農業協同組合新聞 JACOM
   
解説記事
WTO農業交渉
「たたき台」原案を提示
来月、大連の非公式閣僚会合前に


 WTO農業交渉は7月初めにジュネーブで農業委員会特別会合が開かれたのち、12日からは中国主催の非公式閣僚会合が大連で開かれることになっている。農業委員会のグローサー議長はこの非公式閣僚会合の前にモダリティたたき台の第1次原案を示すことを明らかにしており、交渉がいよいよ本格化する場面を迎える。

◆階層の数ではほぼ一致

 関税引き下げ方式に階層方式を採用することで合意した市場アクセス分野では、交渉の入り口論だった従量税品目の従価税換算方式に一応の合意が得られ、5月30日から6月3日の農業委員会特別会合では、階層の数や階層の境界の決め方などについての議論された。
 階層の数については、日本を含むG10、カナダ、オーストラリア、米国、EUなど多くの国が「3〜4が適当」だと主張し大きな対立は見られなかった。
 一方、階層内の関税引き下げ方式については、G10、EU、インド、インドネシアが最低削減率と平均削減率を組み合わせる比較的緩やかな引き下げ方式であるUR(ウルグアイ・ラウンド)方式をこれまでどおり主張。これに対して輸出国である米国、オーストラリア、ニュージーランドなどは一律で大幅な引き下げとなるスイス方式を主張し、さらにG10などの高関税品目を引き下げるために上限関税の設定が必要であることも指摘、両陣営で激しく対立した。
 日本などが主張するUR方式は、階層内の品目ごとに最低削減率と、品目全体での平均削減率を目標設定するもの。たとえば、ウルグアイ・ラウンド合意の削減率は最低15%、平均で36%が求められた。この方式は平均削減率を達成するために、品目間で調整できるという柔軟性がある。
 たとえば、ある品目では最低削減率だけ適用、そのほかの品目で削減率を上乗せして品目全体として平均目標が達成できればよい。そのためには階層内の品目数が多ければ多いほど調整しやすくなる。
 関税引き下げ方式では、輸出国と輸入国で激しい対立が続いているが、階層の数で3〜4という点では大きな異論がなかったのは、UR方式を主張する国にとって「階層の数が多くなると品目数が少なくなり、削減率が高くなる可能性があるが、3〜4程度の階層数であれば融通の効きやすい品目数が確保できる」(農水省国際部)と判断しているからだ。
 そのほか関税引き下げ方式ではカナダが各品目を定率で引き下げるリニア方式を主張している。

◆機械的線引き法に前向き

 階層の境界をどのように設定するのかも焦点だが今回の会合ではカナダが提案した機械的線引き法が注目された。
 カナダの提案は加盟国すべての関税品目を関税率の順番にならべ、それを機械的に等分してはどうかというもの。たとえば、すべての関税品目をならべた数がかりに1万品目だとして、階層の数を4つと決めた場合、最初の境界は高い品目から2500番目の品目の関税率、その下の境界はつぎの2500番目というように、線引きする関税率の数値や品目数で決めるのではなく機械的に線引きをしてしまうというものだ。
 この提案にEUなどは最終的には境界となる数値が受け入れ可能かどうかが問題だとしたほか、途上国からは各国の関税構造に配慮が必要だとの異論もあったが、日本を含むG10、米国、トルコなど多くの国が関心を示した。
 日本がこの提案を前向きに検討できるとしたのは、階層の数が3〜4で合意されれば、この方式なら各階層内の品目数が十分に確保できるからだ。また、たとえば「高関税の階層は300品目とする」などといった決め方をすれば、高関税品目の引き下げを実現するため、輸出国がG10を狙い撃ちした厳しい関税引き下げ方式を主張することも想定されるからだ。そうなれば個別品目をどう守るかという交渉局面に直ちに立たされてしまう。
 それに対して機械的に線引きをしておけば、かりに階層内の関税引き下げ方式や引き下げ率で厳しい主張が出てもG10以外の国も反対することも考えられる。
 日本としては「カナダ提案はテーブルに乗った」(農水省国際部)としてこの案を前向きに捉えて交渉に臨む方針だ。

◆重要品目の標準方式検討

 焦点となっている重要品目の扱いについては、G10とEUは一般品目とは「異なる扱い」とし、市場アクセス改善の程度も一般品目よりも「小さくなるべき」こと、また、市場アクセスを改善する場合も関税割当数量の拡大だけでなく、一次税率の引き下げや関税割当品目の運用改善などの組み合わせを認めるべきと主張した。
 これに対して米国やオーストラリアなど多くの輸出国は、重要品目の扱いはあくまで一般品目の「例外」であり、階層方式で関税引き下げをした場合の市場アクセス改善と「同等であるべき」と主張して今回も対立。階層方式で得られるはずの市場アクセス改善の程度を関税割当数量の拡大で「補償」すべきとも主張した。
 重要品目の扱いをめぐる対立には、階層方式で関税を削減する一般品目のあくまで例外とすべきだという輸出国と、農業の多面的機能に配慮し多様な農業を共存させるための「ルール」として位置づけるべきだとする輸入国の主張の違いがある。
 とはいえこれまで重要品目のについての具体的な扱い方が議論されたことはなかった。そこで今回、日本が提案したのが重要品目のフォーミュラの確立。具体案は関税削減と関税割当約束の「標準的な組み合わせ」の作成で、どちらか一方が大きくなれば他方が小さくなるという「スライド・メカニズム」方式を提唱した。
 具体的な姿はこれからの検討だが、一般品目を扱う階層方式ではかなり具体的な議論に進んできていることから、重要品目のルール化も同時に議論すべきだというG10などの主張を背景に提唱した。EUも関心を示しており今後の検討が注目される。

◆日本、輸出国主導を警戒

 WTO農業交渉は7月4日からの農業委員会特別会合の後、7月末に具体的な関税削減方式や削減率などを盛り込んだ各国共通の約束事項、モダリティのたたき台1次案が示されることになっている。
 グローサー議長は6月初めの特別会合で「たたき台は国内支持、市場アクセス、輸出競争の3分野で十分に議論が収斂した事項」についてのみ記述したものになるとの見込みを示したほか、7月12日から大連で開かれる中国主催の非公式閣僚会合の前にたたき台の原案を提示することも明らかにし、各国に内容検討を要請した。
 大連での非公式閣僚会合には島村農相も出席、各国閣僚との会談も予定されている。とくに焦点となる市場アクセス分野で重要品目に対する柔軟な扱いの確保を求めるとともに「(交渉では)輸出国だけが強いがそこだけで進められてはたまったものではない」(島村農相)として、輸出国主導の交渉にならないよう歯止めをかけることも課題に臨む方針だ。

WTO農業交渉の経過と今後のスケジュール
(2005.6.24)


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