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シリーズ 生協―21世紀の経営構造改革−−3

多数の支持集める生協へ
小型店だって大事にして

コープとうきょう専務理事
上原正博氏に聞く

インタビュアー:協同組合経営研究所元研究員 今野聰

 全国生協の雄として「21世紀をあゆむわたしたちの10年計画」を決定。2001年度計画、組合員77万人(前年比105.6%)、供給高1361億円(前年比100.6%)で、着実に事業展開を進めている。競争激化の中、改革の中身とは何か、そこを聞く(今野)。

新専務としての抱負は?
(うえはら まさひろ)昭和25年生まれ。昭和49年戸山ハイツ生協入職、55年都民生協入職、平成2年物流部長、4年店舗企画部長を経て店舗運営部長、9年理事・小型店運営部長、11年常務理事・企画管掌、13年専務理事、コープネット事業連合常任理事。

 今野 山下俊史さんの後任専務として、この難局を凌ぐ抱負を聴きたい。

 上原 ともかく緊張の連続です。やっぱり新任務は違います。山下さんのように切れ味鋭くはいきません。

 今野 前2代トップは東大生協出身。上原さんは早稲田大学生協出身。どこが違うかなとの期待もあるのです。

 上原 キャラクターは本来別々。でも学閥は全くないので、実際の運営ではそういうことを全く意識しないですよ。店、共同購入の現場。開発の仕事、物流の仕事が長く、商務業務でなかったという程度の違いでしょう。

 今野 昭和50年代末に亡くなった桐原理事長は、理屈に拘らない人。あの人の影響はありますか。

 上原 1978(昭和53)年に旧戸山ハイツ生協と合併したのです。桐原さんが旧都民生協の創業者。このコープとうきょうをロマンで作り上げた世代です。この間300人の幹部会があったばかりです。そこで田中前理事長(非常勤)の歴史経験の話があり、いまや店長クラスは歴史を実感では知りませんから有意義でした。

100万人生協はどんなイメージか

 今野 合・合(ゴーゴー)を積み上げた組織だから大事なことですね。そこで桐原さんの時代から言われた「多数者の生協」いうイメージを、ここでもう一度紹介してもらいたいのです。

 上原 90年代の目標も100万人を考えていたんです。91年に東京生協と合併して名称変更。「コープとうきょう」となりました。そのときが47万人で、100万人組合員組織化を掲げたのです。

 今野 私が全農で営業現場に戻ってきた時でした。私に実感はなかった。登っていく勢いは感じていたけどね。

 上原 73万人が今年のスタートです。500万世帯の東京は単身者世帯も多いので、実質350万世帯程。これだと3分の1の目標になる。実質北海道、宮城県レベルの組織率に近づくというイメージです。都内地域生協を合算すれば、すでに東京都生協連の数字だと21%の組織率。だから100万人の目標という訳です。桐原さんの言った「大規模小集団の確立を」を思いだしますよ。いまはああゆう難しい表現はしませんがね。つまり都内の大多数の人に支持される生協です。過去10年間でできなかったことを、この10年間で達成しようということです。それを敢えて「都内100万世帯組合員と、それにふさわしい生協」と表現したのです。事業高と書かずに、事業は100万人にどういう事業がふさわしいかと、積み上げ討議した結果です。組合員さんの表現で、こういう事業であって欲しいというまとめ方です。

 今野 この中に「日本一の共同購入を目指す」があるので、その意味は?

 上原 個配を含めた共同購入の事業規模で、日本一ということですね。個配は都内で、東京マイコープさんが早くから取り組んだのですが、今年中に、この分野もトップになるだろうと。都内全域で世帯数も圧倒的に多いので、最も効率よく事業が進められる。個配はやろうと思うとどこもできる。事実インターネット生協が立ち上がったくらいですから。どんな商品が提供できるかが、最後の帰趨を決めるのです。

 今野 有機専門事業体が活発ですが、夜間配送、時間指定、冷蔵冷凍区分、紛失防止対策とか相当進んでいる。それらとの対比ではどうですか。

 上原 1週1回で扱い品目1300アイテムという商品の力がまずある。バラエテイー商品も扱える。CDとか本とか。食品の安全性からいっても負けない。個配の仕組みをもっていることによって一層強くなる関係です。

小型店を大事にする

 今野 関連して小さな店を頑張って強くしていくという方針は。

 上原 生協だから小型店を手がけた以上大事にするという意識がある。でも95年に閉店基準を出した。経営計数をクリアできないときは、頭下げても、組合員さんに説明する。何店舗か閉鎖問題対象が出ました。それでも店はそれぞれ拠点です。どんなに大きな経営規模になっても、その店が潰れたら何にもならない。ここにきて人口の都心回帰も出てきた。改めて小型店のあり方問題が出てきたと言えます。12月にかけて23区内の100坪前後17店舗の見直しです。そして150坪店規模に普段の暮らしに必要なものを揃えられるようにする。組合員さんの信頼をこの店に寄せられるということです。

 今野 そうすると、コープかながわの小型店(KM店)とか、コンビニ店にまで進まないのが不思議なんですがね。

 上原 当時小型店区分が70店の時、コンビニ問題を論議しました。このコンビニ業態を調べると、とても70店程度では成り立たないと分かった。仕組み産業で、本部が圧倒的に儲かる。それをうちの職員が24時間働いていけるだろうか。ただし24時間型ですぐ食べられる商品開発は重要だとなった。それを小型店強化に要素として取り入れた。今度JR板橋駅前に12月に移転開店予定の150坪に少し足りない店は、23時まで開いて、商品として惣菜とか鮮魚のインストア部門を強化する構想です。

コモ・ジャパンに参加した意義

 今野 そこで、21世紀経営構造改革として、店舗近代化を目標にしたコモ・ジャパンに10年間入ってきた問題を聴きたい。SSMといったって、皆さんは3、4店舗ぐらいでしょう。

 上原 都内地価からみれば、標準化してきた300坪以上500坪くらいまで転換ができてそれに見合った商品力が付けばいい。SSMでは生鮮のノウハウとか惣菜のレベルアップとかがテーマだから大いに参加する意味はあった。だから例えばコープかながわのSSM店(ハーモス)はがんばってやっているというのが当時の感想でしたよ。

 今野 でもハーモスの700坪店規模を追っかけませんでしたね。自制したのですか。

 上原 たしかにそうです。この本部下の店だって、かつて家電、衣料をやった。全然駄目でこのジャンルを撤退した。つまり痛い経験をしたのです。それでコアになる商品分野をちゃんと確立しようとした。最後は生鮮品、日配品などの強さです。建物だけならお金をかければできるのですから。中身がなければ破綻して潰れるのですから。

 今野 そうすると、SSMの一般チェーン店舗が皆さんの店をぐるり取り巻いているが。

 上原 まず新規出店を考える。いい物件は取り合いですから。それでも競合店は必ず近くに出てくる。その際地域一番の味、うまさ、鮮度の店を目指すこと。さもないと安定した経営はできない。最近増えている地域産直コーナーのようなもの。バタバタするより、組合員さんのニーズをとらえることです。

社会運動はどう展開するか

 今野 コープネット事業連合4800億円に事業結集する一方で、社会運動を手抜きしていないかという批判があるのですが。

 上原 一言でいえば「生協党」として活動するということ。人と人との繋がりは組合員が信頼する商品を通してです。だから環境問題に関心が広がるし、そういう認識になるように絶えず注意する。そうすれば、政治とも無縁ではない。日生協と一緒の食品衛生法改正運動も最後は政治です。そこは避けない。ただ主張がイデオロギーではなくて、最終的には商品とか、普通の暮らしを原点にした立場です。ですから1300億円を超える事業規模では、相手が全政党になるのです。どこかの党に傾くことはあり得ない。

日本生協連に注文する

 今野 北海道3生協への支援、不祥事など、日本生協連に注文は。

 上原 やっぱり、この10年間、経営構造改革が遅れた。しなければならない意識が足りなかった。共同購入の班は完全に減収傾向になった。班配を重視しても個配を積極的に展開する。店は採算店、不採算店をきちっと判断する。次は人件費構造の見直し。うちも遅れたのです。この10年間スーパー業界に比べて上がった。つまり甘さがあった。業績評価と人材育成という課題。配分の仕方についてメリハリをつける。ナショナルセンターとしてはもっと早く進めるべきでしょう。いずみ生協問題は、大阪の地区割り定款に元々問題があった。大阪が最終的には決める。事業連帯も当然割り切ってやる。そういう関係を早く全国化したいですね。

東京都の農業・農協との提携は

 今野 最後に都内農業との提携を聴きたい。金融農協が多いのですが。

 上原 全国レベルでは、各地農協とそれこそ、日本中提携している訳です。都内について近郊野菜はどこのスーパーでも店にコーナーを作ってやっているのです。うちも一部店舗で実験的に展開しています。商品だけでなく、環境対策では店の生ゴミを堆肥化する。それを近在農家に送り野菜に使って、できた野菜を店舗コーナーに並べる。東京都の補助で成り立っているのが実状ですが、さらに拡げたい。キーは環境ですね。





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