農業協同組合新聞 JACOM
   
解説記事

19年度農林予算成立
品目横断対策が本格実施
バイオ燃料生産、農村活性化も課題



 品目横断的経営安定対策の本格実施など新年度を迎えた4月から戦後農政の大転換に向けたさまざまな対策が実行されていく。
 4月2日からは19年産の米、麦、大豆、てん菜、でん粉原料用ばれいしょを作付ける生産者を対象に品目横断的経営安定対策への加入申請受付が始まった。初日には全国で700程度の申請があったという。受付けは7月2日まで。農水省は順次、加入申請状況を公表する。この対策を含めた19年度の農林水産予算は3月26日に国会で成立した。改めて予算の主要項目を整理してみた。

◆米改革、第2ステージへ

 19年度の農林水産予算は、品目横断的経営安定対策や米政策改革の推進、農地・水・環境保全対策、農山漁村活性化支援交付金など農業分野のほか、美しい森林づくりを掲げた森林・林業予算、水産構造改革に向けた水産予算を合わせ合計2兆6927億円。前年度より3.1%、856億円の減となった。
 品目横断的経営安定対策は担い手に対して、麦、大豆、てん菜、でん粉原料用バレイショを対象にした生産不利補正対策(ゲタ対策)と米も対象品目となる収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)からなる。
 生産条件不利補正対策は過去の生産実績に基づく面積支払いの交付金と毎年の生産量・品質に対する交付金からなり予算は1395億円となっている。面積単価は反収の違いを反映して地域別に設定、数量単価は小麦(Aランク・1等)60kg2110円などとなっている。
 一方、販売収入が基準となる収入額より下がった場合の差額の9割を補てんするという収入減少影響緩和対策は、交付金の支払いが20年度になるため来年度予算に盛り込まれる。
 改革3本柱のひとつ、米政策改革は今年度から農業者・農業団体主体の需給調整システムに移行、改革の第2ステージに入る。22年度の「消費者重視・市場重視の米づくり実現」に向けて今年度は1821億円措置された。
 地域水田ビジョンに基づいた需要に応じた米づくりや米以外の作物づくりを支援する産地づくり交付金のほか、米の生産調整を上乗せする取り組みを支援する新需給調整システム定着交付金は、従来の特別調整促進加算部分を見直して150億円とした。
 また、担い手以外の米づくり生産者に対して、価格下落の影響を緩和するための措置として稲作構造改革推進交付金290億円を計上。10aあたり4000円が基本単価で、担い手への集積に取り組んだ場合は同3000円が加算される。また、地域段階であらかじめ産地づくり交付金に融通することを取り決めることも可能とし、産地の米の需給改善への取り組みを支援する。

◆担い手への金融支援

 担い手育成・確保支援策では、経営相談、法人化支援、農地の利用調整など担い手へのサポート活動を一元的に行うワンストップ窓口を全国1000か所の支援協議会に設置するなど、担い手アクションサポート事業を実施。また、担い手に農地を面的に集積していくため、面的集積を実現した場合に農地の出し手・受け手に面積集積促進費を支払うなどの担い手農地集積高度化促進事業も新規に実施する。
 そのほか19年度から3年間の集中改革期間中、スーパーL資金を無利子とするほか、緊急に必要な資金を無担保、無保証人でクイック融資する仕組みなど担い手への金融上のメリットも拡充した。担い手が麦・大豆などの作付けを拡大する場合の支援策などとして、担い手経営革新促進事業も実施する。
 一方で、企業の農外からの新規参入促進策として農地情報の提供、利用調整、農地リース支援などにも予算を確保している。

◆バイオ燃料で実証事業

 改革3本柱のひとつ農地・水・環境保全対策は予算303億円。農地や農業用水など資源を保全するための地域ぐるみの共同活動を支援する交付金と、地域でまとまって環境負荷を低減する先進的な営農活動を支援する交付金が支払われる。
 対象となる活動は水路や農道の予防保全活動や棚田の石積みなど農村景観を保全・形成する活動、化学肥料や化学合成農薬を大幅低減など。23年度に農振農用地の半分で実施されることを政策目標としている。
 農山漁村の活性化推進では、農山漁村活性化プロジェクト支援交付金341億円を確保。農村地域での定住者を28年度に現在より150万人増、2地域居住者を300万人増やすことを政策目標としている。
 政府はバイオマスニッポン総合戦略のなかで国産バイオ燃料の大幅拡大を決め、5年後に5万klの導入をめざすが、19年度はバイオ燃料の地域利用モデルの整備と技術実証に対する支援、高バイオマス量資源作物の育成や低コスト栽培法の開発など研究開発予算を確保した。
 地域利用モデルの整備、技術実証の支援は、バイオ燃料製造事業者や農業団体などからなる地域協議会での事業計画策定や、製造施設・供給施設の整備、技術実証などに対して定額で補助を行う。
 また、地域に眠っている未利用のバイオマスの発見、活用のための実地調査、普及・啓発活動なども支援事業も行う。
 そのほか19年度予算では新たな野菜・果樹対策、輸出促進対策費なども盛り込まれている。
 松岡農相は農政改革の3本柱が一体的に実施されることについて3月末の会見で「大変なエネルギーを必要とする取り組みだと思うが円滑な実施と定着に組織の総力をあげて取り組んでいく」と述べている。

19年度農林水産予算の主要項目

《農業の競争力強化》
(1)品目横断的経営安定対策
 ・生産条件不利補正対策  1395億円
(2)米政策改革(計1821億円)
 ・産地づくり交付金  1327億円
 ・新需給調整システム定着交付金  150億円
 ・稲作構造改革推進交付金  290億円
 ・耕畜連携水田活用対策  54億円
(3)担い手育成・確保支援対策  (計176億円)
 ・担い手アクションサポート事業  35億円
 ・地域担い手経営基盤強化総合対策実験事業  35億円
 ・担い手農地集積高度化促進事業  25億円
 ・担い手への金融上のメリット措置  10億円
 ・担い手経営革新促進事業  71億円
(4)野菜・果樹対策の見直し
 ・新たな野菜対策  121億円
 ・新たな果樹対策   52億円
(5)企業の農外からの新規参入の促進
 ・企業参入支援総合対策  17.3億円
《食生活の豊かさを実感できる国民生活の実現》
(1)食育の推進
 ・にっぽん食育推進事業  38億円
(2)地産地消のさらなる展開
 ・地産地消特別対策費  7.9億円
《地域資源を活かした潤いのある国民生活の実現》
(1)バイオ燃料の地域利用モデルによる実用化推進
 ・バイオ燃料地域利用モデル実証事業  85億円
 ・バイオマス利用技術の開発  15億円
 ・地域バイオマス発見活用促進事業  3.4億円
(2)農山漁村の場での再チャレンジ支援
 ・農林漁業再チャレンジ支援対策  112億円
《地域の力を活かした農山漁村づくり》
(1)農山漁村の活性化の推進
 ・農山漁村活性化プロジェクト支援交付金  341億円
(2)農地・水・環境保全向上対策の本格実施
 ・農地・水・環境保全向上対策  303億円
《新たな可能性の追求》
 ・東アジア食品産業活性化対策  5.5億円
 ・新需要創造対策  10億円
 ・海外日本食優良店調査・支援事業  2.8億円
 ・輸出促進対策(条件整備、研究開発含む)   77億円

(2007.4.12)
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