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シリーズ 生協―21世紀の経営構造改革−−1

協同組合の優位性を実証
組合員に魅力ある生協へ

ちばコープ
高橋晴雄理事長
(日本生協連理事)に聞く

インタビュアー : (財)協同組合経営研究所 元研究員 今野 聰

 歴史的な日本生協連第51回通常総会は終わった。新たな「第8次全国計画」を決議して、すでに全国各地生協で実践に入った。その骨子は(1)食の安全、(2)くらしの安心、(3)地域の共助、(4)地球社会への責任(環境、平和、国際協力)、(5)競争力ある事業の構築、(6)健全な経営の確立ーである。これらをまとめて、キーワードは「経営構造改革」。今回、1年間のシリーズで全国各地の生協リーダーから、「経営構造改革」の内実を聞いてみたい。
 第1回は高橋晴雄ちばコープ理事長である。組合員36万人、供給高687億円。高橋氏は1990年以来、理事長であり、日生協理事でもある。多角的に論じてもらった。
 

生活と仕事の2つの現場からもっとリアルな発想転換を

 今野 日本生協連総会も終わったところです。ズバリ全般的な特徴をお聴きしたい。

 高橋 消費停滞の中、とにかく生協は存続しなければということで、「構造改革」「未来開発」がいわれるようになった。問題はその中身ですよ。時代・生活の変容と従来型組織構造の溝があり、その転換が強く求められているのにイメージが浮かばない。事業の継続ということが優先課題になっているのが実態でしょう。食品衛生法を改正するということで、全国運動の盛り上がりが意図された。しかし組合員の願いということになるとどうだろう。暮らしの現場、仕事の現場がリアルに語られたかというと、その面では感動がとぼしい総会だった。

 今野
ちばコープ選出総代が分散会、全体会で発言する。ところが出席総代全体にスパっと入らない。女性総代の発言をもっと全体化する工夫が足らないのでは。

(たかはし はるお)
1938年宮城県生まれ。1977年日本生協連理事(〜87)、ちば市民生協理事長、1989年〜生協総合研究所常任理事、日本生協連理事、1990年〜生活協同組合ちばコープ理事長、1991年〜千葉県生協連会長、1998年〜千葉県卸売市場審議委員。

 高橋 そうみえましたか。暮らしの変化に向き合うということを、構造として、あるいは仕事としてどう対するか。暮らしは分割できない。実感が伴っている過程を共有できないといけない。変化をせまられる今日の生活問題を、実感をもって語る女性の発言にもっと耳を傾けることが連合会次元では期待されていない反映でしょう。テーマ別、機能別にしぼり込むことが多いので生活の現実や全体性と乖離してしまう。生活と仕事の2つの現場から組み立てている発想になれば、もっと議論はかみ合うはず。でも、よかったと言ってくれる代議員の方も多かったですよ。

 今野
ちばコープの活動が確か昨年10月、朝日新聞の社説でとり上げられ、注目されました。その時の感じはいかがです。

 高橋 記者が、生協にある暮らしの変化対応と活動を、現場からつかんだ。大変嬉しかった。地域にひそむ未来に注目された。
 例えば地域の自転車教室。子ども自転車と、目の前で車がビュンビュン通る危険をどうするかという問題ですから。外に頼まず、自分たちで学校、警察、町内会に掛け合い、地域は私たちのものだと。生協の意志と地域の意志が組んだ時、初めて地域に意志が形成された。ちばコープのあっちこっちで体験している「地域育て」なんです。

 今野
もうひとつ、社説はこの10年間の大型店づくりが、違う生協路線を提起したとも。

 高橋 われわれもバブル経済から完全に離れていた訳ではないのです。組合員の願いに大きな店をつくることがあった。共同購入だけで来ていたから、片手より両手でぶらさがればいいという感じだった。そうしたら、店舗づくりの能力不足だった。それでコモ・ジャパンの中でコープこうべに学ぶということで、こうして未熟ながら5店舗までになった。

 今野
11年前のコモ・ジャパン結成には両手上げて賛成したのですか。高村会長が日本の生協発展のために蛮勇を振るったと外目には思ったのですが。

 高橋 いや、ちばコープは小さい店をもってはいたが、スーパーマーケットが必要だという認識は持っていた。ただし人材が足りない。それで店づくりとして苦労し、上向きですが現在もその最中なんです。地域に生かされているという意識に立てば、共同購入もあり、ちょっと一走りの店もある。店も共同購入もありなんです。でもね、日本全体としてみればコモ・ジャパンは、バブルの崩壊、転換の時代と重なっていた。日生協は、気づくのが遅れて2000店だ、5兆円だと絵空事を政策にとりこんでいた。事業連合の中には規模拡大、県をこえての合併のバイパス的なものもあった。
 気づくのが遅れ、従来型対応が払拭できないとすれば、その克服に全力をあげなくてはならない。単にコモジャパン云々の問題ではない。

生協のあり方への警鐘として受けとめ、主体的力量の強化を

(こんの そう) 
1939年東京都生まれ。1962年全購連入会、1987年全農大消費地販売推進部商品開発室長、1991年広報室次長、1992年大消費地販売推進部長、1994年全国新聞連に出向・参与兼論説委員、1997年協同組合経営研究所に出向・研究員、1999年全農退職、同年協同組合研究所参与 、2001年退職。

今野 次に北海道問題ですが、さっぽろ中心で、日本生協連北海道支所も噛む。いわば緩い連合の形で経営問題が起きて、全国連帯支援となったのでは。

 高橋 コープさっぽろが中心です。北海道一番をめざしそれを達成した。先進を自認し、コープこうべに次いで規模第2位に急速成長した。当然注目もされ、日生協の中でも重要な位置をしめ、副会長を出し、何かと深い関わりはもってきたと思います。
 しかし、銀行等から多額の融資を受け、主体的力量を伴わない無理な急速成長路線だった。当然ひずみを内包した。しかし気づいていても日生協の中で私も含め、公然といわなかった。内部からの批判もおさえられたという。ところがそれがふき出してトップ交替になった。長い間上が決め、下が従う構造が続いてきて、その体質は容易に変えられない。経営の悪化は続いた。全国的影響の直撃をおそれた日生協が、人材、資金の両面で重点的にテコ入れすることになり、当初、日生協理事会、総会はそれを追認するかたちで全国的支援となっていった。
 しかし真の問題は、当該生協の自浄力であり、その克服過程での知恵を学び取り、自らにひきつけて、同質的な問題はないかどうか検証することが、この問題への正しいアプローチだろう。生協のあり方への警鐘と受けとめたい。

 今野
大阪のいずみ市民生協問題は不祥事問題。部外者にはわからないところが多い。今回一応解決して第3ラウンドに入ったというところでしょうか。

 高橋 ひどい不祥事で全国の生協の信用を傷つけた。不祥事の拡大をふせいだが発覚。告発を追認した府・税務署、地裁判決があり、解雇撤回、陳謝をもって解決の方向に向かったとはいえる。いずみ問題は生協運動への警鐘だ。単に勝った負けたの問題ではない。今野さんのいう通り第3ラウンドに入った。解明の1つの視点を述べたい。この生協は社会正義を内外にかかげた。生協の社会運動の正義がトップ層から提起されれば、正しいことをいう訳だから、誰も反対はしない。それ自体に意味があれば、共感してご無理ごもっともとなる。社会運動として共に語るのに一色になりやすい。生活という別の過程を経ないことになる。相対性という違いに対してイデオロギー性という形になる。共に語ったり、行動したり、発見したり、そうした認識過程があって、初めて運動が発展するのにです。トップに集中する、トップになれば、なんでもできるという構造を生み出す。それに対するチェックがなにもない。起訴されなければいいじゃないかという問題ではない。生協にとって妥当性があるや否やの問題だ。精神的価値の問題が協同組合としては大きい。

日本の生協のすばらしい伝統を守り、街に役立つ生協へ

 今野 次に東関東事業連帯、つまりコープネットのこと。日生協コープブランドも設定すると。このネット組織にみなさんの組織も入っている訳ですから。一方、東葛市民生協との合同もある。どう展望されますか。

 高橋 生協は買う組織です。組合員は商品を買ってから、生活が始まる。そうした暮らしの世界をどう応援するか。ここで買う側、売る側の論理が一致するんです。その立場での連帯として、強化されるのは大事なのです。商品の全国・地方での結集は日本の生協のすばらしい伝統です。単協は暮らしの中でどうなったのかを、どう使われたのかを繰り返し点検しないと。さもないと買いっ放し、売りっ放し。生活が見えなくなって量だけを追い求めがちになったら危険だ。味には地方独特のものがある。鴨川地区の商品も浦安地区の商品もある。おいしい農産物なんか、1つではカバーできる訳がない。日本の商品社会の中から共同購入に乗せる商品の絞り込みも必要だ。事業連合がこれです。東葛市民生協との合同は全組合員による投票を経て11月30日から発足する。大勢の力で一人一人、あの街この街に役立つ生協にという目的だ。みんなから千葉県に生協があってよかったといってもらえる生協にしたい。

地域の交流が一杯できて組合員や地域住民に魅力ある生協へ

 今野 千葉県内のことを最後に−−。カルフール出店は影響ありますか。

 高橋 あるでしょう。ただ、うちは20%生協の段階だから。天井は高い。生協は競争は無視しないが、何が組合員にとって魅力かを徹底することで競争をこえていきたい。協同組合の優位性を実証していきたい。

 今野
千葉県の生協と農協の関係も、期待したレベルに達してないと思いますが。

 高橋 地域の空洞化に対して、住民も、生産している人もこのままの垣根のままではいけない。
 暮らしのあるがままで、そこに新住民と旧住民の農産物などの交流が一杯できている。おしゃべりが始まれば、垣根が取れますよ。1つ大きな全体性に立つ仕事ができるかどうかにかかっています。

 


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