農業協同組合新聞 JACOM
   
解説記事
19年産から手数料の定額化を
JA米事業で経済事業改革中央本部


 JA全中の経済事業改革中央本部は6月7日に19年産からJAの米穀事業で手数料を定額化することなど盛り込んだ販売事業改革の取り組みを提起した。組合員の理解が大切になる。

JA米穀事業の収益状況

 農水省がまとめた16年度のJAの販売事業の労働生産性(販売担当職員1人あたりの事業利益)は平成2年を100とすると、80ポイント近くに下がっている。一方、販売担当職員数は約2万2000人で横ばいが続いたまま。しかも販売事業担当者の業務内容では、米穀・園芸とも分荷・受渡し、請求・精算などロジスティック面の業務が、4割から5割近くを占めており、合理化が必要とされている。
 こうした状況でJAの米穀取扱高は、1兆242億円と平成2年の半分に落ち込み、手数料などJAの米穀事業収益は353億円で平成2年の63%水準だ。
 ただ、取扱額に占める手数料などの割合は3.4%と増加傾向にあるが、これはJA直売による販売差益や稲作経営安定対策にともなう事務費といった手数料以外の収益によるとJA全中では分析している。JAの直接販売は急速に増加しており16年度は8.7%となったが、(図1)販売手数料そのものは変わっておらず平均で2.9%とみられる。その前提で試算すると、手数料などの増加要因は直接販売収益や、稲経事務費が2割を占める状況だという。
 しかし、品目横断的直接支払い制度が導入されると、これまでのようにJAの米の取り扱い過程に政府助成がともなうということはなく、米流通と生産者への助成政策は切り離されることになるため、米の代金から助成措置のための事務経費を差し引くことは困難になる。17年産の稲経対策への契約数量は408万トン。JA全中の試算では、かりにすべてから事務費用を60kg100円徴収していたとすると総額は68億円になるという。このような事務費は品目横断対策が導入されれば、米の取り扱い業務とは切り離される。そのため、品目横断対策のJAによる代理申請やこれにともなう事務費を徴収する場合は、米の委託販売契約とは別にして、生産者と契約を結ぶ必要があるとしている。
 また、JAの直接販売はリスクも高く、市場価格水準引き下げの懸念もあると全中では指摘。
 こうしたことから米穀事業の収益構造を見直す必要があるとして、集荷・販売に関わるコストを定額化して設定することを基本とすることを提起した。
 米の価格形成が市場に委ねられ、一方、農業者の経営所得確保は政策で保証するという流れのなか、定率型の手数料では価格変動によりJAが必要とするコストが確保できなくなる懸念もあるからだ。14年〜16年度の平均販売価格をもとに60kg2.9%で試算すると定額では60kg484円となる。
 手数料の定額化を提起するとともに、販売に関わるコスト削減につとめ削減コストを組合員に還元することも課題となる。ただし、安全性確保などのためにJAが負担する経費についても組合員の理解を得ていく必要もある。

◆検査コストも高く

図2 検査コスト

 たとえば、農産物検査は国が実施していたときには60kg50円だったため、民間検査に移行後も継続しているところが多い。しかし、JAグループの試算によると60kg50円水準を確保するには、JAの集荷規模が3万トン以上でなければ実現しない。検査員数や検査場所数にもよるが取り扱い量が少ないJAでは検査手数料が大幅に上がってしまうことになる。(図2)
 また、生産者が記入した栽培履歴の点検やコンピュータ入力、独自の農薬残留検査など安全性確保のためのコストも販売手数料とは別に組合員に負担を求めていく必要があると提起している。
 ただ、検査や安全性確保は地域の米販売戦略の基本となるもの。JA全中では販売戦略を徹底する観点から、JA段階の共同計算のなかでこれらのコストを控除していくことも可能だという。
 いずれにしろ、安全・安心確保のためのコストが産地に負担になっている実態が示されたともいえる。コストを考えるうえでの課題のひとつではないか。
 JA全中では19年産からの見直しを基本に提起。そのためには18年度の総会(3月決算のJAでは来年6月の総会)までに具体化を進める必要があるとしており、今後、組合員に提起するモデルなども提示していく方針だ。

(2006.6.27)
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