食料自給率の向上、さらに輸入飼料依存による環境問題などに対応するためには、自給飼料基盤に立脚した畜産物供給を行うことが重要だと指摘し、これが「わが国の畜産物生産の目指すべき方向」だと強調している。
 ただ、現状は労働力不足などから畜産農家だけでは生産拡大が困難なことから、耕畜連携などの取り組みが重要としている。具体的には、ホールクロップサイレージなど飼料作物の作付け拡大、国産稲わらの利用拡大のほか、新たに耕作放棄地、野草地、林地など低・未利用地、水田などへの放牧の推進も掲げた。
 そのほか飼料作物生産農家への農地の集積・団地化の推進や、コントラクターによる生産を推進するため、その育成確保策も必要だとしている。
 いずれもすでに一部では積極的な取り組みが行われていることで、今後の推進のためには耕種部門の経営安定対策や、どのような品目対策をつくるかも自給飼料生産促進には重要になる。畜産企画部会ではコントラクターの育成について「その立ちあげには大きな労力と資金がかかる。資金を投入できる余裕のない生産者がいるのが現実」といった指摘もあった。
 また、家畜排せつ物の利活用も課題でこれも耕種農家との連携が需要。畜産企画部会では「家畜排せつ物の利用を図っていくことは難しい課題だが、解決にはJAが中心的な役割を果たし、地域の関係機関の支援が必要」との意見も出されている。

■3月中に生産目標、経営指標など決める

 そのほか新たな基本方針にはトレーサビリティへの対応など「安全・安心の確保」と「畜産における食育の推進」、「環境規範の導入」なども盛り込まれている。
 安全・安心対策では「小売りや二次加工の段階などで温度管理や記録管理などが行われないと、生産者や乳業が注意しても安全・安心は達成できない」と流通の課題を指摘する意見もある。
 今後は、生乳や牛肉の需要の長期見通しと地域別の生産目標数量や、酪農で8類型、肉用牛で10類型に分けた経営指標も設定される。
 新たな基本計画の議論は3月に食料自給率目標や品目ごとの生産努力目標などの検討が予定されているが、これらの結論が出されるのとほぼ同時に酪農、畜産の数値も決定される見込みとなっている。

(2005.2.9)


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