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広がる認証産地、取扱額も伸びる −「全農安心システム」 (7/14)

 「全農安心システム」のマークをつけた商品がスーパーなどで目につく。産地と販売先とJA全農が生産基準を定めて作った農畜産物だ。消費者は、第三者機関の審査を経てきた生産履歴を把握できる。同システムは、全農が構築している独自のトレーサビリティシステムだ。全農はこのシステムの認証産地を拡大し、6月末には155となった。認証商品の取扱金額も平成16年度は119億円となり、前年に比べ71億円増えた。取引先は55社。前年比10社の増加だ。量販店33社、生協5団体、百貨店3社、エーコープ3社、コンビニなど11社となっている。

◆取引先が高く評価

 取引先各社は、全農安心システムを「産地とのパートナーシップ強化につながる」と評価する。安心システムでの生産は、まず産地と品目を選定。売り手と買い手が肥料や農薬の使い方までを盛り込んだ生産計画を決め、生産者はそれにもとづいて作業する。それは、お互いをパートナーと位置づける関係づくりとなる。そこが評価されているようだ。
 青果物は16年度で認証産地29、取扱金額17億円と前年比11億円の増加だが、6月末では産地がさらに34に増えた。品目は多様で、量販店などのプライベートブランド(PB)もある。
 社によっては、安心システムのマークをつけていないPB商品もあるが、自社ブランドの確立をねらう場合、認証商品なら安心してPBにできるということでもある。評価の高さは、こうした点にもうかがえる。

◆先駆的な足取り

拡大する全農安心システムの産地

 一方、生産者側には「作物の出口(販売先)を設定してから作るのだから、生産が安定する」などの声があり、これも評価が高い。
 「消費者はトレーサビリティシステムの構築に期待している」と今年の農業白書はうたうが、全農が安心システムの実験を始めたのは5年前だ。当時は有機農産物の認証制度が議論されていたが、全農としてはより多くの農業者のためにと慣行栽培も含めて13年度から本格的事業をスタートさせた。
 消費者のほしがる情報は一に産地、二に安全性の認証(農業白書)という。全農の照準もそこだった。
 13年度の認証は産地13だったが、BSE禍や無登録農薬問題などを経て、15年度には83産地に伸びた。先駆的な足取りといえる。
 認証産地をJA数にすると6月末で110となる。

◆産地の話題も豊富

安心システムで話題を呼ぶ八女茶の産地風景
安心システムで話題を呼ぶ
八女茶の産地風景

 認証産地には、それぞれの特色があり、エピソードも多い。認証産地第一号の北海道の宗谷岬肉牛牧場は、宗谷地方のJAなどが出資する畜産開発公社の運営だ。「宗谷黒牛」を生産しているが、草地には化学肥料や除草剤を使わないで、水質を守り、漁業との共生を追求している。
 福岡県のJAふくおか八女の農産部茶業課と生産法人は、安心システムの八女茶を使った自動給茶機専用の商品を開発、今年の3月から取り扱いを始めた。
 専用茶葉と併せて給茶機本体、それに紙コップなどの需要も開拓したことになり、現在、代理店を通して事務所や食堂などに置く給茶機約60台が出回っているという。
 また環境に優しい生産をしている認証産地を観察してもらおうと同JAでは消費者の親子づれを「生き物調査」に招待するという行事も実施した。全農は「生き物」を安心システムの評価基準にしたいとして具体的な方法論を模索中だ。

◆認知度などが課題

 6月末の認証産地を品目別に見ると、コメが104JAで最多。16年度は74JAで取扱数量は2万2000トンだった。次いで青果(園芸)、畜産8、農産(茶、大豆、シイタケ)7。
 全農は各取引先との商談の中で安心システムを提案しているが、例えば中小スーパーが共同仕入れをする合同商談会などでもアピールを強めている。
 今後の課題としては、商品群のラインナップ拡充などがある(大消費地販売推進部)。園芸では、それぞれの品目で供給が一定期間に限られるため産地の組み合わせも必要だ。認証産地を面的にさらに広げて認知度を高めていきたいともいう(同)。

(2005.7.14)


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