農業協同組合新聞 JACOM
   
解説記事

18年度JA全農肥料農薬事業の重点課題

生産基盤の強化と農家手取り拡大へ

小高根利明 JA全農肥料農薬部長に聞く


 JA全農は「新生プラン」を実現するために各事業ごとに具体的な取り組み方策をまとめてきているが、生産資材事業では、生産基盤の強化と手取り拡大に向け、これまでの取り組みをさらに進める目標を定めJAグループが一体となって実践していく「生産資材コスト低減 チャレンジプラン」を提起した。そこで、肥料農薬事業が18年度から取り組む重点課題と喫緊の課題であるポジティブリスト制度への基本的な考え方と今後の取り組みなどについて小高根利明肥料農薬部長に聞いた。

◆肥料はデリバリで農薬は大型規格で担い手に対応

トラック満車直行で選択の幅を広げる −肥料

小高根利明 JA全農肥料農薬部長
 ――まずはじめに全農の「新生プラン」が策定されましたが…。

 小高根 新しい全農をつくるために痛みをともなう改革ですが、これをキチンと仕上げて生まれ変わる思いで職員が一丸となって取り組んでいます。

 ――「新生プラン」の具体策として生産資材部門では「生産資材コスト低減 チャレンジプラン」に取り組まれていますが、肥料農薬部門の重点課題はなんでしょうか。

 小高根 一つは「新生プラン」に掲げられている担い手対策です。将来、地域の農業を支えていく担い手の方々に評価されるJAグループでなければなりませんし、評価につながるような新しい商品や施策を肥料農薬部門として打ち出していかなければいけないと考えています。
 肥料については、担い手の方々はたくさん使われますのでコスト的にも評価される施策でなければいけないと思っています。具体的には、トラックの満車直行を考えています。10トン車なり4トン車に満載して工場から直接、担い手のところに届ければ、農協段階の戸配送が省けますし、拠点から農協への県内輸送も省けます。そのことで、担い手の方々に割安感をもっていただけるようにしたいと考えています。
 そのためにこれから始まる肥料メーカーとの価格交渉で、私たちの思いを伝えてご理解をいただくとともに、JAグループにおける経費も低減して商系と比べても遜色のない価格を実現していきます。

 ――アラジンについてはどうですか。

 小高根 これは全農の商品ですから、今年の7月からの18肥料年度から港湾倉庫からの直行価格を設定します。そのときに肥料メーカーのご理解をいただき化成肥料について一挙に選択の幅が広がるようにしていきたいと考えています。

大型規格品を5年間で40品目に拡大 −農薬

 ――農薬についてはどうですか。

 小高根 系統独自の大型規格品の充実が有力な手法になると考えています。現在、大型規格品は17品目ありますが、21年度までに40品目に拡大していきます。

 ――18年度中には何品目増えるのですか。

 小高根 25品目程度にしたいとは考えていますが、どういう品目を増やせばいいか、いま担い手を対象にアンケート調査を行なっていますので、それを踏まえて考えていきます。
 つまり、肥料はデリバリ、農薬は大型規格を切り口とした担い手対策を進めていくということです。

 ――営農経済渉外員制度については…

 小高根 これについては4月1日から営農総合対策部の担い手対策室と一緒になり一本化し、営農総合対策部担い手渉外グループとして進めていきます。

◆地域にふさわしいコスト低減プランを作成

 ――担い手だけではなく一般の組合員にもメリットがある生産資材のコスト低減については…

 小高根 低コスト資材の提供については、いままでも統合メリットの還元など各県域で取り組んできています。今回のチャレンジプランでも、必要とされる生産資材は地域によって異なりますので、JAごとに地域にふさわしいコスト低減のためのプランをたて、県域では全国目標と県域の実態をふまえたマスタープランをつくり、実行していくことにしています。

 ――最近は、ホームセンター(HC)やディスカウント店(DS)と比べてもJAの方が安い品目が増えてきていますね。

 小高根 ここ十数年の間にHCとかDSなど新しい業態が進出してきて競合状態が生まれました。こうしたところとの競争に勝つために、多くのJAや県域では競合店の価格などを調べて「JAは高い」といわれないような価格設定を行なってきています。負けない価格を実現するために、仕入面だけではなく、値入ミックスを導入するJAもあり、そういう取り組みの成果がでてきていると思いますね。

◆現場に根を張る 事業体制確立で統合効果を

 ――統合の成果をという期待も大きいですね。

 小高根 36都府県と統合して「新しい企業」になったわけですから、中身のある事業2段がもとめられているわけです。全農全体として、それに向けた最適な事業体制へ19年度から移行することにしていますから、肥料農薬部門もどうしたらJAや組合員の負託によりよく応えられるのかを県域も含めて、この1年間、大いに議論して固めていくことにしています。

 ――具体的にはどういうイメージですか。

 小高根 当然ですが、全国本部と県域で重複する機能は整理していきます。
 そのうえで全国本部は、県域ではできない海外事業とか農薬の開発、営農技術センターがもっている技術への対応とかを充実させて、その機能を発揮する「小さい全国本部」というイメージですね。
 そして生産現場での組合員やJAとの接触・接点が肥料農薬事業の原点ですから、要員削減という課題もありますが、現場の力が損なわれないような、現場にキチンと根を張った事業体制を組んでいきたいと考えています。

 ――「現場に根を張る」ということは県本部の肥料農薬事業を充実させるということですか。

 小高根 県本部の肥料農薬事業を充実させないと、事業の伸展は望めません。人数的には県域に厚く配置するような事業体制が望ましいと思っています。これまでも県域の担当部長たちと協議してきましたし、これからも協議しよりよい事業体制を築いていくつもりです。

 ――手数料問題についてもそうしたなかで解決していくわけですか。

 小高根 手数料については、全国本部と県本部で二重取りしているような印象を与えているものは整理・圧縮して、商品の競争力に活かせるように取り組んでいきます。そのことで事業2段が組合員にキチンと認識されるようにしていきたいと思っています。

◆ポジティブリスト対応を 機会に地域営農の確立を

会をあげて最大限の努力を傾注

 ――当面の大きな課題として、5月29日から施行されるポジティブリスト制への対応があると思いますが、これにはどう対応していきますか。

 小高根 いろいろな課題はありますが、ポジティブリストへの対応をどれだけ完璧にやるかが今年の最大の課題だと考えています。
 そのために昨年から全国的な会議を開いたり、県域でもJAと対応するなど、周知徹底をはかってきました。しかし、220万戸の販売農家のすべての方にうまく伝わったとは言い難い面もありますので、今後もJAグループとして引き続き啓発活動を行なっていきますし、マスコミの力も借りてその存在をキチンと知らせていきます。今のところポスターやパンフレットを作成し配布したり、東西で担当者を集めた対策会議を開いたりして情報の伝達に努めています。
 また、全農としても販売部門を含めた連絡会議を組織して会をあげてポジティブリストに対応していますし、3月上旬の地区別総代会議でもご理解をいただくために説明しました。

消費者に安全性を担保する一律基準

 ――一律基準の0.01ppmは厳しい基準ですね。

 小高根 厳しい基準ですが、国として国産農産物に対する消費者の信頼をえるためにということで決められたわけです。消費者に安全な国産農産物を届けるということでは異論はありませんから、最大限の努力をしていかなければなりません。

 ――一律基準が適用されるのはどれくらいあるのですか。

 小高根 図がポジティブリストの設定状況です。国内登録農薬331物質と143作物を組み合わせると4万7333件の基準値があることになります。そのうちの41%・1万9514件に一律基準である0.01ppmが適用されます。
 0.01ppmというのは1億分の1ということですから、お米に例えると約3トンで1億粒になり、そのうちの1粒ということになります。それだけ消費者にとっては安全性が担保されているわけです。生産者としてはできるだけ汎用性のある農薬を使うことを考えていく必要がありますね。

ドリフト対策はJAを核に地域全体で

 ――ポジティブリスト対策の一番のポイントはなんですか。

 小高根 農薬を適正に使用していれば基本的に問題はありませんが、それでも問題が起きる可能性があるのが、農薬の飛散(ドリフト)です。いままでは「俺の畑や田んぼに、俺がいいと思ったときに農薬を散布して何が悪い」といえましたが、目的の作物以外に農薬が飛散して残留し定められた基準を超えるとその作物は販売できなくなります。
 米の減反で転作をしたり、水田の隣に畑があるというような日本の状況では、一つのほ場が大きくて地平線の先まで単一の作物を作付けしている諸外国と異なり、完全にドリフトを防ぎきるには人一倍の苦労が必要です。
 ですから、ドリフト問題を起こさないようにするためには、一人ひとりの生産者だけではなく、地域全体でどういうものを作付けするのか、どういう防除をするのかを相談しながら決めていくことだと思います。営農の根本まで地域で協議することだといえますね。

 ――それはJAの仕事でもあるわけですね。

 小高根 地域営農の核になるのはJAですから、農家の不安を解消し正しい方向にもっていけるかどうか、JAの力量が問われているともいえますね。
 したがって、ポジティブリストで消費者の信頼を裏切らないことと、地域の営農をこれを機会にJA主導でやりきることが求められるそういう時代になってきたわけです。
 国民に安全・安心な農産物を届けるのは私たちの使命ですから、これを前向きにとらえて地域農業を振興する機会と考えて取り組んでいってほしいと思います。

18年度は新生プラン実現のスタートの年

 ――最後にこれからの決意をお聞かせ下さい。

 小高根 生まれ変わる決意として「新生プラン」を策定したわけですから、それをキチンと実行して評価していただけるように、いままで申し上げてきたことを18年度をスタートに着実にやりきっていきたいと考えています。

厚生労働省 食品残留基準(ポジティブリスト)の設定状況
(2006.3.24)


社団法人 農協協会
 
〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町3-1-15 藤野ビル Tel. 03-3639-1121 Fax. 03-3639-1120 info@jacom.or.jp
Copyright ( C ) 2000-2004 Nokyokyokai All Rights Reserved. 当サイト上のすべてのコンテンツの無断転載を禁じます。