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シリーズ 「再生21」への挑戦―コープこうべ

「愛と協同」の思想を継ぎ

今野 聰 元(財)協同組合経営研究所研究員

「協同学苑」―歴史と記念館

全国に広がる産直
全国に広がる産直

 同じ三木市に「協同学苑」(10万)がある。創立70周年事業として1991年開校。「人と夢、愛と協同」が学苑のモットーであり、「新しい時代へ向けた豊かな人間教育」が目標だ。95年震災時は急遽、救援拠点にもなった。かくて数多くの生協人がこの学苑を体験した。勿論全国の農協関係者も同じ。このうち「史料館」を初めて集中的に見学できた。ロッチデール記念館をなぞった正面。日本・西欧の協同組合先駆者コーナーがある。なんといっても二階にある『賀川豊彦』特別展示室。相談を受け、執筆もしたという木工机・椅子の広さに現実感を受けた。充分タイム・トンネルが可能である。多彩な社会運動の合間にどれだけ座る時間があったものだろうか。しかし膨大な著作目録を見ると、寸暇を惜しまずだったのだろう。またコープこうべの歴史年表。95年震災関連展示も、忘れるなとの警句と受けた。
 さて課題は、こうした思想・伝統の受け継ぎ方なのだろう。通過見学では見過ごしがちなものだ。そこで前述の冊子から再び引用する。賀川精神から今日の生協理論までの生きている字引といわれる高村勣名誉理事長顧問の文章だ。
 「これは賀川豊彦没後すぐに賀川記念生協学校として、25年前から計画されていたものが実現したものである。この[協同学苑]の最大至高の目的は賀川の[愛と共同]の思想を、日本のそして世界の生協に宣べ伝え、継承するためのものである」
 解説は不要だろう。学苑に中軸を置いて、日本と世界にその思想を伝えていくという。これがソ連圏崩壊以前だったらどうだったろうか。あるいは、日本のバブル経済崩壊とその後の苦闘の長さを知らなかったらどうだろう。コープこうべの独善思想とみなされなかったか。はたまた21世紀の協同組合は期待できないという今の風潮。その逆風に立ち向かっているからこそ、一層光ってきたように思えるのだがどうだろう。

協同組合間提携のこれから

 かつて1979(昭和54)年2月、神戸市で第5回協同組合間提携全国研究集会が開催された。当時私は全農所属の提携事務局に係わっていた。集会は、ともかくコープこうべ(当時は灘神戸生協)の事業経験に学ぼうということが直接的契機であった。そこで当時の高村専務から、「その場限りでない、戦略的提携が必要」と示唆された。目の前がぱっと開かれた気分であった。この背景には、国際的にはレイドロウの「2000年の協同組合」報告作業の最終段階にあったことが大きかったろう。またコープこうべ自身が長期労使紛争を終結した後であった。また、西ノ宮市鳴尾浜埋め立て用地利用問題が水面下で進み、生協の企画展開が進行中だったこと等であった。
 この後、提携事務局の論議は急ピッチで進み、苦労はしたが『協同組合間提携の戦略的展望』(1982年10月)を冊子にして、全国に配布した。そこにはコープこうべの事例が紹介されている。さて、生協の事業報告書資料に「フードプラン商品の取り扱い」がある。北海道富良野市(減・洋にんじん)から鹿児島県沖永良部島(減・新メークイン、新じゃがいも)まで多くの産地が列挙される。兵庫県内がもっとも多い。
 またこれとは別に産直商品の取り扱い一覧産地もある。これは北海道(JA帯広川西)〜南米チリ(レモン)まで。これまた兵庫県内産が圧倒的に多い。一々論じないが、こうして産直関連事業が定着してきたのだろう。食品偽装の一連の事件があって、産直事業危機が言われる今、感が深い。
 子会社である(株)協同食品センターに触れる。1981(昭和56)年3月、JA全農も本気になって共同設立した。農・畜・水産物の加工製造販売。直近の経営データは資本金4.9億円(内生協2.6億円)。営業収益272億円(02年3月末)。この協同会社は協同組合間提携の結実であった。それからほぼ20年。事業だからこそ、紆余曲折はある。今日の困難に対して、むしろ歴史的ロマンを語ることになろう。そういう深まりを期待したい。

 残した課題

 中心事業に非店舗の共同購入(協同購入)がある。それについて全く触れることが出来なかった。また店舗直結の自己直営食品工場がある。「六甲アイランド食品工場」(供給高194億3千万円、シェア6.4%、01年度)、阪神友愛食品(株)(3億56百万円、重度障害者・知的障害者雇用による食品加工)等である。協同食品センターも事業機能は同じだ。農協にも多様な食品加工が農村工業として歴史的に存在してきた。だから1925(大正14)年設立以来の伝統を持つコープこうべ食品工場とは、戦前・戦後多くの技術交流をしてきたものと思われる。これらへの言及が足りなかった。福祉関係で「協同の苑」なども見た。勢いがあるように思った。ただし高齢者介護を含めた福祉事業は、総合農協でも本来的な事業である。これらに触れられなかった。今後も多くの交流が行われることを期待したい。(完)




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