農業協同組合新聞 JACOM
   
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不適切な事例7件 共同計算のあり方見直しへ
農水省―立入検査結果公表 (5/31)

 農水省は5月31日、全農秋田県本部と子会社(株)パールライス秋田などが絡んだ「米の横流し事件」と「米架空取引疑惑」に関連して行っていた全国一斉立入検査結果を公表した。
 検査は、米の横流し事件と米架空取引疑惑の解明と並んで、これと類似する事件の有無を把握することを目的に行った。期間は4月27日から5月27日まで、全国で延べ2136人が検査にあたった。検査対象は、45道府県(東京都、沖縄県以外の道府県)に所在する、35全農府県本部、9経済連、2県単一農協(奈良県、香川県)。
 今回の立入検査では、共同計算米の会計、物流などに問題がなかったかを調べた。検査の結果、全農秋田県本部等が起こした「米の横流し事件」と「米架空取引疑惑」に類似するような事実はなかった。
 しかし、共同計算精算書等を詳細に調査した結果、共同計算の処理が適切ではないケースが見つかった。特に大きな支出項目である“販売対策費”について、その支出根拠や支出目的が適切ではないと思われるケースが5件あった。
 例えば、稟議書や共同計算委員会の審議といった手続きもなく、▽14年産米と15年産米について、「運賃助成」の名目で30数業者に、総額約11億3300万円が支払われた、▽11年産米の販売対策経費等に充てるための経費を、12年産米の共同計算から総額約6000万円を流用した。また、▽15年産米で、コメ価格センター入札に応じてもらった謝礼の意味合いで“協力費”と称して十数業者に総額約4700万円を支払った、ケースなどが報告された。そのほかに、米の保管料などへの国庫補助金が不適切に請求されたケースが2件あった。

■透明性の確保が課題

 一般の商取引では、製造業者が販売促進の名目で取引先に対し割戻し等を行うなど、販売対策費が商慣行の一つとして広く定着している。
 しかし、農水省は米の取引で、過度な、あるいは合理性がない販売対策費が恒常的に存在する場合、▽生産者手取りが減少する、▽実際の取引価格がコメ価格センターの指標価格などとかけ離れ、稲作所得基盤確保対策で生産者が本来得られるはずの助成が不足する、▽取引価格が歪み、適正な価格での流通をめざしている食糧法の趣旨に反する、など問題が生ずる、と指摘してきた。
 そのうえで、農協等が割戻しなどを販売対策経費として支出するには、目的、基準、金額の算出根拠について、米の所有者である生産者またはその代表者の承諾を得る必要があることや、事業者間や産地間の競争手段として割戻し等に依存することがないように、事業者の規模、取扱数量に応じた実効性ある取り組みが必要だとしているが、今回の調査結果を受けて農水省は、(1)販売対策費を含む県の共同計算のあり方、(2)コメ価格センターの販売対策費の扱い、について検討。全中・全農が作成しているガイドラインの見直しを指導し、改善を図る。
 「たとえば、販売対策費の支出について、きちんと生産者に説明することが必要だろう。結果を開示すれば不適正な支出は抑制できるのではないか」と、食糧部・高橋洋計画課長は話している。

(2005.6.2)



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