農業協同組合新聞 JACOM
 
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シリーズ 「個配事業」の創造と21世紀的可能性−東京マイコープ
第5回
「個配事業の革新は可能か」(承前)

今野 聰 (財)協同組合経営研究所 元研究員


◆個配事業が中核事業に

 前回1990年代初期の個配事業挑戦を触れた。そこに大きな犠牲や失敗があったことも証言があった。では多摩地区のどの首都圏事業連グループ生協も全て同じ気持ちだったのか。この間のことを、若森資朗・現首都圏コープ事業連合専務(当時タマ消費生協専務)に聞いた。その答えを箇条書きにしてみよう。

 ・ 74年にタマ消費生協に入った当時は、職員が「タマ十字軍」と言われていた。決意と揶揄だろう。
 ・ 多摩地区の生協のありかたを巡っての路線論争は、専従主導の展開論か、組合員主導の展開論だった。なにしろ理論家が多かったから。
 ・ 産直は勿論物真似なしのオリジナル志向だった。組合員主導展開論は、結局住民運動型になったりした。
 ・ 一方同じ三多摩でも、生協設立の経過が違うから、北多摩生協とは同じではなかった。そんなこともあって、新宿研究会には賛成しなかった。

 以上のことはなかなか含蓄がある。多くの生協運動者が80年代末期、大きく育ちつつ、改革者になった。だから共同購入方式だって、改革の対象になって当然であった。

◆IT化含め新規参入ゾロゾロ

 問題は新世紀、これからである。何故元祖個配である東京マイコープが自己革新を追求するのか。競争類似業態との競合を生き残るためもあろう。実際、大地を守る会、らでっしゅぼーや、ユニクロ等の有機農産物専門事業体、タイヘイ等の夕食惣菜宅配業。カゴメなど食品メーカー直送通信販売業など枚挙にいとまがない。
 またIT革命など情報処理技術の革新と投入もある。これらが店舗で購入することより優れた業態かどうかが現在も将来も問われているからだ。
 更に生協運動特有の困難が追加される。つまり、組合員の参加を保証する業態として、すでに優れた共同購入方式がある。3人〜7人程度、班に結集して、商品の共同開発、生協経営参画まで保証された仕組みである。これが個配事業によって崩されないか。空洞化しないか。個人型として内向きになったら、運動どころではないではないか。こういう批判である。すでに90年代初期、共同購入は崩れ、実質「弧配」「無言班」などとマスコミで批判されることがあった。そういう風潮の反映が個配事業でもあった。

◆急速な全国化の先に

個配は店舗をつなぐ
個配は店舗をつなぐ

 東京マイコープは元祖として、一々応えながら、事業の革新を進め、現在に至っている。
 1997年、数ヶ月を掛けて、東京マイコープの地区別組織の組合員リーダー討論に参加したことがあった。その時、組合員が「老齢世帯には個配がいい」とか、「個配がコンビニからの注文配達宅配よりずっと安全だ」と言う発言を聴いた。それを聴いても、個配時代が始まったとは思えなかった。だからあれから6年、猛スピードで時代が変わったのだ。
 なんと今年6月の日本生協連総会では、個配は完全に全国化、普遍化したという宣言もあった。消費不況、店舗競合の中、敢然と救世主になったのだ。この先恐らく、次の画期的個配亜システムが開発されて、他の追随を許さない事業基盤になるのだろう。
 東京マイコープは事業連合と共に、IT革命をとりり入れ、スタート中だ。 (2003.8.27)

 



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