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シリーズ 生協―21世紀の経営構造改革−−2

生協事業の新たな展開
男女共同参画の組織へ

神奈川ゆめコープ理事長
金子朝江氏
に聞く

インタビュアー : 元(財)協同組合経営研究所 研究員 今野 聰

 2000年4月から新生協はスタート。現在組合員8.5万人、供給高216億円。「ジェンダー(社会的性差)問題にどうこだわって、夢を協同組合で実現しようとするのか。じっくり聴いてみる(今野聰)。

静かな総代会  個配事業の影響も

 今野 そもそもはっとした名称の「ゆめコープ」。その意味をかいつまんで説明すると?

 金子 組合員さんから「ゆめコープ」という名前は挙がっていた、が、選考委員のなかでは候補もれでした。候補名は今風のおしゃれなものでした。それがしっくりこなくて、落ちた中から再度選び直しました。決まってからの職員の反応はすこぶるよくなかった。恥ずかしいと。でも1年前、日本経済の出口が見えないとか、ドシャブリだとかで、かえって人が生きていくのに、夢がある方が良いじゃないかと。未来が見えるような、そんな組織でありたい。かえってこの名前で良かったと。頭が「神奈川」と漢字で決まっていたので、平仮名で「ゆめ」としたんです。

 今野 暗いニュースばっかりだから、なんとなくいいですね。ところで今年の総代会の特徴はどうでした。

 金子 私としては満足していない。あれが実態ではありますが。結局おとなしい総代会なんですよ。総代の選出方法にも課題ありですね。組合員の拡大の仕方と関係してます。チラシ、広告などによって拡大した後のメンテナンスをしていない結果でしょうね。組合員になった後、辞める人も多い。生協が何なのかを分からないで辞めていく人が多いのです。

 今野 そうすると組合員教育とかルールづくりの問題が出ますね。

 金子 個配組合員としての広げ方が、さまざまな活動とか、総代会の中に静かな形になる要素を持っていて、それは課題でしょうね。

 今野 それじゃ1年に1回対面総代会というのじゃなくて、一挙に変えて、インターネット上でバンバン意見を交換するなどの検討はあるのですか。

 金子 検討したことはあります。ただし採決方法とか、生協法上に問題もあります。パソコン利用の組合員活動は現在も盛んに行われてはいるんですよ。でも法律改正をせよとの意見は無いですね。

 今野 理事長と生の意見交換をしたいとかの希望はないのですか。

 金子 それも大切ですが、組織の中に仕組みとして反映させることが大切だと思います。

 今野 そうすると、インターネットだ、個配だと言っても、そもそもどのようにして意見交換、協同行動をするかという課題が大きく残っているのですね。

 金子 そうです。理事会メンバーはみなさん、インターネットで意見交換するとか、組合員活動にもインターネットは相当普及していますが、まだツールとして使っている段階です。

個配事業論の構造改革をどうするか

(略歴)  かねこ・あさえ 昭和63年けんぽく生協理事、平成6年けんぽく生協理事長、4年〜8年神奈川県連理事、6年(首)コープ事業連合理事、12年合併により神奈川ゆめコープ理事長、同年21世紀コープ研究センター副代表として現在に至る。
 今野 さて個配事業が「個人を大事にする」という考え、本当にそうなのだろうか。

 金子 個配事業をやるやらないに関係なく、個の時代に入ったという認識です。そこでゆめコープと私たちが加盟している首都圏コープ事業連合が、事業として個配事業を確立しているかという問題なのです。生協の個配事業経営論としては確立していない。店舗政策を詳しく知りませんが、生協店舗政策も確立していない。

 今野 店舗政策を確立したはずなのに、そうでなかったというのがこの間の論調でしょう。

 金子 そうですね。それに個配事業経営論がすごく似ていると思う。生協なのだから、運動と事業がどのように数値化されているかがなくて、経営論じゃないでしょう。そうすると、事業と運動をどう評価するか。これが、日本の生協運動に明文化されていない。たしかに事業は拡大した。店舗を利用する。でも店舗での運動参加の方法は確立していたのか、疑問です。スーパーとの違いみたいなものです。個配も同じで、一時は生協事業が伸びる。その先は駄目ということになる。運動と事業を作り込めずに、安易に走ってしまうのです。でも全くないではない。首都圏コープで一緒に3媒体(子育て層〜「ヤムヤム」、子育て終わり層〜「キナリ」、中心層別のカタログ)から、5媒体位に発展する。そこに関わる組合員さんの個々のデータを蓄積する。その暮らしぶり、生き方をとるということが可能になる。あとは届ける人とのコミニュケーションをどうするかです。こうして個配事業は運動論まで含んだ経営論になりえるのではないかと思います。

 今野 個配組合員には、組合員が運ぶものなのか、あるいは職員か。またはアウトソーシングといって個配業者に委託するのか、そこはどうも整理されたように思えないのですが。

 金子 外部委託は、ゆめコープにとって急速拡大の1つの選択でした。しわよせがそこに行く。スーパーマン的に生協人を育てられる訳はない。かといって生協理念を、運ぶ人に託するのも本当は難しい。今までは任せてきたが、そうであってはいけない。組合員さんとの会話、コミュニケーションがどうなっているかが生協の基本問題です。届けるだけでは駄目。

 今野 そうすると、個配物流体系全体としてどのように改革されますか。

 金子 業務委託であっても、組合員ニーズに応えられるように教育する。そこまではやります。あとは30%ほど自前でこなす。そのため物流センターを作る。今年から切り替えてプロパーである程度まで運ぶ仕組みにします。地域マネージャーがニーズを掴んでくるという経営構造改革を行うのです。
 そのための職員教育のプログラムを作りました。将来20万人、5%組合員を想定して、職員がどう地域に関わっていくかということです。そうすれば手渡しによって、ドライアイスの経費削減だって可能。配送時間指定もOKとなります。つまり経営コストダウンです。
 8つの配送センターとセンター長、副センター長の新たな役割教育と3媒体との関係も含んでです。

 今野 3媒体方式との関係を聴きたい。つまり採用された商品が、3媒体に散らばっている感じでさほどの魅力を感じない。それを5媒体にして完成するのか、3媒体のなかで精選していくのか。果たして生協らいしいものになるだろうか。

 金子 商務力とか、斬新な企画力とか、生協の課題があります。例えば世の中には無印の自動車開発挑戦とか、ユニクロとか、すごく安くて魅力的な開発努力がありますね。だからプロパ―職員に対する組合員の叱咤激励、アイデア提供が必要ですね。生協というブランド力で行こうとするから、ちょっと価格が高くなるのです。

 今野 無印ブランドは西友のブランドになっちゃったね。農産物ブランドは年間53週に、どう座るか。例えば夕張メロンでもいいのですが。

 金子 連合会グループでは、産地ブランド政策があります。感性があえば高くても買う。例えば新潟県JAささかみ。お楽しみキャンプには行ったが、田植えと草取りには行けない。これをちょっとした仕掛けで、今年400名参加になった。子どもの田植え経験と世間の子ども問題の難しさがどう重なるか。食べること以外に、子どもと農業とを結ぶことによって、参加が増えるのです。これを首都圏コープ事業連合加盟の各単協でもつくろうとなったことなどです。

 今野 それで従来の産直論のコスト評価を越えられますか。

 金子 そこは交流基金の積み上げを活用する。負担無くできる。町との契約もあります。新潟県笹神村との場合は循環型村づくり全体との関係ですから。大豆から味噌へ。今度は豆腐工場をつくって送ってもらおうとなったのです。

 今野 あんな遠くから持ってくるのですか。

 金子 私たちの総合産直は途上ですが、物の本質を見て体感する。個配に通じるのですが、「個の自立と選ぶ力」を付ける運動なのです。

事業連帯と単協 独自性をどうする

 今野 これからの首都圏コープ事業連帯へ何を期待しますか。

 金子 一定の規模になってきたので、単協の自主性が出てきました。でも協力して取り組むしかないと思いますよ。ただし独自性の部分も必要です。

 今野 単協単独開発という意味と理解しました。そういう道を認めろということですか。

 金子 そういう選択肢がある事業連合になろうと。連合と単協は委託関係という整理です。独自部分が発生しても問題はなしです。テンデバラバラではないのです。課題別対応ですね。

「ジェンダー」とは

 今野 つぎにみなさんのいう「ジェンダー」問題。どうもこの言葉がなじまないので聴きたい。

 金子 1960年代後半のベトナム戦争時、私はアメリカの反戦運動が印象に残った。女子高校卒業後、女性の多い職場経験があった。そして生協。ここが組合員主体と協同なのに、男女協同がなされていない。日本の社会の仕組みそのものですね。男は経営、女は参加と運動。組合員の側にも問題は大ありです。自分で責任をとると言わなかった。貴方任せ。生協は経営参加の中にジェンダーの視点を運動として世の中にアピールするべきです。

 今野 日本生協連総会での感想は。

 金子 経営が大事なのはわかるが、目先のことばかり議論することがいっぱいあるのに、低調ですね。経営論を学んでいる女性はいっぱいいるのに。“女だから論“がまだまだあるからですよ。そこを変えないと。

県内提携の方向は

 今野 では最後に県内での農業・農協とはどう提携を進められるのですか。

 金子 小田原にあるジョイファームという生産者団体などとの関係づくりです。行政も参加し、そこでクラインガルテンをやるとか、滞在型で、子ども達の料理体験が可能になるとかです。また今年米の予約が140%になった。岩手・東和町なんかもそういう関係になるでしょう。



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