農業協同組合新聞 JACOM
   
解説記事
ペイオフ全面解禁に備えて 選ばれ続けるJAバンクへ
破綻未然防止システムが定着


 4月1日からのペイオフ全面解禁で、金融機関が破綻した場合、保護される預貯金は元本1000万円(決済用預貯金を除く)と、その利息までとなる。利用者は金融機関を選んだり、預貯金を分散するなどの工夫が必要となる。このためJAバンクはペイオフ解禁をにらんで「選ばれ続ける」存在を目指し、JA経営の健全性を高めてきた。その取り組みには、独自の「破綻未然防止システム」の確立などがある。また平成16年度からは「JAバンク中期戦略」で収益力の向上を掲げて実践中だ。より安心できる金融機関として信頼を培ってきたJAバンクのペイオフ対応や今後の戦略展開にスポットを当ててみた。

◆より安心を目指して
 自主ルールを守る

 家計の金融資産動向を見ると、預貯金を、個人向け国債や投資信託などの市場性金融商品へとシフトさせる動きがあり、預貯金が減っている金融機関もある。
 そうした中で、全国JA貯金は前年同月比2%台の伸びを続けている。農林中金は、これを「JAバンクに対する利用者の信頼の証し」と分析する。
 また、農林中金の上野博史理事長は、JA経営の健全性を確保するJA、信連、農林中金の一体的な取り組みで「JAバンクへの信頼は着実に高まっており、ペイオフ全面解禁も安心して迎えられる」と自信を示す。
 JAバンクは、JA経営の問題点を早期に発見し改善する破綻未然防止システムを平成14年に稼働させた。その仕組みは▽農林中金に設置した「JAバンク中央本部」と、信連に設けた県本部がJAの経営状況をチェックする▽その結果、JAバンクの自主ルール基準に該当するJAに対しては経営指導する▽必要な場合は、JAバンク支援協会の支援基金から、資本注入などの支援をする、となっている。
 この仕組みには、略称「JAバンク法」という法律の裏付けがあり、農林中金は、この法律に基づいてJAバンクシステムを運営している。

破綻未然防止システムのポイント

◆高い自己資本比率

 破綻未然防止システムに基づく経営状況のチェックを進めてきた結果、金融機関の健全性を示す指標である自己資本比率は、金融庁の基準である4%を、すべてのJAがクリアしている。しかしJAバンクは、その基準より厳しい8%を自主ルールで設定。その達成に「ほぼ目途がついた」(農林中金)という。
 現時点で8%をクリアしていたとしても将来、再び8%割れになってはいけないので、不良債権のシュミレーションをするなど早めに手を打つ早期経営指導も昨年から実施し始めた。
 またJAの信用事業実施体制の整備も促進している。例えば融資と審査の担当を分けて牽制機能が働く体制にするなどだ。
 自主ルール(JAバンク基本方針)の見直しも行っている。
 なお、JAバンクは、より安心な金融機関としてセーフティネット(安全網)も構築している。仕組みは、貯金者保護の公的な貯金保険制度と、独自のJAバンク支援基金等からなる。
 貯金保険制度にはJA、信連、農林中金などが加入し、責任準備金は約2000億円(15年度末)。JAバンク支援基金は全国のJAバンクの拠出によるもので、万一緊急の事態に陥ったJAへの貸付や、支援が必要なJAに、資本注入等により支援を行う。

◆収益力の向上に向け
 今年は「実践の年」

 JAバンクは、今年度からスタートした中期戦略(16〜18年度)で経営の健全性確保を前提に、収益力向上と顧客基盤の確保を最優先課題とした。
 だが都銀などの金融機関は、伸び悩む企業融資に代わる成長分野として個人向けの融資や金融商品の売り込みに力を注ぎ、JAの地盤である農村地域でも競争が激しくなっている。
 都銀や地銀は、近時、預金の獲得よりも、手数料収入に寄与する個人向け国債や投資信託などの市場性金融商品の販売に重点を置いている。また消費者金融との提携も目立つ。さらに銀行の窓口で保険や株式の取り扱いができるようになるなど、JAバンクをめぐる情勢は厳しい。

◆住宅ローン伸ばす

 そうした中で中期戦略は、収益力向上に向けて▽住宅ローンを中心とした生活向けローンの拡大▽店舗の再構築による経営の効率化▽農業の担い手に対する支援策の強化を重点とした。そして17年度を「実践の年」と位置づけた。
 住宅ローンでは、長期固定金利型の「JAあんしん計画」を主力に、金利や担保などで多様なニーズに合わせた商品を投入し、昨年は「全国統一休日住宅ローン相談会」を春と秋の年2回、約3000会場で開催した。今年は年4回開く計画だ。
 住宅メーカーとの提携にも力を入れてきたが、営業をさらに強化してローン紹介案件の増加を図る。農林中金としても大手住宅メーカーを中心とした業者との連携を強化し、昨年末で13社となったが、さらに新たな連携先をふやしていく。推進体制の強化では、JAに「ローン営業センター」の設置を呼びかけ、130カ所を目指すが、すでに立ち上げにかかったJAもある。
 「JAあんしん計画」は人気を呼び、昨年末までの累計で実行件数は3万2645件、残高は約5583億円と順調な伸びを示している。
 さらにマイカーローンや約定型カードローン「JAらくらくキャッシュ」の推進で若い世代の利用を広げ、長期展望で顧客基盤の拡大を図っていく。

「JAあんしん計画」実績推移

◆担い手金融も拡充

 大口貯金者対策では、新年度早々に、家族の名義借りもチェックして口座の名寄せを行い、資産相談などのサービスを実施するとともに、遺言信託業務への参入も今秋を目途に準備を進めている。
 農政課題に対応した担い手支援では、新資金を4月に導入する予定で検討中だ。担い手には規模拡大志向などを背景に経営内容に応じた機動的で柔軟な融資ニーズが強いので、これまで以上に対応を強化する。また農業生産法人への出資も拡充する。
 JAグループの事業間連携については、JA共済の建物更生共済と住宅ローンや、自動車共済とマイカーローンの連携などでJAらしい総合サービスの提供を展開していく。
 中期戦略は、ローン残高を1兆4000億円増やす目標を掲げたが、それによって期待できる収益は限られる。そこでコスト削減が重要課題となるためJAの店舗再構築を17年度末まで集中的に実施する。店舗を集約しても、サービスを維持し、拡充できるように渉外活動やサービス提供などを進める。

Q&A
ペイオフ対応をどう進めるか?

 ――金融機関が破綻した場合、預貯金の払い戻しは、1人あたり1金融機関につき元本1000万円と、その利息だけとなるそうですが、それ以外の貯金等は一切戻ってこないのですか。

 「付保貯金(元本1000万円とその利息等)以外の貯金等については、破綻したJAの財産の状況に応じて、倒産手続きによって弁済金・配当金として支払われることになるので、一部カットされることがある。
 但し、JAバンクでは、そうした事態に陥らないように『破綻未然防止システム』により経営の健全性を維持しており、安心して利用してもらえるよう取り組んでいる」

 ――決済用預貯金だけは全額保護されると聞きましたが。

 「その通り。決済用預貯金とは(1)いつでも払い戻しできる(2)決済に使える(3)利子がつかない―預貯金だ。これが保護されないと企業活動に混乱を与えるとして保護された。JAバンクも導入の準備を進めている」

 ――ペイオフ全面解禁による資金移動はありますか。

 「平成14年に定期性預貯金がペイオフ解禁となった時に大口預貯金者や地方公共団体などは、それなりの対応を済ませており、また現状は金融システム不安の状況ではないので、今回は大幅な移動はないと見られる」

 ――JAのペイオフ対策には何が求められますか。

 「JAから利用者に対して、ペイオフについての正しい情報提供と、経営内容についての積極的な情報開示が求められる。また利用者への誠実な対応が大事だ」

貯金保険制度で保護されるJA貯金等の限度額

商品の分類 期間/平成17年3月まで 期間/平成17年4月〜
対象貯金等 当座貯金

普通貯金

別段貯金
決済用貯金※1(利息のつかない等の条件を満たす貯金) 全額保護 全額保護
決済用貯金以外の貯金  
定期貯金、定期積金、農林債券(リツノーワイド、財形リツノー、財形住宅リツノー、財形年金ワイドの保護預り専用商品)等 合算して元本1,000万円までとその利息等※2を保護。元本1,000万円を超える部分とその利息等は、破綻した農水産業協同組合の財産の状況に応じて支払われます。(一部カットされることがあります。) 合算して元本1,000万円までとその利息等※2を保護。元本1,000万円を超える部分とその利息等は、破綻した農水産業協同組合の財産の状況に応じて支払われます。(一部カットされることがあります。)
対象外貯金等 外貨貯金、譲渡性貯金、農林債券(ワリノー、リツノーの保護預り専用商品以外の商品)等 保護険対象外

破綻した農水産業協同組合の財産の状況に応じて支払われます。(一部カットされることがあります。)

※1「無利息、要求払い、決済サービスを提供できること」という3条件を満たすものです。
※2定期積立金の給付補てん金も利息と同様保護されます。
(2005.3.7)


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