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シリーズ この人に聞く 参議院選挙・農政の焦点――2

   

主食用穀物は完全自給すべき

自由党衆議院議員(党国会対策委員長・国民の食料確保のための農業再構築委員会委員長) 山岡 賢次 氏

  聞き手: 後藤 光蔵 武蔵大学教授


 自由党は、今度の参議院議員選挙で党として初めて農業政策を公約として打ち出す。とりまとめにあたった同党の山岡賢次衆議院議員は、農業政策は「国民の食料確保の観点から考えるべきだ」と強調し、主食用穀物の100%自給、減反制度の廃止、余剰米の政府による買い入れと備蓄などを掲げている。

◆食料自給に政治は最大の関心を

‐‐具体的な政策を伺う前に食料、農業に対する基本的な認識から聞かせていただけますか。

 「21世紀は自由な個人を尊重する時代、つまり、お上の統制や政治の思惑で動くのではなく、個人が伸び伸びとやっていけるようにしなければならない。
 そうなると一人ひとりの、いわば人間性を大事にしなければならなくなる。21世紀は大きな枠組みで言えば人間性の時代になるわけで、それを守るための政府の役割は何かと考えなくてはならない。やはり環境、福祉をどう守るかであり、そして、食料については、今までとはまったく別の枠組みで考えなくてはならないとわれわれは考えています。21世紀には食料がなくなって飢えてしまうという現実もあるかもしれない。人口も増加し、環境も悪化していますからね。そういう認識のなかで食料と農業を位置づけるべきだということです。
 そこで自給率が問題になる。先進国は自給率向上にかなり前から必死に取り組んでいるわけですよね。ところが日本は40%。これは、だれがどう考えたっていいわけがない。今みたいにお金があって買える時代はいいですよ。しかし、お金がなくなったら買えなくなるわけだから、食料の自給に政治は最大の関心を払わなくてはいけないんです」

‐‐基本計画では自給率目標を掲げていますが。

 「たしかに、10年後の自給率45%を目標とする、と言っています。しかし、目標とする、という言い方は、達成しないと言っていることと同じ。だから、私は基本計画はまったく評価しない。ただの建前だと思う。
 農業政策の最大の欠点は政治が建前をずっと言い続けてきたこと。農は国の礎でございます、農民は国の宝です、とね。それなら、そのとおりやったらどうだと私はいつも言ってきた」

‐‐では、自由党としてはどういう政策を実施すべきだとお考えですか。

 「基本は、農業というよりも食料の確保という位置づけで政策を考えることです。つまり、農家の方のいわば商売のための政策ではなくて、国民の、われわれの子どもや孫たちの食料をどうするのかという観点から政策を考える。
 その基本に立ち、わが党は公約として、まず主食用穀物自給率100%をめざす、を掲げました。国家として、30年先を考えると食料は自給できる体制にしないと国民は生きていけない。これはあらゆることに優先する。金さえあればいくらでも食えるという今のような時代が永遠に続くなんて思ったら大きな間違いです。それを考えると主食用穀物の100%自給は国家の最大目標にしなければならないということです」

◆価格政策で農家育成を

‐‐実現に向けた具体策を聞かせてください。

 「これを実現するためには、減反などしていてはできません。だから、減反制度は直ちにやめるということになります。
 ただ、それをやれば今は米は余りますね。だから、余った米をどうするのかということになりますが、われわれは余剰米は備蓄すべきだと考えています。備蓄は金がかかると農水省は反論するが、それは今の状況での備蓄だからですよ。飢餓状態のときのための備蓄ということになったら、籾のままで冷凍保存しておけばいい。しかも一回設備を作ってしまえば、あとはランニングコストだけです。
 今、構造改善事業に1兆円以上を使っているわけでしょう。しかもそれだけの予算を使っておいて、農家の負担はある。百歩譲ってこの事業を認めるとしても、土地改良によって生産性が上がったとたんに減反しろ、です。これはお金の無駄使い以外のなにものでもない。
 なぜ、そんなことをするのか。土木関係者が儲かって政治家も儲かるからですよ。それを農家のため、農家のためと言っていて、では、農家のためになったのか。
 それなら、その予算を使って備蓄設備を整える。そのうえで米は全部作っていいですよ、とする。よしんば余ったら、農業者が生活できるお金で政府が買い取り備蓄に回せばいい。私は1俵2万円で買えばいいといっているんですよ。これを今言うと票集めのための大盤振る舞いと思われるが、米不足の時を考えてみれば、あのときは4万円、5万円などという値段になったじゃないですか。だから、今余っていて、2万円で買い取れる間に政府がどんどん買う。政府が2万円で買い取って備蓄を始めれば自主流通米の価格もどんどん上がるでしょう」

‐‐そうすると政策としては、とくに主要食料についてはやはり価格政策をきちんとすべきという立場ですか。

 「農水省が、麦を生産しよう、トウモロコシを生産しよう、というなら、圧倒的に高い価格政策で育成することですよ。
 採算に合う農業にするにはどうしたらいいかというのは、通産省的発想です。食料は採算に合わない。安全保障は採算に合わない。逆に言えば、農業も採算に合わせる商売でなければならないとなったら、日本は飢えるんだということです。  土地改良事業についても、公共性が高く必要な部分はあるわけで、それは国家ベースで行うが農家負担はゼロにすべきです。それはなぜなのかといえば、国民の食料を確保するためだからです。
 今は、農家が儲けるために国がやってやる、だから自分だって負担しなさい、という発想。ところが、発想を変えれば、国が国民の食料をしっかり確保できるようなほ場を整える、施設を整える、だから都市の人たちから集めた税金でそれをしっかり作る、農家が負担するなんてもってのほかだ、ということになりますね。そういう基本的な政策のスタンスを変えるのがわれわれの考える農業の構造改革なんです」

‐‐セーフガード発動についてはどう評価しますか。

 「われわれの発想からすれば当然発動すべきです。担い手がいなくなってしまえば食料生産ができない。都市の人たちが農業できますか。だから、都市の人たちの食料を確保するために農業技術者を養わなければならない。農産物は食料であって、品物ではないんだという位置づけだからこそ発動すべきだということです」

◆WTO協定通り食料を買っているのは日本だけ

‐‐WTO農業交渉に日本はどう臨めばいいと思いますか。

 「食料の自給は日本の将来がかかっている、これを自分たちも認識しなければ相手も納得しませんよ。いざとなったらお金で買えばいいんだというのでは信用されません。だから、交渉に臨む前にしっかりとした農業政策を打ち立てること。その上に立って交渉に入るべきです。
 それから現在のWTO協定について言いたいのは、日本に買い入れる義務を負わせながら、では相手に売る義務を課しているのかということです。今は片務契約ですよ。買う側は必ず買わなきゃだめ、しかし、相手は食料がないときは売る、売らないは勝手だということになっている。必ず買わなくてはいけないというなら、その代わり、食料が不足しても必ず売るということを約束しろ、と。そうでなければ買わない。こういうことは外交でできるんですよ。第一、WTO協定どおり買っているのは日本だけです。他の国にはありません。日本は政治が不在なんです」

‐‐現在、議論されている構造改革とは、自由主義経済の論理が通るようにさまざまな分野を改革していこうということだと思いますが。

 「小泉内閣の言っている構造改革と、われわれが食料、農業政策で言っている構造改革とは、言葉は同じでも似て非なるものです。あの人がやろうとしているのは応急措置。新たな農業経営所得安定対策もその場しのぎのモルヒネのようなもの。これで構造改革になるだろうという程度の認識でしかない。しかし、あの対策で後継者が育つとは思えませんね。
 構造改革とは位置づけを変えることです。現状を否定して新たな体制に移ることだ。新世紀維新などというなら、いちばん大事なのは飢餓との戦い、食料問題です。
 私は、一億総農業主義なんですよ。食料安保と口で言うだけではだめで、いざとなったら自分で食べられるだけの畑をみんな持つべきだと思っています。都会で農地が持てなければ田舎に持てばいい。これは趣味というだけでなく将来に対する保険でもある。いざとなったらそこを耕して食べ物をつくるぐらいのことを考えておかなくてはならない。それほど農業、食料の位置づけを考えることが求められていると思っています」


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