農業協同組合新聞 JACOM
   
解説記事
「生き物調査」を柱に事業と連動したSR活動を推進
−全農、SR事務局が発足


原耕造SR推進事務局長
原耕造SR推進事務局長
 JA全農は、SR(社会的責任)活動を展開するため、2月1日、総合企画部内に「SR推進事務局」を発足させた。今後、田んぼ、畑の「生き物調査」やバイオエネルギーへの取り組み、全農主導の環境直接支払い制度の検討など、環境に配慮した事業と連動するSR活動を推進していく。
 昨年4月の全農改革委員会答申では、協同組合である全農の社会的責任には、「一般企業にはない、農業生産の持つ環境維持機能、自給率確保等の取り組みがある」と指摘、こうした課題について「SR委員会」を設けて検討する必要があるとしていた。
 答申等を受けて昨年7月に策定された「改革実行策」には「倫理・社会的責任推進委員会」を設置することが盛り込まれたが、その後、経営管理委員会の基本問題委員会の検討で、このほど設置が決まったガバナンス委員会がコンプライアンス推進状況の検証ととともに、SR活動についても評価していくことになっている。

■消費者参加型のプロジェクトづくり

 具体策として、全農安心システム認証産地と取引先を中心とした「生き物調査」の導入や、バイオエネルギーの取り組み支援、家畜の健康調査などが上げられている。
 生き物調査はすでに生協など取引先、消費者が参加して実施しており、たとえば兵庫県但馬町では、コウノトリを育む農法と田んぼの生き物調査に取り組み、栽培された米をJAたじまが「コウノトリの郷米」として販売しているが、18年産からは作付け面積が昨年の10倍の300ヘクタールに拡大する見込みで、全農グループに販売先拡大の期待も高まっているという。「人と生き物に優しい農業」を支援する消費者、取引先を巻き込んだ取り組みがJAへの集荷、販売の拡大につながっている例だ。
 そのほか総合的病害虫管理(IPM)の取り組みも、生き物調査と合わせて実施することで消費者、取引先の理解、支持を得ながら取り組む方向をめざす。
 さらに全農が主導となった環境直接支払い制度の仕組みも検討するという。これは農産物価格とは別に、環境に配慮した農業生産活動を支援する環境支払い分として分離、支援する意思のある消費者が支払った額を基金として積み上げていく仕組みを想定している。その基金からは、生産者への直接支払いだけでなく、環境NPOなどの活動助成などにもこの基金を当てるという仕組みだ。
 原耕造SR推進事務局長は「農業経営を守っていくためには単なる産直の強化ではなく、心ある消費者、市民による参加型のプロジェクトが重要になる。食だけではなく穀物のエネルギー利用も事業と連動させたSR活動として推進するなど、取引先、消費者と連携した組織づくりをめざしたい。この取り組みは21世紀の協同組合のあり方を考えることでもある」と話している。

(2006.2.9)


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