農業協同組合新聞 JACOM
   
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全頭検査緩和へ 20ヶ月齢線引きを
BSEプリオン 調査会が認める (3/28)

 生後20ヶ月以下の若い牛を全頭検査の対象からはずすという牛海綿状脳症(BSE)対策の見直し案を審議していた内閣府のプリオン専門調査会は3月28日、諮問どおり見直しを認め、米国産牛肉の輸入再開に道を開くことになった。調査会の結論は、20ヶ月以下の牛を検査対象から除外しても人間の健康に対するリスクは「非常に低いレベルの増加にとどまる」との判断を示した。
 近く内閣府の食品安全委員会に報告。これを受けて同委員会は一般から意見を募集し、四月末にも厚労相と農水相に答申する。「米国の圧力に屈するな」などといった声とともに全頭検査の緩和に反対する世論が強いだけに意見募集では、見直し案への批判や反発が予想される。
 昨年10月15日の諮問後、調査会は8回の審議を重ねたが、この間も米国側は、輸入再開の前提となる日本側の見直し作業が遅いと注文をつけ続けた。
 28日の会合後、調査会座長の吉川泰弘東京大学・院教授は会見で、検査月齢の線引きが人間にもたらす食品健康影響(リスク)を評価し、それをまとめて答申案とした、と語った。
 また「検証には時間がかかった。遅らせたつもりはない。米国側のいらだちはメディアを通じて知っていたが、直接の圧力を意識したことはない」と述べた。 調査会は、BSEのもととなる「BSEプリオンたんぱく質」が生体牛に蓄積される度合いと、食肉の汚染度について、21ヶ月齢以上の牛だけを検査対象とした場合と、全頭検査の場合を比較し、その差は「無視できる」か、または「非常に低い」と結論づけた。
 これは定性的な比較でもまた定量的評価による試算でも同じような推定が得られたと報告。リスク評価では20ヶ月で線引きをしても「非常に低いレベルの(リスク)増加にとどまる」と判断した。一方、「より高い感度の検査方法を開発する必要がある」とした。
 さらに特定危険部位(SRM)については、ピッシングの中止へ、具体的な目標を設定し、早く進める必要がある、とした。
 報告は、検査基準の緩和に対する時期尚早論も盛り込み、審議の過程で意見が分かれたことを示した。
 その記述は「非常に低いレベルの汚染度がもたらす食品健康影響評価を判断するための科学的知見がきわめて限られていることから、月齢見直しは、一連の対策の実効性が確認された後に行うのが、合理的な判断である」となっている。
 これは、対策の効果が確認されていないのに、見直しを諮問したのは不合理であるとするもので、政府の諮問そのものを批判した意見だ。
 また「全頭検査がなくなれば若齢牛での検査成績の評価はできなくなる」との意見も載せた。
 28日の最終会合では「食品安全からすれば、リスクの改善をこそ提起しなければならないのに、この答申案は、線引きをしてもリスクは上がらないという報告になっており、矛盾をはらんでいる」などの指摘が改めてあった。
 なお厚労、農水両省は、この答申を受けて、輸入再開条件をまとめ、消費者の意見を聞いた上で、また食品安全委に諮問する予定。
 しかし政府は、自主的に全頭検査をする都道府県には助成を行う方針を決めているため、検査基準が緩和されても、当面は全頭検査が続く見通しだ。

(2005.3.30)



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