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シリーズ 2002コメ改革
米政策の再構築を考える


安心システム米をコメ流通の柱に
全農パールライス事業
JA全農 松本一成米穀総合対策部次長に聞く

 生産調整研究会の「中間とりまとめ」では、売れるコメづくりや流通の見直しがこれからの大きな課題として取り上げられている。そうしたなかで、「全農安心システム米」のもつ意味と、これからの課題について、JA全農米穀総合対策部の松本一成次長に聞いてみた。

◆生産から加工・流通まで、すべての情報を消費者に

松本一成氏
松本一成
米穀総合対策部次長

 ――最近、おコメの流通を見直すということがいわれています。そうしたなかで、「全農安心システム米」を事業の柱にして進めていこうとされていますが、それはなぜですか。

 松本 いろいろと政策論議がされていますが、基本は作る人がいて買っていただける人がいる、その間が機能すれば流通はうまくいくと思います。
 とくに食品の安全性について問われるような問題が次々と起き、消費者の信頼が薄れてきていますから、このおコメは、どこで、どうやって作っていますよ。そのおコメをこう精米しこういう製品になっています、ということをキチンと整理してお客様に分かっていただいて、買っていただけるようにするのが、一番の課題だと思います。そのことで、一方的に「食べてください」というのではなく、食べていただける環境をつくることだと思いますね。そこの橋渡しをするのが「全農安心システム」だと思っています。

 ――すべての情報をキチンと消費者に伝えることが、重要だということですね。

 松本 パンもあれば麺もあるなかで、おコメを選択していただくためには、産地や流通の情報をキチンと伝え、消費者に知識としての情報をもっていただき、選択していただくということが大きなポイントになるのではないでしょうか。コメの世界はそういう情報を消費者に伝えることが少し足りなかったのではないかと思いますね。

 ――そのおコメのなかでも安心システム米もあるし、価格の安いコメもありますね・・・。

全農安心システム情報の流れ

 松本 選択の幅は広がっていると思いますが、最後は食べて安心ですというのが強いと思います。基本にまず安心があって、それに価格とか味がついていくのだと思いますね。
 「全農安心システム」で作るおコメは、生産方法から加工・流通までを、消費者の要望を聞いて基準を設定し、その履歴情報を消費者に提供していくことで、消費者に産地を分かっていただき、物流や加工・流通も分かっていただくことで、安心して食べていただこうというシステムです。ですから、産地で生産され、精米され消費者の手に渡るまでがワンセットになったシステムです。
 つまり、いまお客様が何を考え、何を欲しているのか。それに対して、産地から精米・流通を担当する各パールライス会社までが、どう応えていけるのかと考えたときに、いきついた結果が「全農安心システム」だったわけです。

◆生産者と消費者の橋渡し役をJAに期待

 ――消費サイドと作り方まで相談するわけですから、今までとは産地も変わらなければいけないわけですね。

 松本 いままでは、自分が作りたいものを作り、流通させていたわけです。ところが今度は、お客様がいて、こういうおコメを欲している。だからこういう形で作っていく。そしてお客様とのパイプをつないでいく。こういう仕組みに変わっていかざるをえないのではないかと思います。
 「全農安心システム」では、買っていただける方が10人います。作る人が3人います。この3人の方はこの水田面積の中で、お客様の要望に応えたこういう作り方をしたおコメを提供していきます。こういう形の流れをつくっていきたいということです。

 ――そういう意味で「全農安心システム米」を核にしてこれから事業をすすめていく・・・。

松本一成氏

 松本 生産者の方と一緒にやっていければ、核となる可能性もあるわけです。
 「全農安心システム」の一番大きなポイントは、生産者の方と一緒になって、生産現場から取り組んでいくということです。農薬はこういうものを、肥料はこういうものを使いますよ、できあがったコメについては検査もします。そのことを消費者の方に分かってもらえれば、自ずと長い間、おつき合いいただけると思います。
 そうした流れをJAグループとしてキチンと整理をして、一緒にやっていだけるものにもっていくことが、大きなポイントだと思います。計画外とかいろいろありますが、コメを作っている人はみんな仲間ですから、みんなが一緒にやっていけるものを示すことが大事だと思います。そうすることで、消費者の方にも分かっていただけるのではないかと思いますね。

 ――栽培履歴の記録とか、生産者も努力が必要ですね。

 松本 栽培履歴を記録することは、たいがいの生産者の方はされていると思いますね。ただ、それを表現する方法がなかったわけです。
 「全農安心システム米」でそれが表現できるようになるわけです。そのことを分かっていただくのも、私たちの仕事になるわけです。

 ――そういう意味では、集落営農なり組織のできているところの方がやりやすいですね。

 松本 そうですね。でも、個人の方も思いは同じだと思いますから、JAがこういうことをやってみませんかとキチンと問いかけ、橋渡しをしていけばそんなに難しくはないと思います。むしろ、消費者にこういうことをやっていますよと情報を流すことの方が難しいかなという感じですね。

◆全国のパールライス会社のレベル向上も「品質管理委員会」の役割

マーク
 
認証されたコメには、「全農安心システム米」のマークが。現在、12産地、6工場が認証されている

 ――情報開示では、全農のホームページなどインターネットも活用していますね。

 松本 インターネットの一番の魅力は、双方向だということですね。現在はまだお客様に訴える手段ですから片方向ですが、見ていただいたお客様の声を産地にフィードバックできるように、もう少し工夫をしなければいけないと考えています。双方向性を活かし、作った人と買った人のいろいろな意見が交換できるようになるところまでいければと思っています。

 ――おコメの場合には、物流や加工段階で、分別して仕分けされ管理されないといけないわけですが・・・

 松本 そうです、トラックもあれば、倉庫や精米工場の問題、工場からお店への配送の問題をキチンと消費者の方に分かるようにしていくのは、難しい課題です。そのために安心システムでは、認証機関を設けてありますが、そこでは産地での栽培履歴だけではなく、倉庫や精米工場を含めてキチンと流れていくようにチェックしているわけです。
 とくに工場が重要です。精米工場ではさまざまなアイテムのコメを作っていますから、確実にこのコメがこの原料から作られたということが特定できなければいけないわけです。とくにいまは表示問題について厳しくなっていますから、これが最重要課題だと考えています。

 ――そのために「パールライス品質管理委員会」を設けたわけですね。

 松本 表示の問題ももちろんあります。もう1つは、JAグループの米穀卸会社はいま全国に38社あり、同じ「パールライス」というブランドで販売をしていますが、会社によって、工場によって品質が違います。
 コメの品質は一言でいえば「作り方」だといえます。各会社や工場が同じような作り方をしていけば、同じような品質でできてくるはずです。その作り方のレベルを上げる必要があります。
 そして、精米工場は外からみて分かりにくいわけですが、それをどうしたら分かりやすくできるのか。消費者がみて納得していただけるような作り方をし、どこの会社にいっても同じような説明ができ、同じような製品ができるようにするのが「品質管理委員会」の仕事でもあるわけです。
 食品の場合にはとくに、中身がキチンとしていないと消費者の方に安心してお買い求めいただけないので、これが一番の基本だと思います。

◆すべてのコメに広げ日本農業を活性化

 ――これからどう「全農安心システム米」を展開していきますか。

 松本 13年産米はおよそ5000トンで、14年産米では1万トンを計画していますが、このシステムがいままでのと違うところは、産地から消費までの全体の流れを1つにとらえて、それぞれがキチンと仕事をしていかないと完成しないということです。作るところから食べるところまで、一貫してできるのは、JAグループだけですから、安心システムはJAグループの特徴を活かしたシステムだといえます。そのことをお客様に分かっていただければ、大きな信頼関係が生まれると思います。
 作る人、精米する人、運ぶ人、売る人、そして食べる人が、一緒に参加してもらい、いろいろな意見を出してもらって、悪いところがあれば、どんどん直していく。分かりにくいところは、分かりやすくしていくことで、よりよく発展させていくことがこれからの仕事だと思います。
 そして、食にとって安全性は一番重要なことですから、日本中の全部のコメに広げたいですね。そのことが日本の農業を守り、活性化させることになるのではないかと思っています。

「全農安心システムとは?」
 量販店など消費サイドと産地が協議して決めた基準にもとづいて生産され、その生産・加工履歴はすべて記録として残され、検査・認証される。その記録をたどれば市場に出回ったおコメが、いつ、どこで、誰が、どういう方法で生産・精米したのかを追跡調査できることで、消費者に「安心」を届ける仕組み。




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