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集落営農育成に力点 「植物工場」も顔出す
農水予算の概算要求 (8/26)


 農水省は8月26日に省議決定した平成18年度予算概算要求に集落営農の育成策を盛り込んだ。水田集落8万のうち、その半数に主業農家がいない中で、担い手を確保するには、集落リーダーの育成が必要として、これを支援し、集落営農の組織化と法人化を進める。また農林水産物の輸出倍増策も目玉とした。約3000億円の輸出額を今後5年間で倍増させるため、生産者団体などを対象に市場調査や販促事業などを支援する。さらに食料供給コストを下げるフードシステム改革を進める。農産物輸送を鉄道や海運に転換し、トラックと組み合わせるという物流システムの改革モデルを提示するなどの事業だ。

◆集落リーダー育成へ

 担い手対策は来年度の重点。集落営農の育成には9項目の支援予算を盛り込んだ。補助事業で、実施主体は市町村やJAなど。
 リーダーの候補者を公募し、集落の中で、その指導体制が確立されるまでの調整活動の支援に20億円を計上した。9項目の中には、経理の一元化に向けた会計専門学校への入学助成や、個人所有の農業機械の廃棄に対する支援もある。
 またモデル性の高い集落営農経営を緊急的に育成したり、アグリビジネス投資育成会社の投資対象に特定農業法人を加えた。
 水田農業ビジョンに位置づけられた担い手を緊急に認定農業者へと誘導する支援策を含めると担い手育成予算は計42億円となる。新規就農の促進策8億5000万円なども措置した。
 19年産から導入する品目横断的経営安定対策については、その対象者の認定などにかかる事務を開始する費用を計上した。

◆輸出倍増を目ざして

 輸出促進予算は前年比倍増の13億円。海外マーケティングを展開する食品産業などを支援。コメ輸出では、生産者団体による海外での調査やPRを支援する。
 フードシステム改革では、農業生産資材費の低減に向け、担い手を対象にモデル地区を設定し、肥料と農薬の使用を減らす技術体系を導入するとともに、肥料のバラ・フレコンによる大量一括受け入れを推進するなど全体として食料供給コストの縮減を推進する施策に9億6000万円を計上した。
 新規事業には、未来農業を構築する革新的営農特別対策費5億円がある。季節や天候に制約されずに野菜を作る植物工場を超低コストで設ける技術と、畜産経営の労働を軽減する自動化畜舎システムを開発する。畜舎には各種ロボットを導入し、超省力型とする。

◆飼料自給率向上図る

 新規としては、酪農飼料基盤拡大推進事業83億円もあり、飼料作付面積に応じて支援する。これを含めた飼料自給率向上特別対策費は約400億円で、今年度に比べ大幅に増えた。
 一方、どこでも、だれでも簡単にコンピュータが使える「ユビキタス・コンピューティング」技術を活用した食の安全・安心システムの開発と導入に加え、牛のトレーサビリティ制度の信頼性を確保する予算28億円を計上した。
 食育推進予算は前年度比倍増で89億円とした。


◆工程管理進めて 農政改革を実行

 農水省の概算要求は、3兆円の大台を割った今年度予算を11.2%上回る3兆2996億円となった。8月末に財務省に提出する。
 義務的経費は今年度を3%強下回ったが、裁量的経費は約18%増え、また森林整備などの公共投資関係費は約16%ふくらんで1兆6741億円となった。これは要求基準の2割増を要求できるためだが、政府は一般会計を実質的に今年度以下に抑える査定方針だ。
 概算要求の重点は、構造改革で、(1)食料自給率の向上へ、新基本計画の工程管理を進め、スピード感あふれる農政改革を実行する(2)京都議定書の目標達成へ、森林吸収源対策を推進する、(3)構造改革の推進を通じた水産業・漁村の再生、という3本柱だ。
 要求の方針には、工程管理に沿って粛々と農政改革を進めることなどがある。特徴の一つには、目的別に細分化されていた補助金を7つに括って交付金化した今年度に引き続き、その予算枠を増額したことがあり▽食の安全・安心確保交付金約30億円▽強い農業づくり交付金約566億円▽元気な地域づくり交付金538億円、などがある。

集落営業の育成・確保支援対策

(2005.8.31)



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