農業協同組合新聞 JACOM
   
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国産鶏種「はりま」で130万羽の生産体制を確立
−生活クラブ連合会 (7/15)

地域特性を踏まえた多様な「種」を尊重

 いま世界で消費されている鶏肉のほとんどはブロイラー(孵化後3ヶ月齢未満の肉専用若鶏)で、その80%近いシェアをチャンキーとコップの2大鶏種が占めている。日本ではこの2鶏種が98%のシェアを占め、国内で育種改良など種のコントロールができないのが現実だ。
 こうした現状に対して生協連合会の生活クラブ連合会は、
(1)ブロイラー生産は「工業化された食・農」を象徴している。これに対抗する飼育体系を生産者とともに確立し、一羽買い(ロット単位)を基本に、加工品を含めて責任消費する仕組みをつくる。
(2)遺伝子組み換え食品により多国籍企業の特許にもとづく「種子(遺伝子)支配」=「食料支配」という構図は未来に対する禍根であり、それらによって進められている極端なまでの「食料の商品化」=「戦略物資化」や「生命の商品化」はやめるべきである。
「種」の問題は「健康」をキーワードに、それぞれの地域特性をふまえた多様性こそが尊重されるべき。
 と考え、国産鶏種「はりま」による鶏肉共同購入に取り組んできている。
 2001年に本格的にスタートしたこの取り組みは、04年度までに年間約90万羽という生産体制をつくり上げてきたが、今年6月に従来からの群馬チキンフーズに加えて秋川牧園も規格を統一して取り組むことになり、05年度は130万羽の生産体制となった。

なぜ安いのかを問う判断力ある自覚的消費者へ

  生活クラブ連合会はこうした国産鶏種「はりま」の到達点とこれからの課題を確認するために、7月13日に学習会を開催。同連合会加盟生協関係者、原々種の維持管理と育種改良を担当する(独)家畜改良センター、飼育生産・鶏肉処理・加工などをする群馬チキンフーズと秋川牧園、全体管理を行なう全農と全農チキンフーズなどから関係者約200名が参加した。
 加藤好一同連合会専務理事は、「はりま」に取り組む意義について前記の(1)、(2)をあげ、さらにトレーサビリティについて、生産履歴の跡づけ可能な仕組みづくりは必要であるとしても「より大切なことは、消費者が生産者とともに不断に課題を確認しあい、ともに問題解決していくこと(=自主管理監査制度の精神)」だと語った。そのためのモデルケースが「はりま」であり、「生産履歴の確かさは種鶏育成まで含めて一貫している」ことを強調した。
 また、これまでの取り組みによって「素性の確かな消費材を適正な価格で」という生活クラブ共同購入の基本理念を再確認し、あわせて「生産時間」「生産空間」という問題を重視すべきこと、さらに「食べ物」がグローバル化のなかで極めて「政治的」であることを学んだ「自覚的消費者」になったと語った。
 さらに日本生協連「農業・食生活への提言」にある「所得格差拡大社会の中で、高関税の逓減によって内外価格差を縮小することで、個々の消費者が農業保護のコストを目にみえない形で負担していることの負担を解消すべきと提言」する立場ではなく、内橋克人氏のいう「商品を買うという行為の背景に、どのような社会の構造があって、どのような政治的な意思というものがあるかを考え、そしていま何が必要なのかがわかる、値段が安いにこしたことはないが、それはなぜ安いのかを問う判断力を持っている」自覚的消費者の立場をとるとも語った。
(2005.7.15)


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