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シリーズ 「再生21」への挑戦―コープこうべ

生協店舗の未来

今野 聰 元(財)協同組合経営研究所研究員


新しい独自ブランド「COOP'S」
新しい独自ブランド「COOP'S」

 すでに生協の店舗業態区分は紹介した。主要業態について、売り場面積の平均規模推定と総供給高を事業報告書から転記しておこう。
 シーア・コープデイズ:11,000〜6,800m2 508億円
 コープ:5,900〜530m2 1398億円
 コープミニ・コミュニテイコープ:200m2 142億円
 コープリビング・コープホームセンター:86億円
 参考:共同購入:749億円
 このうち、1993年にオープンしたコープデイズ神戸北町店(三階建て、売り場面積8,744m2)を見学することになった。
 「デイズ」とは、「組合員さんに毎日店舗をご利用いただく」という意味を込めたと店長は言う。年間90億円強の供給実績は、かつて100億円であったという。だから苦闘しているのだろう。ローカル・スーパー、ナショナル・チェーンなど地域競合店名も挙がった。一階売り場は当然の如く、食品中心。平日午後の閑散時間にもかかわらず、まずまずの利用だった。野菜コーナーに環境と共生する「エコファーム」(後述)の看板とトマト、南瓜などの商品説明がたっぷり。力の入れ具合がわかる。そっくり、地場野菜の展示コーナーでもある。さらに「フードプラン」商品と生協独自ブランド「Coop's」商品(昨年四月デビュー)。日本ハム問題の渦中だったから、製品は売り場に全くない。以前は五割を占めていたという。他者の特売マネキン(販売応援員)の声があった。二階が日常雑貨、三階には家具など大物類に、本の代表的大型店舗「ジュンク堂」まであった。
 独特の運動として、「マイバック運動」の説明があった。ポリ性のレジ買い物袋を節約しようという運動である。全国に少なくない事例でもあるが、これはこの生協の資料による。1978年から再利用運動を始めたというから古い。2000年からは5円で購入してもらう。市町村の有料条例化づくりとも連動する構えだ。かくて生協全体では2001年度持参率72.5%(内北町店73.6%)、使用枚数32,097千枚(661)、節約枚数84,730千枚(1,844)、代金80,007千円(2,401)という。膨大な業績であることは確かだ。参考に東京都杉並区がつい9月13日に「マイバック等持参状況調査」結果を発表した。これによると、24.1%が持参・レジ袋辞退者である。区の期待削減目標20%をはるかに超えたことになる。かくてコープこうべらしい実績だ。いくつかの生協リユース(再利用)も率は高い。いかに組合員の店利用が、一般消費者の利用と違うのか、その実践でもあろう。
 さて最大の問題である店舗競争力。店長は実感として苦闘の様を語っていた。それが全般的傾向だからこそ、「再生21」でもあるのだろう。駄目なら辛い閉店となる。ここは再び小倉組合長発言を冊子から引用しよう。
 「気がついたときには、ローカルスーパーにまで[コープこうべをつぶせ]と言われるまでに、旧式な店舗や無店舗の営業になっていたわけである」
 「周りからおだてられて慢心し、革新を忘れた惰眠をしていたと自戒せざるを得ない。[営業力は三流のくせに、傲慢で失礼なコープこうべだ]と陰口をたたかれていたのは、90年代後半のことである」
 私は90年代後半のコープこうべと事業応対していないが、世間の批判はなんともすさまじい。かくて店舗の日常的自己改革、接客態度の低下は許されない。新業態は次から次へと開発投入。慢心があってはならぬと。この間業態転換への生協内部論争があったことを窺わせる。全国的にも生協店舗は90年代後半からガックリ。相変わらず、共同購入形態の黒字で支えられる現状だ。1990年代初期に基本のフォーマットとして進められた売り場面積700坪規模のSSM型。これが店舗近代化路線のエースだった。今やすっかり息を潜めた形だ。かくて食品中心、惣菜強化、地域生活密着というコンセプトへの転換である。あくまでも店舗事業からの撤退ではない。それよりは別の問題が浮き上がってきた。スーパーの場合、ナショナルとかリージョナルを問わず、県域規制はない。一方生協は県域内限定だ。その代わり、事業連合生協に限って、県境を超える共同開発・仕入れが出来る。こうして生協の競争力を論ずると、県域撤廃論が起きてくる。コープこうべ主導のKネット事業連合もある。その機能評価は良くは見えない。だから生協各級幹部にある3000億円マーケット論登場の背景があるのだろう。砕いて言えば、20億円×150店である。一県でカバーできる規模ではない。現に首都圏、近畿圏で各100店展開構想のスーパーがある。本社が二つある感じなのである。それが最終的に成功するのかどうか。国際流通資本の日本上陸によって一層複雑の様相を呈している。かつて1980年代後半にあったスーパー同士の合併まで視界に入ろう。だからここは生協の全国的総路線とコープこうべの独自路線との複雑な調整問題なのだろう。現に首都圏域のコープネット事業連合は4,800億円のバイイングパワーがあるらしい。今は通り過ぎることにする。




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