農業協同組合新聞 JACOM
   
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生協事業連合の到達点と課題を明らかに
−事業連合によって多様な姿が
生協総研「第15回全国研究集会」 (10/1)


生協総研「第15回全国研究集会」

あいさつする蓮見生協総研理事長
あいさつする
蓮見生協総研理事長
 
基調講演をする田代教授
基調講演をする田代教授

 (財)生協総合研究所(蓮見音彦理事長)は、10月1日に「生協における事業連帯の新たな方向―地域生協の事業連合を中心に」をテーマに、「第15回全国研究集会」を東京・青山学院大学で開催した。
 地域生協の事業連合は1990年前後から各地で設立され、現在では13の事業連合があり、全国の地域生協事業高の6割強を占めるまでになっている。日本生協連の「2010年ビジョン」は「激しい競争に打ち勝ち、組合員のくらしに最大貢献する」ために「リージョナルレベルと全国レベルで、発展の質的変化を生み出せる事業規模(クリティカルマス)を確保し、質と量の両面で連帯効果の発揮できる事業連帯構造の確立」をめざすとし、事業連帯の強化と機能の高度化を最重要課題としている。
 生協総研ではこうしたことをうけ、昨年7月から「生協の連帯と事業連合研究会」(座長:田代洋一横浜国立大教授)を組織し、7つの生協事業連合の組織構造、事業機能の統合の度合い、財務構造の現状と課題の把握を進めてきた。今回の研究集会は、この研究会の成果をもとに、「生協の事業連帯、事業連合の到達点を明らかにし、今後の進むべき方向を多面的に考える」ことを目的に開催され、主催者の予想を上回る250名が参加した。
 研究集会では「事業連帯の新たな展開と課題」と題して田代教授が基調報告。田代教授は、生協事業連合の歴史と現在の展開、イギリス・イタリアの経験、農協組織との比較をしたあと、事業連合を「単協商品部の単なる延長とみるのか、協同組合における二次組織とみるのかで決定的な違い」があると指摘。前者なら実務組織として実務者による運営となり、自然人組合員参加は不要で、経営者支配となる。自然人組合員も参加する二次組織とみれば「そのあり方は国際的にも未解決」だが、日本としてはこの方向が望ましいのではないかと述べた。また、多くの生産者や業者と取り引きを行なうのだから、社会的な責任を問われることもキチンと認識すべきだとも指摘した。
 その後、ちばコープの田井修司理事長が「コープネット事業連合とちばコープ―新しい協同のレベルをめざして」、矢野和博日本生協連専務が「全国的な事業連帯と日本生協連の役割」、公認会計士の齊藤敦氏が「事業連合の財務分析」を報告。大木茂麻布大助教授の司会で、田代教授、赤松光コープネット事業連専務、太田朝昭パルシステム生協連(旧:首都圏コープ)理事長、越淵賢志ユーコープ事業連理事長をパネリストに「事業連帯の到達点と課題」についてパネル討論が行なわれた。
 研究集会全体を通しては、「次の10年で食品でNo.1をめざす。誰にでも買ってもらえるためには価格、品揃えだ」と低価格を明確に打ち出すコープネット。地域循環型農業などにより「商品に価値創造できる産直の考え方」を強調するパルシステム。「いまの中心課題は、事業の建て直しと経営の再確立を一体として改革する挑戦期」とするユーコープというように、また、財務分析をした齊藤氏の「類型化はしにくい」という言葉に象徴されるように、到達点も課題も事業連合によって多様だということが浮き彫りにされたのではないだろうか。
 農業サイドとしては、それぞの理念や考え方、経営状況などをキチンと分析して対応することが大事ではないかと感じた。

(2005.10.5)



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